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Nik Christensen ニック・クリステンセン

2013年神山アーティスト・イン・レジデンス 招聘作家

イギリス生まれ、オランダ育ち。アムステルダムのヘリット・リートフェルトアカデミーで学ぶ。自然、とりわけ、自然の中の人間の存在が常に彼の作品の重要なテーマとなっている。破壊と復活の二面性や、現実と空想の対立を探求することに興味があり、一見ありふれたものに新たな解釈を加えて表現する。古風な風景写真から映画まで、さまざまな画像をもとに、墨と紙で、大画面にモノクロのドローイング作品を制作する。素材の単純さと墨による制作の即時性は、画像の永続性の中に、緊張感を与えつつ静寂をもたらしている。現在はアムステルダムに在住し、活動中。(→ Nik Christensen


KAIR2013 撮影 小西啓三 

 
KAIR2013 撮影 小西啓三 

■KAIR2013 作品

Kagami

神山の手つかずの自然美に圧倒され、畏敬の念を抱くのは珍しいことではないかもしれない。だが、それ以上に素晴らしいのが、地域住民の優しさやサポート、寛大さだ。だから、私が下分地区の隣人や川辺の岩の連なり、寺や緑豊かな山々など周辺の環境の中にインスピレーションを見出すのは、ごく自然なことだったと言えるだろう。

まず、たくさんの写真を撮ったり、小さなスケッチをしたり、県立図書館で借りた本を資料に使ったりすることから始めた。元々の案は、風景を、写実画ではなく、抽象的、または詩的でリズミカルに表現した作品を制作するというものであった。というのも、野菜を育てたり、コメを収穫したり、庭いじりをするといった神山の毎日の生活リズムに共感を覚えたからだ。準備段階としてのスケッチを重ねていくうち、大きな作品に発展させていくためのベースとなるひとつの方向性が見えてきた。 

しかし、その次のステップが見えず、修正、行動、反応の作業が続いた。すると、ひとつの大きなコラージュが現れ、その中に流れる複数の幅広いブラッシュストローク(筆跡)が繋ぎとなり、断片的なモチーフをつなげているかにみえた。それらは、多くの寺や神社に吊られている紙垂のように見えたり、抽象的な形をした川や小道をイメージさせる。また、場違いな所に侵入してきたような風変わりな長方形は、都会を離れた、人目に付かない、この小さな山間の町にも、新しいハイテク時代がゆっくりと進行していることを暗示させる。わたしは、これらの相反する要素を取り組むことにより、作品に二重性を持たせようとした。この作品そのものが断片であり、部分的に抜きとったり、また、新たな一枚に、ブラッシュストロークを加えて拡大していくこともできるのだ。

 


Nik Christensen 《Kagami》  撮影 小西啓三   KAIR2013

作品タイトル    Kagami
展示場所     劇場寄井座
素材          阿波和紙、墨
サイズ        400x700cm

→アーティストインタビュー ニック・クリステンセン(英語版)