つなプロ作戦会議vol.4−3 開催報告:神山の森林や川をめぐる展示とお話会

学び2025年10月17日

アバター画像

投稿者:高田 友美

開催からだいぶ時間が経ってしまいましたが、9/22(月)から9/23(火祝)の2日間にわたり開催した「まちを将来世代につなぐ作戦会議(通称・つなプロ作戦会議)」の勉強会シリーズの第3弾「神山の森林や川をめぐる展示とお話会」の報告レポートをお届けします!

そもそも、この場を開催することになったのは、「神山の森林や農地、川」に手を入れていく必要性が、つなプロ3期の重点項目の1つとして掲げられ、つなプロ作戦会議で対話を重ねる中でも特に関心の高いテーマだったから。関連する資料や調査研究などの情報は、紙資料や役場のデータとしては存在しつつも、一般町民にはアクセスしづらい。必要な資料を見て話し合える機会をつくることで、議論や提案を促すことができるのではないか、という提案をもらったところから始まりました。(急に始まった企画にもかかわらず、たくさんの方のご尽力・ご協力、本当にありがとうございました)

当日の様子はかみやまチャンネルでも公開されています。ぜひ以下のレポートと合わせて、ご覧ください。

舞台となったのは「旧鬼籠野小学校」。昔の暮らしを垣間見れる貴重な資料が保管されている郷土資料館にも足を運んでもらえたら、という期待もありつつ。これまでにも、神山塾4期生のイベント「0の学校」や、高齢者向け買い物支援「さいさい市」で校舎1階が利用されてきました。川沿いの校舎の窓からは光が降り注ぎ、かつて子どもたちがいた頃の学校の様子を思い起こさせます。

企画の中心となったのは「神山の森林や川をめぐる展示」です。副題を「水から考える私たちの暮らし」としました。森林、農地、川はそれぞれ独立したものではなく、水を通じてつながっていて、その水は誰しもが生きていく上で必要なものです。水の流れを辿るように、地形・地質・気候から始まる章立てで展示を構成しました。

展示を見ながら、スペシャリストとお話しできる時間も設けました。

1日目には林政アドバイザーの栗尾さんが、神山の森林環境について来場者と話を交わしていました。神山は小規模な森林所有者が多く、整備をしようにも所有者自身が森林境界が分からなかったり、相続がされておらず所有者不明の状態のままだったりするケースが多くあるなど、役場としても困っている現状を聞かせてくれました。
2日目にはSFCの石川先生が急遽、野間谷川周辺の立体地形図や神領村絵図、模型などをもとにミニレクチャーをしてくれました。高いところへ登ると遠く見渡せる神山の眺望はフィリピン海プレートの潜り込みで隆起して形成された四国山地特有の風景であること、地すべり地形は危険性があると同時に豊かな水の恩恵を受けられるために人が集まり発展してきたことなど、長い土地の歴史を感じさせてくれる石川先生の語りに思わず聞いている人たちから「おお〜」と声が上がっていました。

来場した皆さんが「体験できて本当に良かった!」と口々に言っていたのが「emRiver」の体験レクチャー。川の流れや蛇行、土砂の堆積や浸食などによる地形の変化が、目の前で起こっていく様子を体感できる河川模型です。河川や流域政策を専門とし、鮎喰川に何度も来てくださっている滋賀県立大学の瀧健太郎先生が、京都大学防災研究所から借りてきてくれました。

森林が下草の生えた状態であることで土砂の流出を緩和させられること、石積みが砂防ダムの役割を果たしていることがよく分かりました。地すべり地帯の多い神山町ではこのような自然の役割や機能をよく理解して土地利用や防災を考えていく必要があります。


さらに。冒頭にも書きましたが、旧鬼籠野小学校2・3階には、実は「郷土資料館」があること、皆さんはご存じでしたか? 今回の企画に合わせ、文化財保護審議委員会の会長・粟飯原明生さんをはじめ有志の皆さんが案内してくれる見学ツアーが開催されました。郷土資料館には、町で古くから使われていた民具(生活用品、衣装、農具など)が展示されています。かつて盛んだった養蚕業で使われていた道具など、見ただけでは何に使われていたか分からないものも多くなる中、当時の生活を知る方々の解説を通じて、それらの道具や生活様式について理解を深めることができたようです。(普段は郷土資料館への入館には事前予約が必要です。詳しくは神山町教育委員会にお問い合わせください)

今回のイベントでは、鮎喰川に生息する様々な魚たちを小さな水槽で紹介する「川の小さな水族館〜鮎喰川編>も設置しました。

神山町は、町全体が鮎喰川の流域に位置しています。これは、山や森、畑、道に降る全ての雨が鮎喰川に集まり、下流へと流れていくことを意味します。

川を上から眺めるだけでは分からない、川の中の世界を再現し、多様な魚たちがどのような環境でどのように暮らしているのか。参加者の皆さんに鮎喰川への関心を高めてもらうきっかけづくりを行いました。特に子どもたちは興味津々に水槽を覗き込み、楽しんでいました。

鬼籠野在住の漁協の方々のご協力により、鮎喰川の秋の味覚であるモクズガニやウナギなども展示することができ、貴重な体験となりました。

漁具(ごろ曳き網・手蓑)なども、町民のご協力を得て、展示することができました。

1日目の夜には、特別企画として「ある日、森で…」というドキュメンタリー映像(2013年制作)の上映会も行いました。今回の企画を中心的に進めてきたメンバーの一人、田中さん(やっちゃん)が作成した記録映像です。やっちゃん曰く

鮎喰川の水量が減っていることへの懸念から、「何とかしなければ」という思いが募り、その原因を探るべく山のことを知るため、山師の方々を中心にインタビューを行い、その記録映像を作成しました。
この映像には、当時の山での仕事や、山での暮らしを知る、多くの方々(現在ではほとんどの方が故人となられています)の貴重な言葉が収められています。初上映から12年が経過しましたが、今回、自然資本に関する展示を機に、神山で生きた人々の声に改めて耳を傾ける機会を設けました。

とのこと。かつて山や森で積み重ねられてきた先達たちの営みを、映像を通して改めてみんなで感じながら、今、私たちは何をできるのか・やるべきなのか、考えるきっかけをもらいました。


報告の最後に、今回の企画に参加してくれた方の感想をいくつかご紹介させてください。

・この展示は非常に組み合わせがよく分かりやすい!!常設展示にするべき!!

・山→川への水の流れの説明の後、森林の展示を見るとすごく理解しやすくてよかったです。山林のデータの中で個人所有の山林が多いことに驚きました。今どうにか手入れ管理をしておかないと将来に豊かな安心な自然を残していくことは難しいと感じます。

・点で行われていた山・川の取り組みがつながる展示でした。川の模型は、より多くの人たちに見てほしい。人が減る中、昔のようにはできない今、どのように土地・自然を守っていくのか。考え動いていかなければいけない。

・水の流れを追いながら、神山の地形、森、棚田、川を見ることで、たくさんの発見があった。地滑り地帯に暮らすことの豊かさとリスクの両面を知って、今私たちができることは何か?考えていきたいと思った。鮎喰川流域=神山町域ということで、鮎喰川を学べる常設の場ができたら、そこに集う人たちと次の世代につなぎたい環境や文化を守り、育てることをしてみたいなと!

・川の水位が昔に比べて低くなっているとよく言われているが、原因を科学的に調べることが大事だと思う。3分の1くらいになっていると言われるが、実際はどの程度なのか、客観性のある情報が、これからの川の、自然の保護に役立つと感じました。

・私たちは、山や川は自然から与えられた所与の資源として「当たり前」の資源として捉えてきたが、本日のプロジェクトによって、改めて山や川が生きていること、条件によっては病み傷つき、劣化していくことをまざまざと実感することができた。そうした中で、先人たちがえいえいと石垣を築き、植林、伐採し、下草を刈り、牛を飼い、暮らしの中で山や川に働きかけ、自然環境を守ってきたことを学んだ。そうした山に生きる人たちの智恵と努力を知るとともに、現在の山や川のあれ方に憂慮を抱かざるを得ない。今回の勉強会が、神山の風土とそこでの暮らしを見直す一歩となることを願っています。

来場してくれた皆さん、そして企画実施にあたり、協力してくださった皆さん、本当にありがとうございました。この企画をきっかけに、これまでの活動が見直されて新たな力を得たり、また新たな取り組みが生まれていきますように。


Special Thanks:
・森山円香さん
・荒木三紗子さん
・瀧健太郎先生と研究室の皆さん(滋賀県立大学環境科学部)
・石川初先生と研究室の皆さん(慶應義塾大学SFC)
・深谷 颯志さん(徳島県 県土整備部 河川整備課)
・佐々木咲江さん、中川景子さん(鬼籠野集落支援員)
・粟飯原明生さんと文化財保護審議委員有志の皆さん
・栗尾久文さん、濵田浩二さん(林政アドバイザー)
・中川雅彦さん(鮎喰川漁協組合)
・橋本純一さん
・後藤正治さん
・河野誠敬さん
・大門康介さん
・とくし丸
・WEEK神山
・里山みらい
・渡邉啓高さん、音葉ちゃん
・安東陸人さん
・田中重人さん、ことちゃん

アバター画像

高田 友美

静岡県浜松市出身。神戸→東京→スウェーデン→滋賀を経て、神山に移り住みました。神山つなぐ公社では「コミュニティ・アニメーター」として、主に大埜地の集合住宅とすみはじめ住宅から始まるコミュニティ育成を担当。休みの日はノラ上手に励んでいます。

高田 友美の他の記事をみる

コメント一覧

  • 現在、コメントはございません。

コメントする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * 欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください