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ジニーン・シノダ

2016年 神山アーティスト・イン・レジデンス 招聘アーティスト

ジニーン・シノダはロサンゼルス在住の建築家・アーティスト。立体作品とパフォーマンスを組み合わせ現代の日常的な習慣を考察し作品に反映させる。作品のベースには、相反する感情と遊び心が混在するパーソナルな場を追求したいという思いがあり、また様々な探求の可能性が詰まった場でもあり、彼女自身、制作を通じて我を忘れて思考に浸りたいという衝動に駆られることもある。
Stewardson Keefe LeBrun Travel を受賞し、東アフリカにてunplanned developmentsについてリサーチを行った経験を持つ。カネーギメロン大学にて建築を専攻し、オレゴン州の建築免許取得。ウィスコンシン州マディソン校にてファインアート修士修了。
(テキスト:2016年)
 

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■KAIR2016  作品

Life in Balance
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Life in Balance(ライフ・イン・バランス)は、神山町民から収集した素材で作った2つのサイトスペシフィックなインスタレーションからなる。同時進行で制作し、相互の相関性を踏まえて構想を練ったふたつの作品は、国道438号線と町道沿い、4㎞の道を隔てた下分アトリエと神領製茶工場にそれぞれ設置された。
下分アトリエのインスタレーションは、彫刻的、かつパフォーマンス的な要素を合わせ持つ作品だ上部の黒い杉格子から垂れ下がる糸には、過去の生活が感じられる繊細な陶器の皿や器が、目線の高さに吊り下げられている。杉格子を支え、彫刻空間の外枠を構成する4本の柱には、ハサミが掛かっている。参加者はこれらの陶器のオブジェの間をくねくね歩いたり、外周に沿った小さな空間に立って作品を鑑賞できる。対になって均衡を保っているオブジェは、参加者がハサミを入れると、セットで地面に落下する。「ハッ!」と息をのんだ後の小さな笑い声、ドスンと落ちる鈍い衝撃音、ガチャンガチャンと粉々に割れる音、それぞれのオブジェがペイントした杉の床に落ちる度に音楽のような音色を奏でる。床には陶器のかけらと糸が薄い層となって積み上がり始める。そして、後に残されたものは…。

製茶工場では、はじけるように鮮やかな色のオブジェが大きな白い空間の中に浮かんでおり、鑑賞者を夢のような恍惚の境地に導く。かつて製茶工場であった室内に作られたこの空間には、細い糸で繋いだオブジェが白い天秤棒に掛かっており、これらの天秤棒は、両端の梁の間に架かる白い木枠につながっている。 開いた扉から入る空気の流れや、冷え冷えする秋の日の暖房用に焚いた薪ストーブから出る熱、これらの目に見えない力が、海面に浮かぶ難破船の破片のようにモビールを揺り動かす。それぞれの天秤棒には、小さな貝殻とスダチ、赤いスポンジと緑のプラスチック製おろし器、アクアマリンの灰皿とピンクのビー玉など、似ても似つかないものが対になって均衡を保っている。 複数の天秤棒が一体となってひとつのモビールを形成し、それぞれが日々の生活の中にみられる雑然とした様を象徴的に表現している。扇子がそよ風になびき、作品全体が動きの波に押され、均衡が崩れて回転する。部屋が静まると、オブジェは再び均衡の状態へと戻り始める。

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ライフ・イン・バランス 
展示会場:下分アトリエ
形式:インスタレーション、パフォーマンス
サイズ:3.5 m x 3.5 m x 2.5 m
素材:町内から寄付された食器、杉、墨、ナイロン紐、はさみ

 

 

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ライフ・イン・バランス 
展示会場:神領製茶工場
形式:インスタレーション
サイズ:3 m x 3 m x 2.2 m
素材:町内から寄付された日用品、杉、丸材、白ペンキ、釣紐

 


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(ジニーン・シノダ / 2016)