シャーロット・ブリスランド
Charlotte Brisland

2005年度 神山アーティスト・イン・レジデンス招聘作家
2005/9/16ー2005/11/30 神山町滞在

イギリス南部の海岸沿いの町、ポーツマス生まれ。ロンドンの王立美術学校で修士号(絵画)を取得。イギリス国内の数々のグループ展に出展し、近年スイス・ジュネーブでの展覧会に参加し、国際舞台にデビュー。プロの道を歩み始めたばかりの新鋭若手画家。10月14日に行われた神領小学校での課外授業は、第54回全国へき地教育研究大会における公開授業の一つとなり、好評を博した。(→ Charlotte Brisland website)

旧鬼籠野保育園にて

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Artist Report

Charlotte Brisland “De Stijl Landscape[Japan]風景の様式[日本])” 120×150cm 油彩・キャンバス

英国は現在、先鋭な絵画の潮流を国際的な舞台で先駆ける国だ。英国出身で大学院を出たばかりのブリスランドは、こうした時代のヴィヴィッドな主潮のなかで独特な絵画的ヴィジョンとセンスを磨いてきた。彼女の描く風景には人がいない。心の目がとらえる景色は身体性を伴った不思議な情景として抽出される。重層した記憶がスリリングなイメージとストーリーを覚醒させ、観る者に心的インパクトをもたらす。若手にもかかわらず、自己の世界観と手法をしっかりもった将来有望な作家である。(武蔵野美術大学教授 岡部あおみ)

シャーロット ブリスランド Charlotte Brisland

昼の4時だと思って起きてみると夜中の1時半だった。ひどい時差ぼけと周辺地域への興味心から、散歩に出てみると、川のそばにたどり着いた。その夜は満月に近い夜で、月の光が醸し出す独特な雰囲気がインスピレーションとなって、私の最初の絵画作品が生まれた。静けさと、劇的なほどの光の変化、これが神山独特の雰囲気を作り出している。
アトリエで制作し始めてからまもなくして、この町の優しさを感じるようになった。
多くの方々が作家に焼きたてのパンやケーキを差し入れてくれたり、寒くなると靴下まで届けてくれた。このような小さな心遣いのひとつひとつがこのレジデンス事業をこれほど温かいものにしているのだろう。
レジデンスが佳境に入るにつれ、大きなプレッシャーを感じるようになった。
初めての課外授業をテレビで生中継されている中で行うというのだ。展覧会までに作品を完成させられるか不安になった。課外授業に先立ち、通訳を通して先生方とミーティングを開いたが、文化の違いから誤解が生じることもあった。そしてついに運命の日がやってきた。これ以上ないほどに緊張したが、最後には大きな達成感を感じることができた。どうしてみんなは私にこんな大役を任せたのだろうかとも思った。それは私にとって最大のチャレンジであり、ここに来て初めて本当に自分が何かをやり遂げられるのかを知る機会を与えてもらったように思う。そして、これはKAIRに関わっている皆さんの信頼と励ましがなければ、決して達し得なかったことである。