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狩野哲郎

2019年 神山アーティスト・イン・レジデンス招聘アーティスト

1980年宮城県生まれ。2007年東京造形大学大学院造形研究科修了。2011年狩猟免許(わな・網猟)取得。既製品や植物を組み合わせることで、空間へのドローイングとしての新しい「風景」を造り出すことに取り組んできた。2009年から取り組んでいるインスタレーションでは、時に鳥という「他者の視点」をとりこみはじめる。こうした狩野の作品世界では、モノや空間があらかじめ持っていた意味や機能から逸脱して扱われることで、人間にとっての価値観や認識方法が宙づりにされ、普段、私達が意識することのない新たな知覚や複数的な世界の想像を促す。近年は日本国内各地のほか、アメリカ、インドネシア、オマーン、韓国、シンガポール、ノルウェー、フィンランド、モルディブ、ルーマニアなどさまざまな国で狩猟や生態系にまつわるリサーチと滞在制作、発表を行う。

→アーティストHP 狩野哲郎

kair2019


[展示会場:大粟山]
Naturplan / 自然の設計
2019 | ミクストメディア(ガラス、木材、石、ファウンド・オブジェ)

狩野哲郎が近年取り組んでいる、既成品と自然物を組み合わせた彫刻・建築的インスタレーションは植物や鳥、動物など人間以外の存在にとってのさまざまな物の価値や意味、そしてあたらしい環境としての可能性を探り、提示するものです。 植物や鳥、動物のいったさまざまな存在にとっての世界認識について考える過程で、継続的にリサーチしている対象として、農業や園芸、造園、あるいは狩猟や釣り、動物園などの、自然と関わる人々の歴史と技術があります。 ハンターや釣り人が罠や疑似餌などを通じて生物とコミュニケーションを取ることは、われわれ人間には未知の認識についての想像を巡らせることにほかなりません。 それらの経験から培われた狩猟文化や技術は、生物の世界認識を知るための大きな手がかりとなることでしょう。

大粟山では、頂上の社から一段下がった小径を入った奥に現れる木立のあいだに、大小の彫刻を配したインスタレーションを制作しました。
作品はガラス、木材、古材、剪定された木の枝、石、食器や釣具、古道具などの既成品、神山で見つけたものとそれ以外の土地から持ち込んだものを組み合わせ、生きている木々、あるいは倒木の切り株と関連付けながら、小さく大きく、低く高く置かれています。 風景に差し込まれた、機能や意味から切り離された純粋な色彩や形態はそれぞれの存在にとって標識となり、副木となり、水場や止まり木となり、供物台となり、彫刻となります。 私たちが見知った森を歩くときにさえ、きのうまで見ることのなかった果実をときおり目にするように、鳥や動物たちもまた、この場所をあたらしい自然の一部として発見するでしょう。

 


[展示会場:豆ちよ焙煎所]

a tree as a city / 都市としての木
2019 | ミクストメディア(ワイヤー、木材、ファウンド・オブジェ)

Dazzled signs / 純粋な標識 (カモフラージュ・カミヤマ)
2019 | 紙にコラージュ、箔、色鉛筆、オイルパステルなど

2019 | 紙にコラージュ、箔、色鉛筆、オイルパステルなど

豆ちよ焙煎所では、二階建て町家を改装した吹き抜け空間に寄り添うモビールとコラージュを展示しました。 太い枝から微細な仕掛けまで、異なるスケールを往復しながら力学、色彩、形態の均衡を探りながら構成されたモビールは木材、古材、木の枝、石、釣具、古道具などの既成品、神山で見つけたものとそれ以外の土地から持ち込んだものを組み合わせ、空間に合わせた大きさで展開されています。 ゆっくりと揺らぐ全体を眺めていると、細部がある瞬間に突然見えることは森のなかに浮かび上がる一本の木に似ています。 木がさまざまな存在にとってそれぞれの都市たりうるとすれば、森は木の反復ではなかったことを思い出すでしょう。 コラージュの手法を主に用いた平面作品は、抽象化された神山とそこに連なる四国のランドスケープから連想されたものです。 素材の既成品のホログラム、ストライプ、金属光沢、蛍光色は色彩と質感が衝突して明滅するがごとく、形態をカモフラージュします。 地図のように連続する誠実なスケッチとは遠く、地図をなぞり車窓に流れた断片のポートレートがそれら自身によって覆われることこそ、(たとえ)山を失ったとしても、鮮やかだった印象をつなぎとめることができる方法かもしれません。



[展示会場:いといアーッ]
Every Part Unique / すべての部分が固有の形になる
2019 | ミクストメディア(ガラス、木材、ファウンド・オブジェ、鳥獣保護区等位置図など)

Dazzled signs (Kamiyama Camo) / 純粋な標識 (カモフラージュ・カミヤマ)
2019 | 紙にコラージュ、箔、色鉛筆、オイルパステルなど

Dazzled signs (Kamiyama Camo) / 純粋な標識 (カモフラージュ・カミヤマ)
2019 | 紙にコラージュ、箔、色鉛筆、オイルパステルなど

Savage structures(Flexible branch)/ 野生のストラクチャ(フレキシブルな枝)
2019 | 枝、ゴム製品

Lured lures (Autumn never ends)
2019 | ルアー、果実

Savage structures(Deer camp, Finnish forest)/ 野生のストラクチャ(鹿キャンプ、フィンランドの森)
2019 | 鹿角、狩猟用ベスト、フィンランド軍M05迷彩

Savage structures(outdoor activities)/ 野生のストラクチャ(無題のアウトドア)
2019 | 枝、狩猟用罠、釣具(テンビン)、羊毛

いといアーッでは、古民家を改装したギャラリー空間に狩猟、釣り、動物行動学にまつわる資料やコレクションと作品のディテールとなるかもしれないアイディアと素材をインスタレーションとして提示しました。
神山と神山を相対化して見るための四国全体の鳥獣保護区等位置図の収集や治山、治水事業、ランドスケープのフィールドワークの過程で目にした風景のディテールを手がかりに作られたコラージュ、いままで国内外で収集してきた素材やコレクションと神山のつながりをさぐる、ゲームの途中のデスクのようなインスタレーション。
作品として成立する前の関係性のあいまいさを保っている状態は、明確に言語化できない、しかし何らかのルールを浮かび上がらせる。 保留しておく、ある決定的な瞬間が来るまで待つこと。 手札を切らさないように、手札を切れるように。


撮影:小西啓三 Copyright (C) 2019 Kamiyama Artist in Residence. All Rights Reserved 当サイトのテキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。