フードハブ・プロジェクトで共同購入の動きがある、と耳に。聞きに行ってみました。

 

笹川 かまパン&ストア、製造責任者の笹川大輔です。

── またあなたですか(笑)。

笹川 共同購入ですよね。これ、見切り発車もいいところで。ミーティングで思わず「やる」と言ったものの、なにをどう進めればいいのかわからなくて。

── きっかけは?

笹川 近所の知っている人が、ナチュラルな食材を扱う某大手コープから「加入件数が30件集まれば、神山町の集荷場まで配達しますよ」と聞いて、まちのメーリングリストで加入者を募った。それを読んだスタッフが「どう思う?」って。

── どうなんですか?

笹川 いや、「まちの人の声をちゃんと聞けていなかったかも」というショックが(笑)。というか反省して。そういう目であらためて店を見ると、「確かにあれもないし、これもないよねー」という声がスタッフからも出てきて。

あれ?…って。地域の食材もあるしパンもある〝地域の日常のお店〟なのに、そうなっていない。これはなんとかしないとなって。

── 「まず集って話してみよう」となった?

笹川 はい。2月中旬にまちの人たち…といっても移り住んできた人ばかりですけど、17名くらい集まって。普段どんな買い物をしているか、どういうものが必要なのか、聞かせてもらった。グリーンコープに野菜を卸している関係もあるので、農園長の白桃から「コープ」と言ってもいろんな種類があることや、別の地域の小さな共同購入の仕組みについても話してもらい。

それで、そうだ! 今日から卵のバラ売りを始めたんですよ。(注:この記事を書いている4/8もつづいています)

── どんな卵?

笹川 神山の奥の木屋平(隣町)に、平飼いで鶏を育てている生産者さんがいて。そんなに広く卸してはいないけど、毎週木曜日、徳島市内へ配達に向かうとき前を通るので寄ってくれることになった。前から、かま屋(食堂)やかまパンでも使っていた卵です。

これまでストアでは、自分たちが「これいいね」「こういう食材を伝えたい」と選んだものを多く扱ってきたけれど、みんなが欲しいものをまとめて、流通コストを下げて、仕入れていかなきゃって思う。

── 神山の商店の一つとして。

笹川 もっと出来ることあるよねって(笑)。パン工房で使っている、業務用の小麦粉の量り売りも出来るようになりました。他に米油・砂糖・塩も。小麦粉を、100gとか500gとか、好きな量買えたらいいなっていう要望はけっこうあって。強力粉・薄力粉・中力粉、なんでもある(笑)。

── このあとどうなってゆくといい?

笹川 「これを取り寄せて欲しい」っていう人がいたら、まず実験的に仕入れたい。「◯◯さんが推薦してくれました」「どうですかー?」みたく。

「月に一度そういう会を開いてゆこうか」って話しています。意見交換を含めた共同購入即売会のような集い。通常販売はまだでも、取り寄せたものを試しに販売してみる機会はつくれたらいいな。奥様方にヒヤリングしながら、より地域との関係性を深めたい。
その場に来てもらえると嬉しいです。もちろん、ストアのメンバーもみんなわかっているので、「こういうの扱えないの?」って直接話しかけてもらえるのがいちばんいい。

── お店をみんながもっと使っている感じに。

笹川 勝手な妄想だけど24h…じゃなくて(笑)年中無休? 定休日なしであけてゆけるといいかな、とも思っています。

食材についてまわる「安心」や「安全」という言葉は、少しひっかかるんですよね。「基準値より低い」とか「××は入っていません」という表示をもって、果たして安全なものだと言えるのかな?って思うし。

多少農薬が使われているけど、自分ちのおばあちゃんがつくった野菜の入っている味噌汁と。どっかの料理人がつくった有名なオーガニック野菜のサラダと。「どっちを?」というとき、僕はおばあちゃんの味噌汁を飲みたいんですよね。安心なものが落ち着くというか。それが安全か?といったらちょっとわからないけど(笑)。モヤモヤしつつ、でも知っている人がつくったものの方に自分は惹かれる。

── 「〝オーガニック〟と書いてあればいいのか?」っていう。

笹川 そればっかり先行している気がして。自分で見て・考えて・選ぶのが大事だと思うけど。「やっぱり野菜は手に取って選びたい」って言う人は多いのに。

── 「自分で考えずに行動する人」への違和感、前にも話していましたね。

笹川 〝パンブーム〟の体験から来ているんですよね(注:2010年前後から複数の雑誌で「パン特集」が組まれるようになった流れ。その頃笹川さんは八王子のパン屋さんで働いていた)。あのときって、「どこどこのパンマニアが推したパン」「◯◯さんが美味しいと書いていたから」とい感じになっちゃって。自分で選んでいないんですよね。

美味しさは求めている。けど、着地点ではないかな。「自分たちの意見を持とうよ」というのはある。押しつけるのは違うけど、一緒に考えたいよなーって思うんですよね。

 

笹川大輔(ささがわ だいすけ)
東京生まれ。「かまパン&ストア」パン製造責任者。18歳から修行。父親もパン職人。八王子のブールブールブランジェリーで製造責任者として働きつつ独立を考えてる頃、フードハブ・プロジェクトを知り、2017年に妻子と神山に移住。食生活とトレーニング、休養が生活の基本。

神山の人たちへ:
笹川さんが一緒に考えたい、次の共同購入の集いは、4月19日(月)15〜16時です。