特集

Vol.02

放課後・休日の子どもたち

いろんな大人のいる神山で
子どもたちは
どんな放課後や休日をすごしている?

第3話

スポーツ少年団、野球とバレーボール

2021年8月27日 公開

夕方、神領小学校の近くを通ると、グラウンドや体育館の方から、子どもたちの大きな掛け声が聞こえてくるのを、知っていますか?

神山町には、ふたつのスポーツ少年団があります。野球チーム「神山ルーキーズ少年野球部」の高橋則充監督と阿部剛士コーチ、バレーボールチーム「神領JVC」の佐々木悠佑監督と阿部健治コーチは、4人とも神山町出身。練習拠点である神領小学校でお話を伺いました。

まずは、野球部の練習を見にグラウンドへGO!

教えられたもんは、教えなあかん

まずは、ご自身の子ども時代の思い出を教えてください。

高橋 神領谷の出身です。子どもの頃は、近所の友達といろんな遊びをしていた。田んぼで野球をしたり、夏になったら虫を取ったり、雪が降ったらソリですべったり。季節に合った外遊びをしていましたね。
 
阿部 神領石堂の出身です。下校時は楽しい時間やったね。通学路に湧き水もあったけん、喉が渇いたら、水を飲む。お腹が空いたら、木になってる実を食べながら帰って。

少年野球に関わり始めたきっかけは?

高橋 長男が野球部に入部したんがきっかけで、最初は保護者として手伝いに入ったんやけど、それから子ども以上にどっぷりはまってしまった。
 
阿部 元々、僕も小学校から大学まで野球ばっかりやってました。社会人になって、地域の先輩方と飲んでるときに、「教えられたもんは、教えなあかんのぞ!」って言われてスイッチが入って。そこから、練習を見に行くようになりました。長男が入部してからは、本格的にコーチとして関わっています。

保護者の方が関わって、運営しているんですか?

高橋 そう。代わりもって、ずっと。
 
阿部 いままでは、少年野球出身のOBが多かった。だいぶ減ってきたけど、僕がコーチとして関わり出した時は、ほとんどの保護者が、少年野球のOBでしたね。

子どもたちに関わっていて感じることはありますか?

高橋 以前と比べて、周りの大人が手助けをしとることが多いなって感じる。何かひとつでも、子どもが自分でやらなあかんことを与えてくれたら、野球でも、もう一個先を考えることができる。
 
阿部 自分でするというか、いま何せなあかんかって、いうのがね。
 
高橋 それは、いつも問うし、ずっと言い続けてる。「いま何せなあかんか考えて」って。答えは教えんのやけど、子どもなりにちゃんと考えて、する。それが、プレーにもつながってくる。

阿部 けど、やっぱり、こっちも口を出してしまうけん、子どもたちも動かされよると感じているかも。
 
高橋 野球がとことん好きな子は、自分から考えるだろうし。
 
阿部 昔はね、チームに半分ぐらいおったんですよ。とにかく野球が好きで好きで、野球のことになったら生き生きする野球小僧が。いまは、チームに1人、2人おったらいい方。

子どもに助けてもらうことも、ようけある

監督を始めて、どのくらいになりますか?

高橋 長男が卒部するタイミングで監督になって、もう12年。野球部に関わり始めてから18年かな。前監督の下窪監督は、33年間監督したけん、まだ半分も行ってない。

僕も少年野球をしよったけん、もともと前監督の教え子。長男が入部した時には、「教え子が来るん、久しぶりじゃ!」って喜んでくれた。

それだけ続けていけるのは、どうして?

高橋 ほら、いろんな子どもがおるけんやろね。それぞれ個性があって、みんな可愛らしい。子どもが変わるし、保護者も変わってくるし、チームはその年によって、強いチームのときもあるし、ほぼ勝てんチームのときもある。ほんな中でも、やっぱり子どもなんやろうね。逆に助けてもらうこともようけあるし。

子どもに助けてもらう?

高橋 仕事がめちゃめちゃ忙しいときでも、練習があったらその間、2時間なら2時間、子どもたちのことだけを考えていると、きちんと気持ちをリセットできる。そういうんで助けてもらったことは、何回もある。

練習は、どんな様子ですか?

高橋 まずはルールや技術的なこと。ほなけど、“挨拶する”、“集団行動をする”とか、将来必ず大切になってくるようなことは、練習の中で身についとるんじゃないかな。

阿部 古い考えかもしれんけど、野球部に入ってるということは、周りからは「ルーキーズ」って見られる。ひとりがいらんことしたら、野球部がまたいらんことしよるわ、って言われる。そうはなってほしくない。挨拶とか返事はできるようになってほしいなって。

高橋 野球の練習ではないけど、せっかく神山におるけん、神山らしい、僕らが子どもの頃にしよったことも、夏休みとか合間でさせてあげたい。いまはコロナでできよらんけど、夏の練習の後はいつも川に入ってた。ここでないとできんことをやらしてあげたいと思う。

「神山ルーキーズ」というチーム名になったのは?

高橋 12年前。設立当時のチーム名は「神領ポーキュパインズ」で、その後に「神領スポーツ少年団野球部」になった。

だんだん神領以外の地区の子も参加するようになってきて、前下窪監督が「新しく監督になるんやったら、チーム名を変えたらわ」って。その当時の保護者たちが “いつも心はルーキーズ。初心を忘れずに”、っていうキャッチフレーズも考えてくれて、「神山ルーキーズ少年野球部」に決まった。

保護者のみなさんはどんな関わりを?

高橋 結局は、子どもが中心やけん。例えば、運動会を観に来ない親はおらんよね。それと一緒。最近は、移り住んできた子も少しずつ増えてきて、地元の人たちと移り住んで来た人たちの情報交換の場でもあるんかな。
 
阿部 保護者の負担も当然あるというのも事実。土日は、練習や大会があるし。下手したら、丸一日つぶれてしまうことも多々ある。送迎やって観戦して、家に帰ってできることっていうたらね、あんまりない。でも、それ以上の価値があると思います。
 
高橋 野球だったら、毎週子どもの成長を見ることができる。波があって、良い時があれば悪い時もある。
 
チームが強かったら、勝つことが楽しいかもしれん。逆に全然勝てないチームでも、1本ヒット打ったり、何でもないフライをキャッチできたら、みんなが大歓声を上げるよ。たったひとつのプレーで大盛り上がり。

阿部 普通の生活で、みんながあんなに自分のことを応援してくれることってまずない。野球の良いところです。絶対にその子にバッターボックスは回ってくる。他のスポーツと比べても、自分の見せ場がやってくる。野球は、チーム競技やけど、個人競技でもあるんです。

最後に、子どもたちへのメッセージを。

高橋 まずは、とにかく楽しくやりましょう。いまここで野球を嫌になったら、何の意味もないんで。子どもだけでなく、保護者の方も一緒になって楽しんでできるといい。

阿部 なんでもチャレンジしてください。いまはもう情報が溢れていて、知識でいうたら子どもの方が多いかもしれん。でも、やっぱりやってみる、経験が大事。子どもの時から、いろんなことを経験してほしいなと思います。

 

続いて、バレーボール部へ。体育館の中に入ると、みんな真剣な表情で練習をしています。

上手くなりたいけど、やり方が分からん

ご自身の子ども時代の思い出を教えてください。

佐々木 鬼籠野一ノ坂出身です。小2までは、鬼籠野小学校一ノ坂分校に通って、小3からは自転車に乗って鬼籠野小学校に通いました。小学校の時は剣道をやって、中・高と陸上をやっていました。
 
阿部 上分川又出身です。上分はクラブチームがなくて、唯一学校でミニバスケットがあったんで、4年生ぐらいからやってました。放課後は、家の目の前に川があったんで、釣りに行ってました。ほんまは野球がしたかったんやけど、いまみたいに送迎がなかった時代なんで、できんかった。

バレー部に関わるようになったきっかけは?

佐々木 いま長女が中3なんですけど、長女が広野小学校に入るタイミングで、広野にあったバレー部が廃部になって。

やっぱりバレーがしたいって言い出したんが、小3年のとき。学校が終わって家に帰って来てから、神領小学校まで送迎をしよったんですけど、これではちょっとしんだいっていうことで。バレーをしたいんやったら、転校せえへんかって、子どもたちふたりに説明して。

いま、小6でキャプテンをしている次女が小学校に入るタイミングで、神領小学校へ転校しました。
 
阿部 僕は、長女の入部がきっかけです。社会人のときにバレーをしよったんで、入ったらすぐコーチをすることに。下の娘も中3ですが、娘はふたりともバレー部に入りましたね。
 
佐々木 僕は、バレー経験ゼロ。バレーを始めたばかりの頃は、しょうもないプレーに怒ってたんです。でも、長女の一言がきっかけで考えを変えることに。ある時、思いっきり怒ったら、長女から「上手くなりたいけど、やり方が分からん」って言われたんです。あ、これは親として指導方針を間違えたって思って。「ごめん。パパもバレーボール経験ないから、一生懸命覚えて、一緒にするから、絶対上手になったろうなって」。
 
そこから一緒に猛勉強して。たまたま、前監督の坂西監督が遠い親戚だったんで、それもあって、コーチをするようになりました。
 
しばらくして、坂西監督が闘病の末、亡くなってしまったんです。
坂西監督は意識も高く、監督が作り上げてきたものっていうんは、長い歴史があって、それを引き継いでするっていうんは、気が気ではないし、やるからにはとことんやろうと思って、それから、阿部コーチと一緒にライセンスも取りに行きました。

監督、コーチとして、どんなチームづくりを?

阿部 試合に勝つとかじゃなくて、それ以前の準備ができるチーム。挨拶とか整頓ができるとか、そっちをメインにしたい。ほんなんができつつ、練習の質が上がっていくような。

監督やコーチが言うたことを、頭を使って理解できるとか、指導されたことに対して、これは何のために練習しよるか、っていうんをみんなが分かってきたら、自然と結果は出てくると思うんです。

技術も必要やけど、ほんま基本が大切やね。でも、基本の練習ばっかりすると、子どもは飽きてくる。それをどう飽きささんとするか。子どもたちに「何したい?」って聞いたら「ゲームしたい」って言うんです。ほれもたまにはええんだろうけど、もうちょっと基本ができてから、レベルの高いゲームをしてほしいなって思います。

佐々木 監督になって3年目で、とりあえず必死です。個々にレベルも違うので仕方ないんですが、子どもたちに足らないものをどう引き出してやろうかなって、練習方法は常に考えている状態ですね。バレーはもちろんですが、運動不足の解消にもなるような、楽しくできる練習方法を考えています。
 
ただやっぱり勝負の世界なんで、怒らないぞって決めていても、怒ってしまうこともある。時々、親御さんたちに「子どもたちは、バレー楽しい、って言うてますか?」って質問するんですけど、みんなだいたい楽しいって言うてくれているので、僕のやり方も間違えてないかなって。

同級生だからこそ、競い合える

部員は新しい子も多いのですか?

佐々木 今年になってから一気に入部してくれて、たった半年で9人増えて11人になりました。半年未満の新チームみたいな感じなので、いまの3年生が5人揃っているんが、まあいうたら奇跡というか。段階を踏んで厳しく、もっと複雑にやっていくとか、計画は立ててる途中なんですけど。間違いなく、上手くなると思います。
 
阿部 低学年が多くなってきたけん、高学年の子は練習が物足りんな、と思うんかもしれんけど、この子らが6年生になるときは、楽しみやなと思う。
 
佐々木 誰にも負けんっていう気持ちがある子でなかったら、向上心が出て来ない。そういう子がおるんですよ、すでに。チームメイトでありながら、“サーブはこの子に負けん”とか、あるみたい。

でも、それで良いと思うんです。同級生だからこそ競え合える、そういう相手がおるって幸せなことやなって。

阿部 いまは3年生が多いけん、2年生、1年生が続いて入ってくれたらいい。各学年に3人ぐらいずつ入ってくれたら、ずっと続いていくんやけどね。

子どもたちを見ていて、思うことは?

佐々木 子どもができないことをできるようになった瞬間を見た時は本当に感動します。大会の時になんか、子どもが急成長するんです。この前も、上からのサーブを1週間未満しか練習していない子が、最後の最後で決めたんですよ。しかも、サービスエースで。
 
阿部 みんな可愛らしいんですよ。別の用事で学校に来たときに「コーチ!」って寄って来てくれる。なんか知らんけど、泣きそうになったりするね。ほれがあるけん、楽しみやし、続けれるんかなって。

これから入部を考えている保護者の方に一言。

佐々木 親が子どもに関われる年齢っていうか、身近で成長が見れるっていうんは、小学生の間だけだと思うんです。たった6年間。バレーをしよったら、絶対忘れられない年月になるはずなんで、ぜひお子さんと一緒に楽しんでやってください!

Interview:2021年7月8日

インタビュー:秋山千草
文:いつもどおり
撮影:近藤奈央、生津勝隆、兼村雅彦
制作協力:糸井恵理、西村佳哲
企画・制作:神山つなぐ公社