
つなプロ作戦会議vol.4−2 開催報告:岐阜・各務原の皆さんと語る「寄り合い」を続ける秘訣
学び2025年10月6日
9/19(金)夜に「まちを将来世代につなぐ作戦会議(通称・つなプロ作戦会議)」の勉強会シリーズの第2弾を開催しました。
テーマは「まちの面白さは“混ざり合い”と“はみ出し”から生まれる!」。ゲストとして主にお話していただいたのは、岐阜県各務原市でまちづくりに取り組む長縄尚史さん(写真中央左・かかみがはら暮らし委員会・代表理事)と廣瀬真一さん(写真中央右・各務原市役所職員)のお二人。
今回は、彼らが発行した冊子『NAKAVISION』の出版記念キャラバンとして神山町を訪れてくれた機会を捉え、その活動の軌跡と哲学について熱く語っていただきました。
本レポートでは、特に印象的だった部分を写真とともにお届けします。
今回の勉強会を企画したきっかけは、つなプロ作戦会議で対話を重ねる中でたびたび出てきた「まちに住んでいる・関わっている人たちの思いや活動についてもっと聞きたい・対話したい」という声。つなプロ作戦会議として設けている数回で終わりにせず、3期にも継続的にこういう場が持てないだろうか、と話していたところに、各務原市の「寄り合い」の話を聞きました。
岐阜県各務原市の2つの都市公園「市民公園」と「学びの森」、その周辺に広がる商店街などを総称する“那加公園エリア”では、毎月「寄り合い」を開催していて、100回目に到達。その場での対話の蓄積から、ユニークなプロジェクトが進行していたり、新しいお店や場所がオープンしたりと、いろんな面白いことがはじまっているそう。
いろんな人が参加しやすい対話の場ってどう続けるの?そんな場を毎月続けていくってどういうこと??そんな具体的な話や大事にしていることを学ぶ貴重な機会となりました。
まずは、今回の場を企画してくれた、神山つなぐ公社の小池の感想を。
各務原の那加公園エリアを中心にしたまちづくりの話をして頂きましたが、約10年間という長期にわたる取組みがまちのあちこちで花を咲かせているのだと感じました。熱意のある地域の方が中心にい続け、試行錯誤し、戦略的な仲間集めをされてきた苦楽を聞くことが出来て良かったです。何事も信念を持ち続け、行動に起こし続けていけば、良いことが必ずあると勇気をもらえたトークイベントでした。
このレポートを書いている私・高田が印象に残ったキーワードは、以下の4つ。
1)価値観の共有: 誰でもいいわけではない。同じ方向を向ける仲間と丁寧に関係を築く。
2)半開きの場づくり: 安全なコミュニティを保ちつつ、新しい風を取り入れるための絶妙なバランス感覚。
3)目的のない対話: 課題解決を急がず、まずは雑談から生まれる創造性を信じる。
4)なめられ力: リーダーは完璧である必要はない。あえて、なめられる存在であることで、誰もが主体的に関われる隙を作る。
これらのキーワードは、神山町だけでなく、全国でまちづくりに関わる人々にとって、大きな勇気とインスピレーションを与えてくれるのではないでしょうか。
今回の勉強会で出てきた4つのキーワードについて、もう少し詳しく知りたい方は、レポートの続きをどうぞ。
1)価値観を共有する人たちとのつながり
最初に那加公園エリアで始まった取り組みは2017年から毎年11月3日に開催されている「マーケット日和」。マルシェでの出店だけでなく、アートや音楽をはじめとした様々なイベントが企画され、県内外からおおよそ2万人もの人々が集まるイベントになっているそう。もともと行政主導で始まったこのイベントを継続していく中で、行政だけでは限界があると感じた廣瀬さんは、長縄さんをはじめとする市民に声をかけ、KAKAMIGAHARA STANDというカフェスペースの運営主体として「かかみがはら暮らし委員会」が誕生します。彼らが大切にしているのは、「価値観や意味を共有できる人たち」とのつながりです。
イベントや公園に遊びに来てくれるお客さんも、運営に関わるメンバーも、「誰でもいいわけではない」と長縄さんは語ります。例えば、公園にできた有料の遊び場「各務原パークブリッジ」は、無料の公園がある中で、あえてお金を払ってでもその価値を享受したいと考える親子が集まる場となっています。これはある意味、民度を保ち、ブランド価値を高めるための「静かなふるい」として機能しているのだそう。
2)「半開き」のコミュニティ
「かかみがはら暮らし委員会」は、まちを楽しむ人たちのコミュニティでもあるそう。年齢、性別、職種の違う多種多様なメンバーが集う「暮らし委員会」のメンバーになるにも、必ず誰かの紹介が必要というルールがあり、これは、コミュニティの安心安全を担保するための工夫だそう。
一方で、毎月第一水曜日にKAKAMIGAHARA STANDで開催されている、まちの交流会「寄り合い」は誰でも参加できるイベント。とはいえ、寄り合いの様子はInstagramでライブ配信・アーカイブされていたり、必ず参加者全員の集合写真を撮って掲載したり、という「静かなふるい」はここでも仕込まれているそう。
完全に閉じるのではなく、かといって誰にでも開かれているわけでもない「半開き」の状態を意図的に作り出すことで、質の高いコミュニティを維持しようとしているのです。

今回の勉強会の集合写真です!
3)目的のない「寄り合い」が生み出す、予期せぬ化学反応
各務原暮らし委員会のユニークな活動の一つに、私たちが興味を持ったきっかけでもある、上述の「寄り合い」があります。驚くべきことに、この会には「決まったテーマがない」のだそう。参加者は、年齢も職業も様々。ただ集まり、自己紹介をし、その場の流れで自由に語り合います。
一見、非効率にも思えるこの「寄り合い」こそが、彼らの活動の原動力となっています。真面目なまちづくりの会議では、どうしても立場や役割に縛られ、本音が出にくいもの。しかし、「寄り合い」という目的のない雑談の場では、誰もが一個人としてフラットに関わることができます。「何かやりたい」という個人の想いが自然と共有され、そこから新しいプロジェクトの種が生まれていくのです。
また、毎回の寄り合いの様子を動画やレポートで記録・発信し続けていることは、これまで参加したことのなかった人が雰囲気を事前に知って安心して参加できたり、しばらく参加できていなかった人も疎外感を感じずに参加できたり、という「開く」工夫にもなっているそう。
その場で何気なく発言した「これ、やってみたい」という声に、長縄さんをはじめとした参加者の皆さんから「それ、すごくいいね!」という応援の声や、その後の具体的なサポートが寄せられるのも、いろいろ新しく面白い取り組みが始まっていく秘訣なのかもしれません。

(正しくは過去100回開催!です)
4)リーダーに求められる「圧倒的ななめられ力」
「どうすればそんな風に多様な人が関わるコミュニティを続けられるのか?」という問いに対し、長縄さんは「圧倒的ななめられ力」が重要だと笑います。リーダーが完璧で、すべてをコントロールしようとすると、周りの人々は「あの人にお伺いを立てなければ」と萎縮してしまいます。
長縄さんも今尾さんも、どこか隙があり、いじられやすいリーダー。だからこそ、誰もが気軽に「こんなことやっても怒られないだろう」と、安心して新しいことに挑戦できる雰囲気が生まれる「なめられ力」が大事なのかもしれないと思っているそう。リーダーがすべてを引っ張るのではなく、みんなが主役になってじわじわ広がっていく「アメーバのような組織」を目指す彼らの哲学の表れでもあります。
上述のキーワード以外で印象的だったのは、行政と市民の絶妙なパートナーシップです。市職員の廣瀬さんは、行政の計画策定の際に「エリアビジョン」や「都市再生推進法人」といった新しいキーワードを盛り込むことで、市民活動が公的に位置づけられる道筋を作りました。また、まちづくり推進課に市民団体同士をマッチングするコーディネーターがいることも大きな力となっているという話も印象的でした。行政は、市民団体を「囲い込む」のではなく、彼らが自由に活動できる土壌を整え、必要な制度や資金でバックアップする。こうした伴走型の支援が、市民の主体性を引き出し、持続可能なまちづくりを実現する上で不可欠なのかもしれません。
以上。各務原市の皆さんの今後の活動、そしてこの出会いが神山町にもたらす新しい化学反応を楽しみにしています!
各務原の皆さんの取り組みについて詳しく知りたい方は、以下の参考リンクもご覧ください。
・かがみがはら暮らし委員会
・Our Favorite Capital
※冊子「NAKAVISION」を読んでみたくなった方はこちら

高田 友美
静岡県浜松市出身。神戸→東京→スウェーデン→滋賀を経て、神山に移り住みました。神山つなぐ公社では「コミュニティ・アニメーター」として、主に大埜地の集合住宅とすみはじめ住宅から始まるコミュニティ育成を担当。休みの日はノラ上手に励んでいます。
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