上分公民館の管理業務に携わりながら、仲間たちと「エタノホ」 の活動(米づくり)を重ねる植田彰弘さんが、それとはまた別に〝草刈り〟の仕事を手掛けていると耳にしたので、聞いてきました。

 

── いつ頃から?

植田 〝お手伝い〟としては3年ほど前。住まいを江田に移したのが5年前で、それまでは別の集落から通って田んぼをさせてもらっていました。その頃は出役(でやく)というか、集落のお勤めの一つとしてすることが多かった。

でも、草刈りの技術やスピードが認められるようになり(笑)。「うちもお願い出来ないか?」「植田さんに頼んでみたい」と、3年ほど前から相談が増えてきたんです。


──「植田さんに」と頼まれる気持ちは?

植田 純粋に嬉しかった(笑)。僕は草刈りが好きなんです。暮らしの楽しみとして、なんだろう…作業というより、それを通じて景色が整ってゆくところにやり甲斐を感じていて。それが「仕事」としても認められて、頼まれたのは、やっぱり嬉しかった。

── 好きなんだ。

植田 草を刈ってから、集落の別の場所に立って眺めると、自分の状態が出ているんですよね。景色に。

*写真中央、及び下側は植田さんが刈った棚田

余裕のあるときは仕事が丁寧で、景色も映える。石垣もすごくきれいに見えたり。草を刈るだけでなく、景色がつくり出されている。

でも〝ただの作業〟にしてしまうと、いくら刈っても前と景色が変わらない。「草刈り一つ、まだまだ出来ていないな」って。余裕というか、草刈りに向かう時間のつくり方が大事だね、って話しています。

── 誰と?

植田 去年から一緒にやるようになった兼村くんと。彼は「エタノホ」も一緒にやってきた仲間で、意識を共有出来るし、集落で暮らす人々の年齢を背景に風景が少しづつ荒れてゆく様子を見てきたから、想いが重なるところがあるんです。

── 草刈りは誰からの依頼でも引き受けるんですか?

植田 知らない人から「1時間いくらで」と頼まれる場合は、お断りしているんです。他の仕事との兼ね合いもあって、草刈りだけは出来ない。

でも、少しづつ広がっています。自分たちがその人を知っていて、関係のある方が必要としてくださるなら出来るだけ応えたい。いまは上分の、江田・金泉・殿宮で数軒。

── 先ほど「技術」という言葉があったけど。

植田 一度「きれいに刈れない」と悩んだ時期があって。桜花連(神山の阿波踊りの連)で会った人に、刃の入れ方や、仮払い機のメンテナンスを教わった。すると気持ちよく刈れる。

江田の師匠にもときどき、刈っているところを後ろから見てもらうんです。すると「力(ちから)入ってるな」「疲れるぞ」って、肩の振り方とか教えてくれた。師匠はあと「風を通す」と言う。米づくりでも「風の流れ、水の流れを意識しなさい」って。最初の頃はまったくわからなかったなあ。

草刈りを通じて、自分の暮らしの意識も変わった。「人から見られている」という目線。「客観的にどう映るんだろう」って。家の中の風通しも意識するようになって。

── 草刈り。深いなあ!

 

植田彰弘(うえた あきひろ)
1983年・神奈川県横浜市生まれ。エタノホ共同代表。北海道網走市でサラブレッドについて学び、次第に農や自然への関心が高まる。2014年、神山塾への参加をきっかけに移住。「菜の花まつり」を重ねるなど、景観づくりや、地域内外の老若男女を受け入れてきた江田集落に興味を抱き2016年から住まいを構える。上分公民館の管理を手がけながら、「エタノホ」での米づくりを重ねている。気持ちのいい写真を撮る人。
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