昨年7〜12月の約半年、神山では「まちを将来世代につなぐプロジェクト」第2期(2021〜26)の戦略策定が進んだ。「すまいづくり」領域の検討委員は以下のとおり。

伊藤友宏(グリーンバレー/移住交流支援センター)
後藤志郎(徳島商科)
赤尾苑香(その建築設計工房)
馬場達郎(神山町総務課)
西本靖志(神山町建設課)
鈴江正典(神山町産業観光課)
高橋宏徳(神山町住民課)
高田友美(神山つなぐ公社)

その過程で、コーディネーター的に動いていた高田さんに話を聞いてみます。

 

高田 1期では「集合住宅プロジェクト」が大きな取り組みだったけど、町営の新築物件を次々に建ててゆくことは出来ない。なので、この5年の経験も踏まえつつ、あらためて「空き家・空き地をもっと上手に活用してゆこう」という合意が取れた。

写真は2/12の「第7回 つなプロ報告会」より

── 合意が取れて、「じゃあ役場でよろしく」でも「公社が頑張ってね」でもなく。

高田 そう。互いに「やってこう!」って意欲的になっているのが、昨年の検討過程のいい成果かな。あと、私たちが「難しい」と感じていることは、全国的にも「難しい」んだなって、あらためて認識しました。

── たとえば?

高田 「相続登記が進んでいない」とか、「土地や家屋の持ち主の意識がなかなか変わらない」とか。そういうのは、ここ独自のものではなく日本の問題なんだなって、ほかの地域の事例を調べてゆく中で感じました。

今回策定した施策は、そういう根本的な問題について「どうする?」というところまでは至っていない。けど2期の中で、いい打ち手を見つけてゆきたい。最近別のミーティングで町長が、相続登記の法改正について「国に提言・要望してゆく必要がある」と話していたけれど、本当にそういうレベルの難しさなんだなって。

だから、「すぐに動かせる」ことと「時間をかけて動かしてゆく」こと、その両方の軸で進めてゆこうという意識を、途中からハッキリ持つようになりましたね。

── 環境問題を解決するアプローチに〝意識の変革〟〝技術革新〟〝法制度の改変〟の三つがあると、ある教育団体の人が話していたけど、環境問題以外の社会課題、ここでいえば「すまい」にもこれは当て嵌まるかな。

高田 〝意識の変革〟には、たとえば「すまいの終活セミナー」のようなものに力を入れてゆくことがありますよね。ただ「空き家を活用しましょう」という話でなく、「自分たちの住む町並みをつないでゆこう」というところに至れるといいなと思う。

「DIY力を高める」ことも大事じゃないかな。日本では家が古くなっても、あまりそこに追加投資せず、一軒の家を住みつぶしてゆくことが多い。欧米では、家に手を入れつづける習慣や動機付けがある。

── それによって、社会資本としての住宅が循環可能になっている。

高田 そう。たとえば「石積み学校」の取り組みのように、誰かの家を直しながら、それが学習機会にもなるような学び合いの場づくりを、「住まい」についても出来ないかな。

えっと、次に〝技術革新〟でしたね。

── キーテクノロジー。

高田 たとえば、住宅メーカーの住宅商品とはまた別の、地場産材をつかった「神山の住宅パッケージ」の開発が出来るといいかな。

空き家関連で言えば、これまでは「入居する人が直す」形できたけど、越してきた人が最初から安心して住めるように、水回りや耐震や、基本的なリフォームはやっておく仕組みづくりも必要ですよね。

── 仕組みや方法も〝技術〟だと思います。

高田 家や土地の寄付を受け付ける仕組みとか。三つ目は〝法制度の改変〟でしたっけ。「相続登記」や「所有」をめぐる諸問題がある。

── 不動産相続されないまま持ち主不明になると、国庫に入ってしまって、地域の次世代が空間を使えなくなる。

高田 使えるようにしてゆく仕組みが要りますよね。分筆しまくって、誰も手が付けられなくなってきている。権利関係のややこしさには法律の更新や改変が要るんでしょうね。

あと景観。都市計画のない地域で、まちの景観をどう形成してゆけるか。

「まちを将来世代につなぐプロジェクト」の外部アドバイザーに東工大の真田純子先生がいて(石積み学校の創設者)、その院生の西尾さんという人が「小さな市町村が、水道等のインフラ維持を考えながら、宅地化の誘導を行ってゆく方法論について、修士論文で取り組んでみたい」と言い出してくれて、昨年12月、3週間ほど神山に滞在し、必要な役場内の部課をヒヤリングして回ってくれたんです。

── 院生インレジデンス!

高田 っていうか、リサーチャー・インレジデンスですね(笑)。いまその結果を東京でまとめ直していて、秋ぐらいを目処に、次の動きに入ってゆけそう。

── コロナ禍でも、必要な外部メンバーとの出会いはあった。

高田 そうなんですよ。施策検討の中で、考え事にがっつり付き合ってくれた岩手県住田町の田畑耕太郎さん(参考:「小さな町の建築技師」の面白さ。町の未来を支える多能職)もそうだったけど、奥出雲町の民家改修の担当者さんに状況を聞かせてもらうことも出来たり。オンラインで人に会ったり話を聞くことのハードルが、社会全体でグッと下がった。それはむしろよかったことだったな、と思います。

 


「まちを将来世代につなぐプロジェクト」第2期の策定について イン神山
https://www.in-kamiyama.jp/tsunagu/tsunagupj2/

「まちを将来世代につなぐプロジェクト」第2期|神山町創生戦略・人口ビジョン 神山町役場サイト
http://www.town.kamiyama.lg.jp/office/soumu/kikaku/tsunapro.html

第7回・つなプロ報告会(2021年2月12日) YouTube [2h18m]
https://www.youtube.com/watch?v=LO3UJAwXKxw&feature=youtu.be