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パブロ・メルカド

2017年 神山アーティスト・イン・レジデンス 招聘アーティスト

絵画、インスタレーション、ビデオマッピング、造形など、さまざまな素材、手法を用いて制作を行う。近年、人の記憶、特に脳がどのように情報を処理し、それらを回想させ、記憶を創り出しているのかということに焦点をあて、自身の作品に反映させている。変化の概念や、物事を変えることなく維持するということが彼の作品では表現されている。
スペイン、イタリア、ベルギー、ドイツ、スイス、メキシコ、台湾などで展覧会を開催。スペインや台湾など国内外で数々のアーティスト・イン・レジデンスプログラムに参加。代表的なものに、the Contemporary Art Museum MAC Gas Natural Fenosa in La Coruña(スペイン)や、Soulangh Artists Residency(台湾/台南市)などがある。また、メキシコ政府からの奨学金によりユカタン州のメリダ市にてリサーチプロジェクトを実施。2010年よりベルリンに在住し、数多くの個展、グループ展に参加している。
セルビア大学(スペイン)、ペルージャ・ピエトロ・ヴァンヌッチ学院(イタリア)卒業。マドリート・コンプルテンセ大学院美術研究科(スペイン)修了。
(テキスト:2017年)

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Constant of degradation
2017

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カメラオブスキュラ(ラテン語で、暗い部屋の意)とは写真機の原型となった光学装置である。箱や暗い部屋の壁面に開けた小さな穴を通して、外の景色が室内に投影される。その投影像は反転し、色と遠近感はそのままに壁面に映し出される。カメラオブスキュラの最古の記録は、墨子(紀元前470-390)が自身の著書に記したものとされており、現代まで哲学者や芸術家、科学者がカメラオブスキュラの現象に魅了されてきた。

私の提案は、4種類のカメラオブスキュラを配置した小部屋を作り、小孔を通ってくる投影像から更に光を取り込み、次の部屋へ投影する。そしてまた次の部屋へと転写させる作品だ。映し出される像の質は部屋ごとに低くなっていく。すべての像=“記憶”を見るために、それぞれの部屋へ出入りできるドアを設置し、その部屋にしかない像を見る。そして、暗室へのドアを開ける度に大量の光が入り込み像は姿を消す。これは、人間の脳がどのように記憶を読み取り、維持し、またそれを思い出そうとする時、このカメラオブスキュラの連続する部屋と同じ現象が起きているのではないかと考える。

展覧会場:下分小学校

 


女武芸者
 

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日本ほど伝統性と現代性の調和がとれた、理想的な国はない。価値を認め、誇りを持って伝統を受け継ぐ様は世界的に知られている。
しかし、他国と同様に男性を尊重する文化はここでも変わらない。谷崎潤一郎「盲目物語」(1931)では、戦国時代を背景に、名誉を守るために強く生きた女性たちの世界が綴られている。神山では、日本人女性の社会地位についてアプローチすることを目的に滞在制作を行った。ヨーロッパからの訪問者として、異なった文化を深く理解するには限界があると考えていたので、徳島県にあるこの魅力的な町に暮らす5人の女性を紹介してもらい、お話を伺う特別な機会を与えてもらった。女武芸者は、お会いした素晴らしい女性たちの個性を可能な限りとらえようとした作品であり、また彼女たちへのささやかなオマージュとして、発表した。
阿波の国、徳島で生産される藍の染料は阿波藍とよばれ、その質の高さが全国的にも有名である。その歴史は古く、戦国時代には「勝色」と呼ばれた深い藍色が縁起物の色として武士に愛されていた。
約3か月の滞在中、幸運にも匠と呼ばれる染師の方々から藍染の技法を学ぶことが出来た。
このプロジェクトは、その伝統技法とヨーロッパで生まれた複製技法を掛け合わせた作品づくりである。ポートレート写真をもとに、特大のシルクスクリーンを製版し、抜染という手法を使って技術者のサポートのもと制作した。

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展覧会場:名西酒造酒蔵
藍染、抜染 250x90cm

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(パブロ・メルカド / 2017)

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掲載記事
制作過程1
制作過程2

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