小野地域に昔ながらの、花嫁行列が見られました。
2022年3月の町内の桜が満開の春うららの週末。昔ながらの「花嫁行列」が小野地域を練り歩き、地域に笑顔が溢れた1日になりました。
白打掛の下に鮮やかな色掛下をまとった花嫁さんと、古式ゆかしい羽織袴の花婿さん。後ろには花嫁・花婿の親類と、二人が所属する桜花連のみなさんが続き、門出を祝う三味線の音が、春の沿道に響きます。花嫁が地域の人たちに配る、徳島ならではの文化「お嫁さんのお菓子」も、沿道で祝福する人たちに配られました。
親しい人だけに限定した披露宴は、特別に、地域の「小野さくら野農村舞台」を借りてのアウトドア・ウエディング。2人は、襖からくりを背景にした舞台の上に立って、人前式を行いました。
招待客のうち、ほとんど半分は、二人の友人知人が、スタッフ同然で着付け、料理、会場設営など披露宴を支えました。新婦のお母さまは「個人的なことなのに、町のみなさんが動いてくださって、本当に幸せな二人だなと思った」と感じたくらい、たくさんの人の思いが詰まった1日だったようです。
準備から関わってきた桜花連のメンバーは「この二人だから、みんながあそこまで動いたんだよね」と話します。
その二人について、ご説明しましょう。
花嫁は、2016年に地域おこし協力隊として神山町下分地域に移住し、そのまま定住した川野歩美さん(通称モジャさん)。現在は、小野地域の古民家を改修してゲストハウス「mojahouse」を経営しています。花婿、北山敬典さんは、神山生まれの神山育ち。共に所属する桜花連の演目として、くっつきそうでくっつかないもどかしい「夫婦踊り」を演じて披露した1年後、お付き合いが始まり、ご結婚となったそうです。
とにかく、お二人は、神山が大好き。モジャさんは、バングラデシュをへて、地域おこし協力隊として2016年に神山にやってきましたが、桜花連の他にも神山町消防団女性消防隊や、JA女性部、下分生活改善グループなどなど、たくさんの地元の会に所属して、地域に深く関わってきました。ここまでどっぷり地域のグループに所属している移住者はまだまだ少ないかもしれません。一方の北山さんも、大学を卒業してすぐに神山に戻り、役場に勤めるほど、地域をこよなく愛する神山っ子です。
「地域の人に、恩返しをしたい。感謝の気持ちを伝えたい」
「結婚式は、地元・小野さくら野農村舞台で」
徳島で結婚式や結婚披露宴と言ったら、ホテルや式場で挙げるのが一般的。しかし、神山と小野地域を大事にしたい二人の思いは、最初から決まっていたようです。
とはいえ農村舞台を結婚式会場にするのは異例な話。貸してくれるかどうか少々不安だった花嫁花婿のお二人でした。けれど、農村舞台保存協会の小川会長は、快く承諾してくれました。
小川会長は、mojahouseのご近所さんとして、日頃からお世話になっている地域のお父さんです。しかも、「襖からくりも」というお願いまで快諾してくれました。襖からくりは、舞台の背後で、襖をひっくり返す仕掛けを駆使して、背景となる襖絵を変える徳島ならではの文化。保存協会のメンバーのみなさんもまた、小野のご近所のお父さんお母さんたちですが、快諾して前日、4種類の襖をセッティングしてくださいました。
しかも、モジャさんたちが「花嫁行列をする」と知った人たちは、それぞれ頼まれていないのに、花嫁・花婿の知らないところで、自分ができるお祝いをこっそり用意してくれていました。
小野さくら野農村舞台の看板を作った木工職人さんは、色褪せた文字をそっと華々しい金字に塗り直してくれました。モジャさんが素人米のコメ作りでお世話になっている、西森規夫さんたちおじさまトリオは、徳島市の業者さんに段ボール1箱分、「お嫁さんのお菓子」を自前で注文。昔の習慣通りに、行列の周りに配ってくれました。
桜花連や地域の同年代の仲間たちは、ほとんど徹夜でプチギフトのラッピングや飾りつけ準備、雨対策や会場設営まで担当してくれました。
花嫁行列が歩いたのは、県道沿いを約400m。沿道の人にとっては、一番ゆっくり歩いて欲しい主役の花嫁。しかし、モジャさんは、緊張のあまり早歩きになったそうです。「地域の人に喜んでもらえたのがとても嬉しかった」とモジャさんは笑顔です。
「花嫁行列をします」と事前にご挨拶にいった地域の方々も沿道に出てお祝いしてくれました。あまり交流のなかった方までも、沿道に出て見にきてくれました。
「神山へ感謝と恩返しをしたい」と思って計画した、地域での花嫁行列と結婚式。逆に、恩返しよりも、神山からもらったあたたかさの方が大きいと感じているお二人でした。
あたたかな小野地域、そして神山で育まれた素敵なカップル。
末長く、お幸せに…!