つなプロ作戦会議vol.5「発表会」 開催報告
なんでも2025年10月30日
8月から10月まで「対話の場・勉強会・発表会」の3段階で開催を重ねてきた「まちを将来世代につなぐ作戦会議」(略称・つなプロ作戦会議)も、10月14・15日の発表会の開催をもって、ひと段落しました。
写真とともに発表会当日の様子を、そして今後の動きについても、お伝えしたいと思います。
当初は1日だけの開催を予定していましたが、予想を大きく上回る発表の申込みをいただき、アイデア部門・プロジェクト部門あわせて21件も! 調整させていただいた結果、発表会は2夜にわたって開催することになりました。
司会を務めるのは、「つなプロ作戦会議」では、すっかりお馴染みのコンビ。神山町役場・まちづくり戦略課の坂井さんと、神山つなぐ公社・代表の馬場さんです。
2日間の発表タイトルは以下のとおり。
【1日目】
アイデア① Alice, a Connection to the Future
アイデア② データを活用してよりよい神山町へ!
アイデア③ 神山×高専生×富士通 スマートシティプロジェクト
プロジェクト①「なんとなく集える場所ワカモノの店バンビ」から町の交流施設へ
プロジェクト② 杉の放置林整備による自然回復と町の経済効果
プロジェクト③ 神山町民と関係人口による多様な挑戦を後押しする仕組みづくり
プロジェクト④ 神山小麦 TAG PROJECT
プロジェクト⑤ まちの新規事業と、まちの関係人口を育む2日間の起業イベント
プロジェクト⑥ 生物多様性かみやま戦略をつくろう
プロジェクト⑦ 「よっ」と言える関係づくり『寄り合い』
【2日目】
アイデア④ まちに必要なすまいを整えていくために…
アイデア⑤ 山川ズ
アイデア⑥ 郷土の宝を残していくために
アイデア⑦ 鮎喰川に "鮎” をもう一度、取り戻したい
アイデア⑧ 町と人と農をつなぎ、循環する豊かさを次世代へ
アイデア⑨ 志ある移住者を呼び込む住宅整備のためのスキーム提案
プロジェクト⑧ 学校給食の地産化と地域農業支援を実現するスキーム提案
プロジェクト⑨ 里山の今と未来を守る 獣害対策NPOの第一歩
プロジェクト⑩ 広野小学校の旧校庭の公園化事業と旧校舎の商業利用
プロジェクト⑪ 広野小学校旧校舎活用プロジェクト
プロジェクト⑫山の手入れで暮らしと川を次世代につなぐ。森の相談窓口
「気づき・想い・アイデア部門」は、まだ着想段階で、何かを試してみるところまで至っていないが、今後も継続して温めていきたい気づき・想い・アイデアを発表していただく部門です。自身や他者への宣言、仲間を集める、フィードバックを得る機会としてこの場を使ってもらいたい。もう一つの「プロジェクト・事業化部門」は、着想をもとに、すでに試みを始めていたり、実現に向けて計画や体制を整えつつある人のための部門です。役場との協働を含め、自分たちの計画に協力してくれる人・足りない資源を募る・模索する機会にしてもらえたらと設定しました。
順番に発表していただきつつ、聞いている人はオンラインでリアルタイムコメントしたり、フィードバックシートに記入したり。

ここから先は、発表内容を写真とともに一言ずつ紹介してみます。
まずはアイデア部門の9つの発表から。
① Alice, a Connection to the Future
「徳島青い目の人形アリスの会」会長の多田さんより。戦前から神領小学校に残っているアリスちゃん人形をご存じですか?1991年にアメリカへ里帰りさせられたことが、神山のまちづくりの原点にもなっています。2027年にアリス来日100周年を迎えるにあたり、アメリカとの交流や、地域でアリスちゃんを知ってもらう活動を展開していきたい、とのこと。「一緒にやってみんで!!」
② データを活用してよりよい神山町へ!
神山まるごと高専をきっかけに神山との関わりを深めている富士通の濱上さんより。神山はいろんな「学び・体験」のフィールドになりうるけれど、ただ経験しただけでは「楽しかった!凄いね!」で終わってしまう。住民も行政も関係者も自由に使えるよう、データを可視化したら課題を構造的につかめるようにしていきたい。小さな実証から共創で進めていきたいので、興味のある方がいたら、ぜひ!
③ 神山×高専生×富士通 スマートシティプロジェクト
神山まるごと高専で学ぶ下島さんをはじめとした学生さんたちより。富士通の社員さんと一緒に「テクノロジーの力を使って、神山の力になりたい」と活動しているそう。今考えているのは、町民同士のつながりを促進するアプリケーション。さらに深掘りして実験を繰り返していくので、ご協力ください!
④ まちに必要なすまいを整えていくために…
神山つなぐ公社の小池さんより。転入希望者に対して、住まいが不足している状況が続いている。昨年度の調査の結果、移住を希望する人は単身者の割合が多く、最初の形態としては賃貸を希望することが多いことがわかりました。どのような住宅をどのようにつくっていくのか。目の前の状況もなんとかしたいけれど、つなプロで描いている2060年頃の状況も視野に入れて、やるべきことを考えていきたい。この発表会までに具体的にプロジェクト案までまとめられなかったけれど、役場・GVだけでなく、民間の人たちとも知恵とお金を出し合って、住まいを整えていきたい!
⑤ 山川ズ
城西高校神山校で学ぶ高校生、天野さん・畑さんより。つなプロ作戦会議に参加して山や川などの自然について話を聞く中で、さまざまな課題について知り、特に山の手入れについて興味を持ったそう。「今の山って荒れているんだ⁉︎」という自身の驚きから、まずは町民の皆さんに「山の現状を知ってもらう」その次に「何ができるか話し合う」さらに「実際に山の手入れをしてみる」というステップを回していきたい。ぜひ一緒にやりましょう!

⑥ 郷土の宝を残していくために
文化財保護審議会会長の粟飯原さんより。神山の文化であり宝である「郷土資料館」を次の世代に残していけるよう動いていきたい。古文書や行政文書、暮らしの民具、襖絵など、貴重な地域の記憶が残されているが、ただ保管して展示するだけでは意味がない。現状の資料館は残念ながら倉庫に近い状態。活用してもらわないと価値にならない。どう伝えたり活用していけるとよいか。若い人たちのお力を貸してください!
⑦ 鮎喰川に "鮎” をもう一度、取り戻したい
田中さんと地域の先達の嘉敬さんと誠敬さんより。神山を流れる「鮎喰川」の名前の中にもあり、川の健やかさの象徴でもある「鮎」が、下流での瀬切れや町内にいくつかある堰のために遡上できなくなってしまっている。 天然の鮎が泳ぐ鮎喰川を取り戻したい。先達が山や田畑を手入れし、川で遊んだり魚を捕まえてきた様々な技を、次の世代にも伝えていきたい。時間切れで先達のメッセージを最後まで聞けなくて残念でしたが、また何か必ず場を持ちます、とのこと。楽しみにしています!
⑧ 町と人と農をつなぎ、循環する豊かさを次世代へ
ダイアログ・ハブ神山の本重さんより。神山の豊かな風景を支えてきた人たちが高齢化し耕作放棄地も増える中で、田舎暮らしや農業に関心のある都会の関係人口も増えている。高専のご縁でつながった農業の専門家たちとチームを組み、援農の企画に取り組む中で、単に体験/労働力の補完ではなく、自分ごととしての協働のきっかけになり、面的な展開につなげていけるようにしたい、と思うようになったそう。
⑨ 志ある移住者を呼び込む住宅整備のためのスキーム提案
コクヨさんとのご縁で神山に関わり始めたPROPELaの山中さんより。神山では住宅整備についての課題があると聞いて、これまで建築・住宅事業に関わってきた経験から役に立てたら、との提案。大埜地の集合住宅に続くような、第2・第3の住宅モデルをつくることができないか。具体的には、役場が建物を整備し、企業が運営費を担い、住民が維持管理を行う「2軒長屋」を整備することで、移住の受け皿にもなり、企業の拠点や来訪者の宿にもなり関係人口を創出していけるのではないか。
続いて、プロジェクト部門の12の発表をご紹介します。
①「なんとなく集える場所ワカモノの店バンビ」から町の交流施設へ
神山まるごと高専の春田さんとコクヨ株式会社の方々より。「中学生以上の若者たちの居場所をまちの中につくりたい、まちとの関わりを増やしてほしい」という思いで、個人的に続けてきた活動をさらに展開していくそう。全国あちこちにあるユースセンターに比べて、いろんなことを教えてくれる大人の方が多いのが神山での特徴。コクヨさんの力も借りながら、2028年には平日毎日開催できるよう「天才的な仕組み!」を考えているとのこと。まずは毎週金曜のバンビにぜひ遊びにきてください!

② 杉の放置林整備による自然回復と町の経済効果
中学生のリトくんと、最近神山に引っ越してきた西井さんより。放置された杉林が増えてしまい、山が悲鳴をあげているので、なんとかしたい。そのために、放置林の現状や背景をみんなに知ってもらったり、ワークショップ形式で放置林の間伐を進めたり、切り倒した木で小屋やアスレチックなどをつくったりしていきたい、とのこと。まちのあちこちでこうした町民発の取り組みが動いていけば、少しずつ山の状況をよくしていけるでしょうか!
③ 神山町民と関係人口による多様な挑戦を後押しする仕組みづくり
神山まるごと高専をきっかけに神山との関わりを深めているデロイトトーマツの小池さんと、富士通の濱上さんより。役場や高専とも連携しながら、町内で活動する町民たちと町外から神山を応援したい関係人口による、多様な挑戦・小さなコラボ事業を後押しする仕組みを構築していきたい、とのこと。何かやってみたいコラボ事業はありますか?
④ 神山小麦 TAG PROJECT
徳島トヨタを軸に進めているTAG PROJECTの林さんより。4年前から神山にも拠点を持ち、サテライトオフィスとして活用しつつ、神山小麦を中心として農業を営んでいて、すでに関係する店舗やカフェで神山小麦を使ったクッキーなどを提供しているそう。もともとフードハブをきっかけに城西高校神山校でも栽培してきた神山小麦ですが、まだ生産量が少ないこと、製粉・精麦できる施設が町内にないことが課題。様々な人の協力を得ながら、神山小麦の生産・製粉・加工を展開していきたい、とのこと。TAGを組もうよ!
⑤ まちの新規事業と、まちの関係人口を育む2日間の起業イベント
神山出身で東京でもコーチングの仕事をしてきた川野さんより。東京の起業家・経営者と、徳島・神山で何かをしてみたいと思っている人をつなぐことで、起業を促進したい、新たな仕事・雇用を生んでいきたい、応援してくれる関係人口を育みたいという思いで、過去 3年間、神山町で2日間の起業イベントを開催してきたそう。これまでは自腹・ボランティアでやってきたものを、より持続継続できるように応援してほしい。関心のある方はぜひ、今年の起業イベントにご参加を!
⑥ 生物多様性かみやま戦略をつくろう
WEEK神山のいきもの担当・井上さんより。地球上の生物種がすごいスピードで絶滅の危機に瀕している中で、世界各地で「生物多様性地域戦略」を策定して取り組みを進めている。たとえばお近くの阿南市でも。神山町でも、草刈りや林業・農業といった暮らしに根ざした地域戦略を作ることで、暮らしや観光、教育、森林の保全などにいい影響が起こせるはず。みんなで考えていきませんか?!
⑦ 「よっ」と言える関係づくり『寄り合い』
神山町役場の坂井さんと、神山つなぐ公社の米田さんより。最近はまちの中で気軽な交流の機会が少なくなったが、つなプロ作戦会議で対話の場を設けたところ「もっとこういう機会がほしい」という声をもらった。月に1回の「寄り合い」をやっていきたい。もう1つ、今年試行してみた「まちの新人研修」を今後も継続したい。町外から就職して移り住んだときに仕事以外のつながりがないとしんどい。何かのときに助け合える町内同期ができると嬉しい、とのこと。寄り合いが始まったら、皆さんぜひ参加してくださいね!
⑧ 学校給食の地産化と地域農業支援を実現するスキーム提案
アイデア部門でも発表された、PROPELaの山中さんより。地域を支える農業が行き詰まり、また学校給食も地域内の流通から切り離されてきてしまった。神山町では、神山まるごと高専で地産地消型の給食を実践できているので、公立学校でも地産型の給食を実現していってもらえたら。自社で開発したシステムで、給食の献立に必要な作物の種類や量と、地域の登録生産者による出荷可否をリアルタイムで調整できるとのこと。
⑨ 里山の今と未来を守る 獣害対策NPOの第一歩
神山で有害鳥獣駆除に従事している飯沼さんより。鹿の増加が、農作物にも山にも影響を与えている。神山には推定5000頭以上の鹿がいるという推定で、駆除が追いついていない。駆除員の高齢化(一番多いのは70代!)、若手の育成機会や技術指導の場も少ない。「1頭捕まえていくら」という報奨金頼みの不安定な収入源では続けづらいし、頑張った結果、鹿が少なくなって収入が減ってしまう仕組み。捕獲後の処理も大きな穴を掘る必要があって大変。若手2人で立ち上げて活動している「農防団」という組織をNPO法人化して、農家さんや役場とも連携しながら駆除・人材育成・データ分析を進めていきたい。メンバーを10人くらいに増やしていきたいので、興味のある方はぜひ!

⑩ 広野小学校の旧校庭の公園化事業と旧校舎の商業利用
広野在住の千代田さんより。広野小学校の旧校舎・校庭は、地元のいろんな方が「こんな使い方をできたら」と様々なアイデアを持っているのを聞きます。現在も、学童保育や「ほんのひろば」「みんなのひろば」などの活動の場として使われているのを生かしつつ、旧校庭を公園として使いやすく整備したり、いざという時の災害備蓄や避難所機能も整えていきたい。旧校舎には生活サービスとして必要なものやビジネス利用できるような空間も整備することで、収益源として運営していけたら。淡路島や鳴門、三好でも廃校利用の実例があるので参考にしつつ、地域のみんなで組織をつくって運営していきたい!
⑪広野小学校旧校舎活用プロジェクト
ほんのひろばのメンバーでもある、駒形さんより。先に発表された千代田さんと同じく、広野小学校の旧校舎を活用したいという提案。ほんのひろばでは、2021年から旧校舎を拠点に「コーヒーとほんのひろば」を有志で企画運営してきたそう。引き続き「ほんのひろば」を継続開催しつつ、テーマを持った勉強会や報告会などを隔月で企画、2005年に発刊された「神山町史」を2030年に向けて追記・編纂、2階・3階の空き教室を活用して自習室や郷土資料を展示する場に、などをやっていきたい。まずは自分にできることから、広野地区も、多様な人の活動を支え、多彩な人の動きが見える地域にしていきたい!
⑫山の手入れで暮らしと川を次世代につなぐ。森の相談窓口
もりまちレジリエンスの大道さんより。活動のきっかけは、鮎喰川の下流にある徳島市国府町にある企業の皆さんの防災活動。手入れをしていない森が増えると山が荒れて水害が増えてしまう。上流の森づくりに関わることが下流の防災につながる。そこで、構成企業の力を合わせ、神山を拠点に木こりの育成と森林事業に従事したり、そこからでた木材が付加価値を生むような製材・流通にも取り組んでいるそう。神山町にいる「自分の山をなんとかしたい」「自分も木を伐りたい」という人のための森林管理の相談・伴走窓口を新たに設置したい!

以上、アイデア・プロジェクト部門両方合わせて、21発表のご紹介でした。皆さんの想いの詰まった発表を聞いていると、これから神山ですてきな・大事な取り組みがますます生まれていきそうな予感。
帰り際には、「推しアイデア/プロジェクトに応援の気持ちを伝えよう」と参加者の皆さんからシールを3枚ずつ貼ってもらったりもしました。
今後について
発表内容を受けて、つなプロとして協働の可能性が高いものについては、町・公社・関係者(発表者)が一緒になって、協議を重ねながら実現を目指します。12月末には第3期の創生戦略を発表し、2026年度以降の実施に向けて、準備を進めていく予定です。
すぐに動き出すものもあれば、時間をかけて形にしていくものもありますが、今回のプロセスを通じて見えてきたのは、神山町の中にすでにたくさんの動き出す力=種火があるということでした。この作戦会議が、そうした種火をつなぎ、まちの将来世代につなぐきっかけとなることを願っています。
▼「つなプロ作戦会議」について詳しくは、イン神山に掲載したまとめページもご参照ください。

高田 友美
静岡県浜松市出身。神戸→東京→スウェーデン→滋賀を経て、神山に移り住みました。神山つなぐ公社では「コミュニティ・アニメーター」として、主に大埜地の集合住宅とすみはじめ住宅から始まるコミュニティ育成を担当。休みの日はノラ上手に励んでいます。
高田 友美の他の記事をみる















コメント一覧