10月に引き続き、神山町の消防団についてお届けします。

消防団をもっと広く、
新しく神山に入ってくる人にも、
今住んでいる人にも、
これから町を出ようと考えている方にも、
神山にいない方にも神山のこと、
遠く自分の田舎のことを考える、そんな機会になればなと思います。

こんにちは。NPOグリーンバレーのアダチです。移住して2年目になり、先日、女性消防隊に入りました。活動がとても楽しいです。町の人ともぐっと距離が近づきました。

そんな中で「この町に暮らす」とは、どういう暮らしのことなんだろう。「私は神山に住んではいるけど、神山に暮らしているだろうか」?そう考えるようになりました。特段色々考えて女性消防に入ったわけではなかったのですが、中に入ってみて見えてくることがたくさんありました。

消防団は、消防団である以上の働きをこの町でしている。消防団に限ったことではないのですが。そういうコミュニティーに所属している人たちは、日々どんなことを思いながら活動をしているのだろうか。

今回は、現役で活躍する団員の鍛準二(きたいじゅんじ)さんとお話する機会をいただきました。

鍛さんは、私にとって「自然を相手にどう遊ぶか」を教えてくれる神山暮らしの先生の一人です。普段は、寄井地区にある「きたいクリーニング」を営んでいます。いつも気さくで、お会いするとほっこりするようなそんな方です。


消防倉庫前で、鍛さん。

なお、「神山町消防団」の組織構成は以下の通り。
消防団員は、令和5年10月1日現在327人(うち19人が女性消防隊)。鍛さんは、神領分団所属で、その分団長も務めています。

消防団の組織構成

早速、遠慮なく色々聞いてみました。

あだち(以下、あ) 消防団は、火災や行方不明者の捜索の時に、名西消防署の応援として出動すると思いますが、出動は頻繁にあるものなんですか。

きたいさん(以下、き)いや、わからんねんな。こればっかりはいつあるか。
すごかったのは、神領で小火(ぼや)が3連続あるっていう・・・。

3連続・・・

呼び出しは、サイレン(町内一斉放送)であるやん。それでみんな出動するねんけど、サイレンが鳴って「緊急連絡。神山町、・・・・」と来る。この後、「○○分団は出動してください」というアナウンスが続くんやけど、「・・・・」の数秒の間があるんよ。この数秒が長いよね。「・・・どこだー!」ってなる。

あの間(ま)がハラハラしますよね、呼び出しの分団はどこの地区かって。やっぱり、サイレンを聞いたらスイッチが入るんですか。

そうやな、自分の分団が呼ばれたら一瞬「うわー」となるけど、スイッチが入るよな。みんなアドレナリンがでて「正義」が出てくる。仕事もほっといて、わーって行くけんな。

それ、間近で見ててすごいなと思いました。職場の人も消防団だから。

そうそう。ほんでサイレンの後、総務課から分団長に電話がかかって「神領分団お願いします」って。その時に参加できるメンバーが駆けつけて、できることやるって感じやな。

 

緊急の呼び出しでもちゃんと、制服に着替えるんですか?

いや制服はな、着たらあかんねん。ルールは法被とヘルメット、安全靴を履くこと。もし火が移っても燃えにくい生地で、法被を見たら何分団のどの団員かがすぐわかる。

法被で行くんですね!法被の下は何を着るんですか?

法被の下はなんでも。名西消防の人やは、鎧を着とるようなもんやけどな。

じゃあ、名西消防署の消防隊は火に突っ込んでいくんですか。

そう。名西消防の人たちが最前線。この名西消防だけで足りんから、消防団はそれをサポートする。でも、最後に来た分団は筒先で水飛ばさなあかんから、当たったとこは大変やな。

「筒先で水飛ばす」っていうのは、ポンプ車を連れて行って、水源から水を汲み上げて?

そうやな。来た順番にポンプ車同士を繋いでいく。来た順番に、川とか消防用水水源からポンプに繋いでいくけん、最後に来た分団は筒先で水飛ばす。

ポンプ車は1台じゃないんですね。順番に、来た分団のポンプ車同士を繋いでいくんだ。筒先は、操法に使うやつと同じ大きさのものですか。

そうそう、あのおっきいやつ。(画像①)

何時間もあの重い筒先を持つと想像するだけで、汗が出そうです。それで終わりじゃないですもんね。大きな火を消し止めたら、背負うポンプで小さい火を最後まで消すとか。

そうよ。山だと10センチぐらい、ふかふかの葉っぱが堆積しとんで。ちょっと風吹いたらチチって燻って、なかなか消えんけんな。

10年前ぐらいに、下分宇佐八幡裏の山が焼けたことがあって。この時も下分分団と神領分団でセットになって消しに行ったんやけど、それも長かったな。8時間ぐらいエンジン回しっぱなし。

ガソリンとかどうするんですか。途中で多分切れますよね。

メンバーいっぱいおるから、買いに走ってくれて。地域の人が炊き出しして、おにぎり握ってくれたりとか。ありがたいよな。炊き出しは、必ずあるな。長引いた火事場には。

 

ほんとに町ぐるみでやってる感じですね。
別の消防団員の方から、火事場に行ったらワッと内側から不思議と力が湧いてきて、普通ではできないことができてしまうみたいなことが起きるって聞きました。やっぱり、「火事場の馬鹿力」ってあるんですか。

出る出る出る。あの重たいポンプ(画像②)を慌てて2人で担いでいったよ。ポンプって100キロ以上あるやろ。4人で担ぐのが理想だけど。「もう手間足りんしあかんわ。ここ水がない!」や言うて、水のあるところまで動かしたり。

 
画像①「筒先(ツッサキ、ツツサキ)」ホースの一番先。火元に一番近いホースの先に連結して使う。運搬時は、分解し背中に背負って運ぶ。( 互光商事株式会社webページより )


画像②「可搬ポンプ」( 一般社団法人全国消防機器協会webページより )

ほんで山ん中の斜面でしょ。

そうそう。それとすごいんが、サトウヒデオさん(※)。
プロパンあるやん。もう1番早い!いつ行っても一番に火事場におる。これもやっぱり正義やな。すぐにプロパン止めにきとる。

それはすごいですね?!誰よりも早く火災を聞きつけて、プロパンの栓ひねりに行ってると。

「全然栓に触れんかったわ」とかもあるけど、早いわ。ほんまにいつ行っても早い。
(※サトウヒデオさん:まちの水道やプロパンガスを幅広く取り扱う。)

この話聞けてよかったです笑 
私のイメージでは、消防団は自治というか、違うかもしれないんですけど、町で一斉清掃の草刈りするのと同じ感覚なのかなって思っています。

自治やな。 消防団はな。

自分達の町は自分達でっていう気概が、やっぱりありますよね。

(消防団が)なかったらあかんっていうのはあるな。

 

一方で、団内の高齢化があってメンバー集めるのに困っているとか聞きます。実際はどうでしょうか。

確かに、地域によってはな。神領は逆に50後半ぐらい人の退団が増えてきよんな。
結局、自分やが分団長になったもんやけん、 もう若いもんに任せるわみたいなんで。でも、神山町内でも地域差がだいぶあるな。数が減ったり、新しい人が入ってこなかったり。

全体を見たときに、今後どうなっていくんだろうっていう感じですね。

いずれは合体するんかもわからんなぁ。神領ももう5年後、10年後には(各分団を構成する)部の数が減ってる可能性もあるわな。

確かに。どんな形で続けていけるか想像していきたいですね。
非常時の活動以外に、定期の会とかもあるんですか。

消防の部長会は年に5、6回。この間も早朝の訓練があったけど、あれをいつやるかとか決めたり。

あ、この間の早朝訓練、朝5時くらいにサイレンの音を聞きました。あれ、神山全体でやってたんですか。

あれは各分団が7年に1回ずつ持ち回りで、今年は神領。 担当の分団がいて、プラス全団員ではないけどポンプ車部門で、7地域からそれぞれ担当が来る。

あの朝の訓練はいったい何の訓練・・・。

これから乾燥するし1回やっとこうかみたいなね笑

なるほど。どこで、どんなことをしているんですか?

消防道のある河原に降りて、実際にポンプ車同士繋いで放水する感じ。入って、初めての人もおるからやり方とか確認しながら実際と同じようにやる訓練やな。


河原につながる消防道

なるほど、肩慣らしみたいな感じなんですね笑 それにしても朝早い。

現場に行って慌ててホースを上手く投げられないこともあるからなぁ。スピードも大事やけど、もし火事になったらもうとにかくやっぱり正確さも大事。

そうなんですね。ちなみに鍛さんは、消防団員として長く活動してみてどうですか。

今、分団長で、もういっぺん分団員に戻ってもええかなと思ってたけど、今までそんな人おらんな(笑)自分は家の前が消防の倉庫やけんな。いつでも行ける。エンジン乗せるぐらいやったらいけるし、出動もできるけん。 みんなで町を手入れして、地域を守るみたいなんが消防団やな。まあ、日に日にの付き合いとか、活動が楽しいしな。うん。 自分は入っとってよかったなと思ってる。


「消防団に入ってよかった」そう話す鍛さん。

 会話しながら、いろんな人の顔を思い浮かべ話を聞いている自分がいました。そういえば、この町で顔を認識できる人が少しずつ増えている。ということに気がつきました。 消防団に参加したり、地域の活動に顔を出してみたり、日々関わっている人は知らずに増え、町で挨拶を交わす人も増えました。

こうして、町の方とフラットにお話をさせてもらえることがとても嬉しい。

コミュニティーに関わってみようとすることは、町に暮らすということかもしれません。コミュニティーを繋ぎ、暮らしを守る。消防団の役割が少し見えてきたようにも思います。

いつもほぼ月報を書き終える頃に思うのは、ここに暮らす一人一人が町の風景を作っているということ。草刈りも、消防も、根っこでは同じなのだろうなと、そこにかける人の思いも、その働きも。

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