城戸みゆき Miyuki Kido

2006年度 神山アーティスト・イン・レジデンス招聘作家
2006/9/18ー2006/11/18 神山町滞在

1972年広島生まれ。女子美術大学美術学部絵画科洋画専攻卒業。家や地図をモチーフにインスタレーションを制作している。小さな紙製の家の中に風景封じ込め、レンズ越しに覗き込む作品に近年取り組んでいる。(→ Miyuki Kido website)

下分宿舎にて

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Artist Report

城戸みゆき Miyuki Kido “神山生活 The Life of Kamiyama” 2006

神山の町に実在する家を紙製のミニチュアの箱家として再現した。家の内部には、神山の風景や情景などを描き割状の舞台装置のように創り上げた。箱家に設置されたドアスコープを覗き込むと、レンズ越しに内観と外観の裏返しの世界が広がる仕掛けになっている。7つの家には、それぞれ異なる中身が見えてくるが、すべてを観ることで神山の様子が全景となって現れてくるのである。国道や農家の納屋、ノスタルジックな看板など、どの風景も温かく優しい。会場には、神山を流れる鮎喰川を布でシュミレーションして、その両脇に箱家が点在するように配置された。観客は箱家を手にとって中を覗き込み、自分だけの神山を体験することができる。(武蔵野美術大学非常勤講師 嘉藤笑子)

“神山生活 The Life of Kamiyama”
城戸みゆき Miyuki Kido

神山の生活には美術家として緊張感もありました。油断するとすぐに作品が単なる訪問者のエキゾチズムや絵日記に陥ってしまいそうで、大袈裟ですが戦いのような気持ちで制作していました。閉鎖された靴工場(旧保育所)が、地元の皆さんの力でギャラリー空間に再現されていった過程は感動的でした。あの場にインスタレーションを完成させられたという経験は、これからの制作にたくさんのインスピレーションを与えてくれると思います。今回の滞在で制作したのは、風化したような小さな家のオブジェの中に封じ込められた風景。それは滞在中の個人的で断片的なコミュニケーションの集積であり、現実世界にある町と、私が訪問者として触れ得た範囲で再構成された架空の町が重なりあった世界です。取り付けられた覗き穴から中を見る時、観客は他人のまなざしの方向に沿って世界を見つめます。