北原 愛 Ai Kitahara

2004年度 神山アーティスト・イン・レジデンス招聘作家
2004/9/23ー2004/11/13 神山町滞在

横浜出身、武蔵野美術大学で油絵とリトグラフを学んだ後、1990年よりフランスのグルノーブル美術学校に留学。以来、空間的境界や抽象的意味でのリミットの曖昧さをテーマにインスタレーションを数多く制作。1993年よりパリ在住。
彼女は、神山での滞在で受けた印象を作品に取り入れ、私たちとテリトリー、その境界線の関係を模索しようとすると同時に、機能するアートと機能しないデザインの間を行き来するピンポン玉のような作品を作ろうとし、見るものに作品の意味を問いかけた。

北原愛『強い場所・上中屋』Ai Kitahara “Stronghold-Kaminakaya” 2004

Stronghold-kaminakaya(強い場所・上中屋)
Moving Territory(動く領域)

北原愛『強い場所・上中屋』Ai Kitahara “Stronghold-Kaminakaya” 2004

 

物語を愛する北原愛が神山で編んだのは、二つの地図。『Stronghold-kaminakaya』は、透明なアクリルチューブが林立する玄関のパッサージュだ。ふーっと強い息を吹いたら、倒れてしまいそうに繊細そうだが、倣岸に見えない柵を作っている。もうひとつは移動する青い領土。だだっ広い体育館にポツンと置かれた『Moving Territory』は、魔法の絨毯のように、だれでも乗せて滑走しそうな夢を掻き立てる。二つの神山の地図は、とどまることの呪縛と逃走の夢想を詩的に奏でた傑作である。(武蔵野美術大 学教授 岡部あおみ)