神山の地方創生「まちを将来世代につなぐプロジェクト」は、この4月から第2期に。昨年の夏から冬に動いていた、その施策検討の場の一つ「ひとづくり」(教育関連)チームで活動した秋山さんに、ふりかえって印象に残っていることを聞いてみました。

 

秋山 いくつもあるけど…ひとつは、検討委員会で中南先生(神山中学校)から聞いた「5年前と変わっていない」という言葉ですね。

── 変わっていない。

秋山 〝子どもたちの放課後の状況〟が。「ほとんどの小学生がスクールバスで通っている」「学校のあとは真っ直ぐ家に帰るルールがある(学童を除く)」「でも家に帰ると、同年代の子どもが近所にあまりいない(町域が広く人口密度が低いので)」。

放課後の子どもたちはバラバラで、選択肢もあまり持てていない。過去数十年の人口減少の中で、習い事や、スポーツ少年団の人員も減って。多年代の子ども同士や、子どもが地域の人たちとかかわる機会も、昔より減っているみたい。

── 神山に限らず、多くの中山間地で生じている事態だよね。三陸沿岸部を訪ねたとき、タクシーで登下校している小学生の話も聞いた。

秋山 中南先生は自分の子どもたちを、バスを使ってもいい距離だけど、30分かけて歩いて通わせているんです。毎日歩く中で、子どもは地域を知ることが出来る。通る時間を憶えていて、外に出てきて挨拶してくれる大人もいるんだって。

自分の子どもたちはそんなふうに出来ている。けど他の子については難しい。家ごとに条件も違うし。「変わっていない」というのは、たとえばそんなこと。

── 検討委員会はどうでした?

秋山 私と役場の二人の、計三人がコアメンバーで、その他に五人の方々に検討委員になってもらった。いろんな保護者と、あと子どもと大人の間にいる町出身の大学生。子どもを育てていたり子どもに近い当事者として、いろんな意見・視点をもらう時間になった。計五回ほど開きました。

そこから施策を考えたけど、実際に形にしてみないと、それで合っているかどうかはわからない(笑)。でも動かしてゆく中で相談・協力出来るメンバーの顔が、神領にも広野にも見えているのは心強いな。

こないだその一人に会ったら、「広野地区でダンス教室が始まる」「検討委員会で話していたことが、自然に形になってきているよ」と聞かせてくれて。私たちが動かそうとしなくても、自然現象のように生まれる動きもあるわけで、生まれてくるものを育ちやすく出来るといいなとも思っています。

学校帰り、ランチタイムの過ぎたフードハブ/かま屋に立ち寄って、自習室的にすごす高校生たち。誰かの子ども(小学生)も混ざっていた。 2020/7/11
 

── 自然現象はなぜ生まれるんだろう?

秋山 そのダンス教室は、◯◯くんのお母さんが中心にいるみたい。「こういうのが出来たらいいな」と思って実際に動き出す人がいて、それにのっかてゆく人たちもいて。

──〝遊び〟と同じだね。アイデアを出す人と、のっかるのが上手い人の両方がいて、遊びが面白くなる。

秋山 そう思います。〝遊び〟と同じという意味で、「つづけないといけない」と思わなくていい、とも思うんですよね。「やりたいところまでやって、それで一度おしまい」でもいい。「リーダーになったからつづけないと…」という気持ちが、負担になってしまうと、つまらないことがつづいてゆくことにもなりかねない。

このまちに面白い人はいる。好奇心旺盛な子どももいる。でも、その両者が一緒にすごす時間が、構造的になかったりする。

たとえば「学校帰りにどこに寄ってもいい」とか、大きな仕組みが一つ変われば、勝手にいろんなものが生まれて来るんだろうな。子どもたち自身がいくらでも展開させる。勝手に生まれてゆくんだろうなって、実感している。

──〝バリアフリーにする〟ということだよね。障害になっているものを外せば、始まることが始まる。

秋山 そうそう。大人がもっと覚悟を持つといいんでしょうね。その覚悟を持てる大人が増えてゆくと、子どもの環境は、よりよくなっていくと思う。

 

秋山さん(動画「神山町創生戦略「まちを将来世代につなぐプロジェクト」第7回報告会」より)
https://www.youtube.com/watch?v=LO3UJAwXKxw

秋山千草(あきやま ちぐさ)
東京・練馬区出身。大学卒業後、小学生の「放課後」を豊かにするNPOに参画。多様な大人が子どもたちにかかわる環境をつくる。二泊三日の滞在プログラムを経て神山に移り住み、高校を中心に「ひとづくり」領域(教育関連)のプロジェクトを手がけてきた。