この夏、神山出身で、それぞれ京都と神戸の大学で学んでいる海老名和(いずみ)さん・中川麻畝(まほ)さんが、母校の神山中学校に「卒業生と語る会」を提案。11月に実現した。

いわゆる〝OB訪問〟とすこし切り口の違う企画。終了後の話を聞いてみました。


── いつ頃から考えていました?

いずみ 8月頭くらいから。

まほ そうやな。

いずみ 京都の下宿からオンラインで「つなプロ」の公開ミーティングに参加して。終わってからフィードバック・シートに、「こんなんあったらいいな」って書いたんです。

〝若者と若者〟のかかわりを持てる場があったらいいなと思います。

小中学生の頃を振り返ると、地元の大人と関わる環境はすごく整っていたと思うのですが、すこし年上(高校生・大学生)の人とかかわれる機会は、ほとんどなかったように思います。

神山から出たことがない頃に、町出身のちょっと上のお兄さんお姉さんが「どんな風な生活を送っているのか」「どんな風に地元・神山を捉えているのか」「どんな目標を持っているのか」を知る機会があったらよかったなあと思います。

(中略)そんな機会が出来るなら、高校生・大学生は「(町内外での)自分たちの体験」を町の子どもたちに伝えて。子どもたちからは、「神山のいま」「自分たちが経験していること」などを伝えられたら、高校生や大学生も町の動きを知れて、その場で関係性も出来るいい機会になるんじゃないかな。相互に学び合うみたいな。

8/3の海老名和さんのフィードバック・シートより

いずみ 中学生の頃を思い返すと、高校生や大学生や20代くらいの人が、あまり近くにいない。先輩とのつながりが、卒業すると一気になくなったイメージがあって。

まほ そうやな。

いずみ とくに私らは神山の先輩があまりおらん市内(徳島市)の高校に進んだから、それもあったかも。

── 思い付きから3ヶ月かけて、そんな機会をつくってみた。

いずみ 終わった後は「これでよかったんかな…」って。形に出来たけど、内容はもっとよく出来たんじゃないかと。でも昨日、中学校から生徒の感想文を受け取って。私たちが思っていた以上に、たとえば進路のことも考える機会になっていたんやなと思えて、救われた。すごく(笑)。

まほ なにが正解かわからないまま、「これでいいんかな?」「いいんかな?」と思いながら進めてきて。当日はめっちゃ楽しかったんです。

いずみ そう! めっちゃ楽しかった。


まほ でも終わってから、「中学生にとってどんな時間だったんだろう」と気になっていた。感想文には「歳も近いから話しやすくて」「視野が広がりました」「いろんな相談事を聞けてよかったです」「卒業後こういう進み方もあったんやなと思った」とか書いてくれていて。

いずみ 「行ける高校じゃなくて、〝行きたい高校〟に行きたいと思うようになった」と書いていた子がいて、そこまで考えてくれたんや!って。「なんとなく大学へと思っていたけど、すぐ働くのも選択肢としてありなんだなと思った」というのもあって。

まほ 逆もあったな。「大学で学ぶのも楽しそう」とか。

── 中学生は何人ほど?

いずみ 20人。学年が1クラスでその全員。先輩側は私たちを含めて6人。同級生と、いっこ下と2つ上。みんな仕事を休んで来てくれました。徳島市で働いている人が3人。神山の下分の保育所で働いている人が一人。あと私たち。

まほ 中学生6人くらいの1グループに、卒業生が2人づつ。私たちも同級生の卒業後の仕事の話とか、ガッツリ聞く機会はこれまでなかったから、たくさん聞いて、「同い年なのにすごいなあ」って。

設計士の子がいて。どこかの道の駅の設計にかかわっていて、自分が描いた完成予想図とか見せてくれて。中学生と私らも一緒に「えーっ!」「すごーい!」ってなって。

いずみ そうそうそうそう。


まほ 休憩時間も卒業生と中学生がワイワイ話していて。それもよかったな。

── 先生たちは?

いずみ 後ろから(笑)。

まほ 知ってる先生ばかり(笑)。

いずみ 私らには「母校訪問」みたいな。卒業生も行きやすかったと思う。

まほ 終わったあとにコーヒーを飲みながら、校長先生が「来年以降もつづいていったらいいな」と言ってくださって。よかったね。

いずみ 今回は私らが相談させてもらったけど、中学校側から声をかけてくれるようになると、卒業生が中心になるより継続性が高いんじゃないかな。

── 母校に提案するのって。

まほ いやもう緊張しましたよ、それはそれは。私は4月から神山に戻っていたけど、いずみちゃんは夏頃は京都だったから、学校には私が行ったんです。

校長先生は自分のときの理科の先生で、教務主任も国語の先生やし。知らない人に話すよりめっちゃ緊張して。でもニコニコ聞いて、「やりましょう」と言ってくれた。

── 卒業生が提案しに来た(笑)。

いずみ どんな感じだったんだろう(笑)。

まほ 後で「先生たちも『こういう場を持てたら』と思っていたけど、卒業生との連絡が難しかった。そこに言ってきてくれてよかった」って。

いずみ 形にしたのはまほ(麻畝)です。思っていても実現出来ないことって、ようけあると思う。けど私が話したことを「面白い」と言ってくれて。

まほ 「いいな」と思ったんです。そのときはそれで終わっていた。けど一緒に働いてるまわりの人たちに、「いいと思うんですよ」と話していたら、「じゃあやってみたら」と言われ。「ほう!」と。「そうか。やればいいか」と思って。

── やってみて、どうでした?

まほ やっぱり、「いいな」と思ったことを「やっちゃえばいいじゃん」って。面白がって一緒にサポートしてくれる人たちがいる環境がよかった。神山はそんな場所なんだなって。中学校の先生もだけど、なんか受け入れ力が高い。

いずみ それは絶対ある。

「やってみたい」と思ったことを出来た感謝が、まず大前提としてあって。その上で大きかったのは中学生のフィードバックです。

前向きに捉えてもらうことが出来て本当によかった。私もまだ大学生で、働き始めていない。あるいは働くようになって1〜2年目だからこそ、伝えられたことがあったかもしれん。一緒に考える感じだったよな。

まほ うん。「自分たちも中学生のときはこうしてたな」「こんなこと確かに大変だったな」とか、一緒に考えたり、話したりっていう、あの空間がよかったのかも。

 

海老名 和(えびな いずみ)
1998年、神山町神領生まれ。中学校卒業後、徳島市の城東高校へ。京都大学で、看護と公衆衛生の勉強をしている。

中川 麻畝(なかがわ まほ)
1998年、神山町下分生まれ。中学校卒業後、徳島市の徳島北高校へ。神戸市外国語大学で英語と人口問題を学んでいる。「大学生 町内バスツアー」(2019)への参加をきっかけに、2020年4月から12月まで、神山つなぐ公社インターンとして働く。