日本の〝千年村〟の話 | SFC石川研「神山ひとまわり」展・ナイトイベント 2/4

学び、ものづくり

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投稿者:西村 佳哲

場所:
神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス
開催日時:
2019年8月22日 19時〜21時

*当日の中継。録画データでご覧いただけます。(Periscopeアプリのインストール不要)
>日本の〝千年村〟の話(2h02m)

 

慶應大学SFC・石川初研究室の3年間のフィールドワークまとめ展「神山ひとまわり」(8/18〜25、20日休)の夜プログラム。4夜連続の第2夜は「日本の〝千年村〟の話」。ゲストは早稲田大学で、建築と人の関係を教えている中谷礼仁(なかたに のりひと)さんです。

ゲスト:中谷礼仁(早稲田大学創造理工学部 建築学科)
    石川 初(慶應大学SFC)
聞き手:西村佳哲(神山つなぐ公社)
主催: 神山つなぐ公社、NPO法人グリーンバレー
開場: 18:45 *早めにご入場いただけます(駐車場の混雑が予想されるので早めに来て吉。席を取り、展示もゆっくりご覧ください)​​
参加費:町内在住者・出身者 … 無料
    町外からおいでになる人 … 1,500円[Peatixで事前申込


写真:早稲田大学 創造理工学部のサイトより

中谷さんの専門分野は、建築史.歴史工学(アーキオロジー)。研究の一つに〝千年村〟がある。

「現在取り組んでいる〝千年村プロジェクト〟では、日本で千年以上続いている集落・地域を調べています。きっかけは東日本大震災でした。震災の被害に遭った地域について、たくさんの報道があったことは誰もが記憶に新しいと思います。一方、何もなかった地域については誰も何も触れていません。しかし、無事だった地域は頑健なのですから、むしろ焦点を当てるべきではないか――。」

〝何もなかった地域〟という着眼の切れ味がいい。では、地域が「千年つづいている」ことはどう判断するのか?

「平安時代後期に作られた辞典『和名類聚抄』(わみょうるいじゅしょう)に掲載されている全4,000郷のうち、約2,000郷が、具体的な現在地と比定することができています。」

古代地名と現在地名の照合には『角川日本地名大辞典』(1978-1990)を活用。「この組み合わせでいけるんちゃう?」と組み立ててゆく過程、楽しかったろうな。
同プロジェクのトサイトには比定された地域が載っている。下図は徳島・吉野川沿い。輪郭をボカした青円が該当地域。神山町は…比定されていませんね。(^_^:)

サイトには「『和名類聚抄』の郷名比定地=すべての〈千年村〉ではありません」と書かれている。神山の図書室にある「神領村史」を開くと、石器時代の遺物(石棒、弥生式土器、平形銅剣など)が出土とあるので、ここも千年以上つづいた場所であるはず。
…いや、いかんいかん。どこが千年村で、どこがそうでないかでなく、中谷さんたちが掴もうとしているのは「長くつづく場所の特性」だ。

「この2,000地域を地図上にプロットすると、いくつかの特徴が見えてきました。河川沿いに多いこと、安定した地盤の際に位置し、なおかつ稲作も可能な地域に多いことなどです。これまで研究者有志とともに調査を本格化、国内各地を訪問し詳細調査を行ってきました。その調査経験から、長く続く場所の特性がほぼ見えてきた…」

中谷さんはその研究の中心人物。石川初さん(と学生のみなさん)も上記「研究者有志」の一角を成しています。
この夜はまず中谷さんから、千年村の話と、彼らが見出してきた「長くつづく場所の特性」を。石川さんからは、その視点で見る神山の話を聞かせていただきます。〝場所をみる〟視力回復プログラムのような時間になるといいな。どうぞお越しください。

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中谷礼仁さんの著書
『未来のコミューン──家、家族、共存のかたち』インスクリプト・2019
『実況・近代建築史講義』LIXIL出版・2017
『動く大地、住まいのかたち――プレート境界を旅する』岩波書店・2017
『セヴェラルネス+(プラス)―事物連鎖と都市・建築・人間』鹿島出版会・2011

上記『動く大地、住まいのかたち』は、ユーラシア・プレートの境界上の居住文明調査から生まれた一冊。中谷さんが2013年に巡ったアジア、地中海、アフリカ各地の探訪を経て書かれている。人が生きてゆくこと、基盤としての土地、その上に建てられる生の器としての建築の全体を見つめる姿勢が心強い。

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以下は、石川ゼミの神山研究成果の一つ
『かみやまでいきること/これまでの千年 これから千年』より

詳しくは、当日をお楽しみに。

 

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慶應大学SFC・石川初研究室 「神山ひとまわり」展 特設サイト

ナイトプログラム:4夜
8/21(水)神山の昔の写真 ドドンと大投影会
8/22(木)日本の〝千年村〟の話
8/23(金)神山に3年通って:石川初 語り下ろし
8/24(土)山あいのランドスケープ・デザイン会議

公開日:2019年7月26日

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西村 佳哲

にしむら よしあき/1964年 東京生まれ。リビングワールド代表。働き方研究家。武蔵野美術大学卒。つくる・書く・教える、大きく3つの領域で働く。元神山つなぐ公社 理事(2016〜21)。著書に『自分の仕事をつくる』(晶文社/ちくま文庫)、『ひとの居場所をつくる』(ちくま文庫)など。

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