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三木優子

2014年 神山アーティスト・イン・レジデンス 招聘作家

三木優子
大阪府出身。ノートルダムダナムール大学美術学士号、カリフォルニアサンノゼ州立大学美術修士を獲得。彼女の作品はカルチャーアイデンティティーの問いに関して心理的変動を動物のモチーフを使い訓戒説話的に表現する。テーマはメタモルフォ−ゼ、帰属化、個人と全体意識の二面性である。人が変化の過程で新しい自分を形成していくプロセスを抽象的な要素を組み入れながら具象的にドローイング、インスタレーションで描く。その変動の過程で人間が境界を超え新しい価値観を見いだす可能性への問いを追求する。現在ベイアリアバークレー市に在住、活動中。(テキスト:2014年)

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■KAIR2014 作品
 

こころの旅

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形のないところ。可能性が存在する場所。それはどんな形で表現できるかというのがこの作品の始まりだったと思う。今まで動物の進化の過程、自然淘汰、メタモルフォーゼがテーマの作品をつくってきた。例えばクジラが海底でエコーロケーションという超音波を発声して聴力を視覚にかえることができるなど自然や生き物のアダプテーションプロセスはこの形のないところが生き残るために必要なのかもしれない。神山アートレジデンスではここでしか造れない作品をつくりたかった。 神山を自分なりにこの2カ月吸収した。いろんな人に会い、いろんな場所を訪れた。そして想ったのは神山町全体がひとつの生き物のような勢いで変わっているときかもしれないと感じた。神山がこれからどうやって形を変えていくのか、新しい要素と今までの伝統がどうやって合成してくのか、今の神山自体が「形のないところ」の象徴になった。可能性、希望、不安、その全てが存在する場所、人、そして心。ここに限りない自由を感じる。ここで新しい物が生まれる。新しい価値観が生まれる。それを実感できた時物凄い力が湧いてきたり冒険できたりするかもしれない。ここに出来るだけいることが私の人生の目標かもしれない。

灯の造形は神山の伝説の大蛇、神山のもの、すだち、梅干し、きのこ、くり、たぬき、そして町を取り囲む杉の木などを抽象化したものになった。そして灯りは精霊と繋がるいわれなどから形のないものと繋がる手段という想いを込めた。ドローイングは徳島の伝統である藍染の紙をつかった。藍の青は言葉にできない美しさがあり、また藍は見る角度や光によっていろんな青に見えるのが魅力だった。動物は今まで神山に存在した、する動物が阿波踊りをしているモチーフにした。私にとって伝統的な阿波踊りは継続の象徴である。これからも全てが続いてほしい願い。阿波踊りを通じての町のひとの情熱、一体感も描きたかった。
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神山で一番個人的に印象に残ったのは自然の美しさである。特に焼山寺の星空はこの世の風景と想えないほど美しい。星がこぼれそうにみえる。星や宇宙は私の作品の中で使うモチーフだがおそらく一番身近な未知の世界を感じさせるものかもしれない。

人生で人はいろんな所へ旅をする。結局自分の居場所と感じるのは一番根本的な要素、自分とその土地との相性ではないだろうか。きっとこれは説明できるものではなく何となく感じるものだけど何となく絶対的な気持ちだと思う。ひとが自分の居場所を選ぶとききっと一番先に感じるのはその土地の美しさではないだろうか。そしてこの自然に魅了されてきた人たちがまた新しい要素になり新しい人をつれてくるのかもしれない。アメリカで22年すごしてはじめて3ヶ月日本に滞在することができて再確認したのは自分が惹かれた土地、人は自分の家になれるということ。またもうひとつ『家』と呼べるところが増えた滞在になった。

こころの旅
展覧会場 劇場寄井座
[ドローイング] 
素材       インク、藍染め和紙
サイズ   縦3メートル16センチ 横5メートル56センチ
[インスタレーション]
和紙、でんぷん糊、木工用ボンド、凧糸

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(三木優子 / 2014)