Thu Kim Vu

2012年招聘作家
 

ベトナム、ハノイで生まれ育つ。2003年にシカゴ美術館附属美術大学(SAIC)にて、美術修士課程修了。

ライスペーパー上に、頭で考えず落書き調に白黒のインクでドローイングすることから生まれる作品に興味がある。書道や伝統絵画で用いられる伝統的な素材のしなやかさや、さまざまな空間で折り曲げできる軽さを利用し、平面から立体へと展開させる。

近年は旅行が作品の主なインスピレーション源となっており、現在は地図に焦点をおいたプロジェクトに取り組んでいる。地図は反復したさまざまな形や断片、建築空間からなり、記憶や観察を基に、訪れた町や施設をナビゲートする。地図のレイアウト上には、緻密に描かれた線の間に構造物や方位が表現されており、町並みや車の往来、そこに住む人や建造物をイメージさせる。

現在はトロイ大学やベトナム国立大学のハノイ校で、非常勤講師としてビジュアルアートを教えている。(テキスト:2012年)
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日本に来る前の当初の計画では、和紙と墨を使い、ローカルエリアの地図を反映したドローイングを神山で制作したいと考えていました。実際に神山に来て生活するうちに、私の空間への興味は地図というコンセプトから、ふたつの空間との関係へと発展していきました。この地域の周辺環境と私の関係を反映しているように、山々に囲まれた自然風景の中では、自分自身が小さく感じるのに対し、畳のある和風の家の中では自分が大きく感じます。このような関係性に着目し、こぢんまりとした家庭的な雰囲気の粟カフェと、自然の中で踊っているような気持ちにさせる、より広々とした寄井座を展示スペースに選びました。

風景と踊る

寄井座のインスタレーションでは、山から見たさまざまな神山の自然風景を表現しました。屋根や木々、田畑が重なり合った風景が何層にも見られ、構造物のようにサークルを形成しています。

展覧会場  劇場 寄井座(神領 北地区/寄井)
使用材料  和紙、墨、電球、番線
 

ミニチュア スペース

粟カフェの作品シリーズは、和紙、特に雁皮を使って、自然風景を表現した作品とインテリア空間をイメージしたミニチュアボックスからなります。箱の作品は障子のある和風の家のインテリアや徳島の人形浄瑠璃の舞台からインスピレーションを得て、仕切りを何層にも重ねるという構想から発展したものです。

木の箱の内部には、これまでの記憶や日本で観察したことを基に描いた墨のドローイングを何層にも配置しており、断片的な内部の建築空間を表現しています。また、それぞれの箱の内側の後方部分、または、外側の後方部分に特殊なライトを設置し、内部を照らしていますが、光の効果は紙と木の構造により弱められ、古風な色合いを醸し出しています。また、箱の内側には、日本の障子に似せて、複層のプレキシガラス(アクリル樹脂を使用したガラス)を使用しており、ミニチュア空間内部が透けて見えるようになっています。内部のドローイングは、ミニチュア式に家具や室内のオブジェを写実的に描いたり、鑑賞者が自由に解釈できるように抽象的に表現したものです。

展覧会場     粟カフェ(神領 上角地区)
使用材料     阿波和紙(雁皮)、墨、アクリル板、杉、ランバーウッド、のり、LED電球

 

撮影:小西啓三
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