「消防団」? なるほど「消・防、団」!

「こちらは、神山町女性消防隊です。〜」

真っ赤なスバル・サンバーと役場の広報車の2台に分かれ、町の中を網の目で走って注意を呼びかけるのは神山町女性消防隊。彼女らの月一度の広報・防災啓発活動です。

「消防団」って知っているようで、具体的にはどんな活動をしているか意外と外からでは見えてこないですよね。なんとなく、火事に駆けつけて「火消し」をしてくれる集団。とそんなイメージを持っている方も少なくないのでは。

神山に住み始めて2年の私も長らく、そのくらいの理解度でいました。

でも実際の消防団は、消火活動だけでなく、台風、災害時の避難誘導ほか、人の命や町の財産を守るため市区町村単位での「自治防災組織」としての役割をになっています。所属団員は有事の際、町の要請により出動するほか、普段から防災啓発のための広報活動、年次の式典、分団によっては定例の会があったりと活動の幅は広いのです。

実は消防団、全国的に2010年代ごろまで少しずつ活動規模が縮小傾向にあったそう。しかし、2011年の東日本大震災の現場で力を発揮したのは、その地域をよく知った消防団員たちでした。

「消防団」の存在が改めて重要視されるようになっていく中、神山町では「神山町女性消防隊」が、2018年新たに発足することに。徳島県全体で見て、まだまだマイナーな女性消防隊ですが、ここ神山では19名の隊員が活躍しています。

実は私も先輩たちにお誘いいただき、先日女性消防隊の一員になりました!

ということで、ほぼ月報では、2ヶ月にわたり町の消防団を特集します。10月号は「女性消防隊」について。続けて11月号では、神山町の「消防団」全体について。私の体験談も交えながら、解剖したいと思います。


 

普段の活動も紺とオレンジの活動服で!


皆さん、お似合いです!

「アポロキャップ、活動服、手袋、活動靴」この4点が、隊員の正装。揃いの紺色にオレンジのラインが頼もしい活動服が全員に配られます。

火事の現場にもこの服で出動するため、夏も長袖。靴もつま先に鉄板の入った現場用のものを着用します。ちょっと暑いけど、安全に活動するための制服です。


みんなでするから活動が楽しいんです!

女性消防隊が総勢19名。地元出身の方も移住の方も関係なく、町内で活動しています。
そのうち数名の方にお話を伺うことができたので少しだけご紹介。

女性消防入隊のきっかけは?入隊してみてどうですか?

小田さん/関東地方出身
「東日本大震災を東京で経験したことから防災に興味をもっていて、神山で誘ってもらったので入隊しました。震災当時いた職場では、普段から避難訓練をしていました。地震発生時にはお客さまの誘導など現場でその訓練が役立った経験があり、日頃から訓練していることが大事だなと。入隊したら救命救急、避難所の設営などいざという時に役立つスキルを身につけられるしとても良い活動だと思って参加しています」

栗本さん/徳島県出身
「誘いを受けて、町のためと思い参加しました。広報活動(※)で、普段行かないような道を通るので、あそこに空き家があるなぁなどなんとなく町の状況も見えたり、神山町内のことをより知ることができて面白いです」

中井さん/徳島県出身
「女性消防隊が始まったのを聞いていて、それから興味を持っていました。それで、知り合いがたくさんいたこともあり入隊を決めました。隊員のみんなが個性派揃いで、そしてみんな協力的。私自身もとても楽しく活動に参加しています」

仁志さん/徳島県出身
「移住した方の入隊が多い中、地元の人たちとの間を取り持つなど、隊の世話人をしてくれないかと元隊長から誘いを受け入隊しました。移住してくる方は、興味を持ってなんでもしてみようって人が多い気がする。町のためになるならと活動に参加しています」


どんなことをしている?

その1 毎月の「防災広報活動」

 − 4人1班、広報車にのって地図の通りに町を巡回します。みんな、活動服。
この日は、「一ノ坂(下1)」というルートで、広報車を走らせました。普段は通らないような道を行くので、探検気分でキョロキョロ。一方車内では、町のあれこれ井戸端トークが賑やかです。
写真左下:真っ赤なサンバー。後ろ姿がかわいい。
写真右下:A班の車内の様子。この日のドライバーは、隊長の仁志(にし)さん。


その2 毎年1月「神山町消防出初式」 
一斉放水やラッパ隊の号令、功労者への表彰などが行われる消防団の「活動初め」の式典です。消防団員が一同に会します。その様子は「広報かみやま」2023年3月号で。

\ ファンファーレはお任せ!ラッパ隊/ 

徳島県内では珍しいラッパ隊としての活動もあります。ラッパ隊は希望者で活動中。「神山町消防出初式」のファンファーレを担当します。昨年は「全国女性消防団員活性化徳島大会」の号令も担当しました。
 

その3 軽可搬ポンプ操法大会 
「軽可搬ポンプ」は読んで字のごとく、小型の持ち運びができるポンプのこと。この機材の取り扱いの正確さと消火までのタイムを競う「全国女性消防操法大会」は2年に一度実施されています。なんと今年はその大会の年で、徳島県の代表として神山町女性消防隊が出場してきました。


写真上:本番を迎え、出場場所に一列に並ぶ。指揮の号令で操法開始!
写真丸:ホースを伸ばして、ポンプを操作しようとしているところ。エンジンの始動は、4番員のオディさん担当。
写真左下:半年間ありがとう!軽可搬ポンプのロビンちゃん。(「ロビン」というシールが貼ってあったので、消防隊メンバーでそう呼んでいました)
写真右下:操法メンバーでの記念写真。解団式当日、改善センターにて。
 

訓練は、5月から週一回継続して半年間。大人の部活動のような感じで、みんなであーでもないこーでもないと話し合いながら神山の操法の形を作っていきました。あっという間の大会当日。会場には、日本全国から優勝を狙う強者たちがゾロゾロ。

そんな中でも、我々神山チームは訓練の成果を発揮し全員で神山へ元気に帰ってくることができたと思います。このチームでの訓練がもうないなんて寂しいなぁと帰り道。私の一生の思い出になりました。応援いただいた皆様、本当にありがとうございました。

・・・

どうでしょう。どんな団体か見えてきたでしょうか。

私が活動を通して特に感じていたことは、今まで繋がること、お話しできることのなかった町の人たちと関係性が生まれて、大きくぐっと一歩地域に踏み込んでいるなということ。「消防に入りました!」というと町の人に話がすんなり染みていく感じがする。顔を覚えてもらえる。そのおかげで、今までと種類の違うワクワクを感じることが増え、日々の楽しみの幅がすごく広がっていっています。

そして、11月号では「消防団」全体についてお伝えします。どんな展開になるか・・・
楽しみにしていてください。