「ひとづくり(教育チーム)」の森山円香が神山日記帳に、「神山創造学のいま」というタイトルで、ここ約1ヶ月の高校の様子をレポートしている(4/22)。自宅待機中の生徒たちと、学校の先生、つなぐ公社やフードハブ・プロジェクトのメンバーが、オンラインでどんな取り組みを展開していたか。森山と一緒に動いた、つなぐ公社の梅田學に聞いてみました。



── 梅田さんは「ひとづくり」チームの中で。

梅田 主に高校プロジェクトの「神山創造学」で、生徒とかかわっています。その中で彼らの仕事観や、この社会でどんなふうに生きてゆくかとか、キャリアのことを扱っていて。

── 神山創造学って〝仕事〟の授業だっけ?

梅田 そういうわけじゃない。生徒と一緒に学校のそとに出て、まちのいろんな人に会いながら、神山を感じたり・考えてゆく授業ですね。その中に「職場体験」のパートがあるんです。でも職場体験だけがキャリア教育ではないなと思っていて。

授業の中で一年間を通じてなにを感じたか、言葉にすることを大切にしている。その過程で、自分が大切にしたいこと、心が動くことが少しずつ理解され、将来どんなことをすればいいのか見えてくればいいな、と思っている。

── 神山校(高校)におけるコロナ感染拡大の影響は?

梅田 3月の頭から休校になって、僕らも先生方も、準備していた授業が出来なくなって。卒業式は1・2年生の参列無しで行われ。県外から留学している生徒たちは、4月頭の始業式や入学式には参加できず。でもそこで森山さんが書いたとおり、県外生も入学式に参加出来るように、オンライン接続を試して。

── 先生たちの反応は?

梅田 最初は難色を示されていました。「ネット」という言葉に危険な香りがあるんじゃないかな(笑)。「在校生の顔が外から見えてしまうんじゃないか」とか。

でも森山さんがLINEの「オープンチャット」という機能を見つけてきて、これなら安心だし、生徒たちの手元にある慣れ親しんだ道具でつながれそうだと。「やってみよう」と、まず二人でつないで。僕も面白いなと思った。
それで先生たちに説明して、学校が保護者一人ひとりに確認もとって、まずは始業式の中継から始めたんですよね。

── その後も進化している様子ですね。

梅田 ふり返えると、第1段階が「ライン電話」で入学式の中継。離れた地域にいる生徒の声がスピーカーから聞こえて「おおっ」となり。第2段階はLINEの「オープンチャット」。YouTube動画のリンクや見て欲しい記事を送って、各人の感想をGoogleフォームで共有。生徒同士が感想を見あえるようにして。第3段階は、先生等がカメラの前で「どうしてる?」「課題の感想、受け取っているよ」といった話しかけを、限定公開のYouTubeライブで配信して。

第4段階では3年生の「課題研究」授業を、ZOOMで始めている。それが4月の最終週です。

── オンラインの授業は、教室の授業をそのまま同期型コミュニケーション(ZOOMなど)に移しかえると失敗しやすい。非同期型と同期型のコミュニケーションを組み合わせて形づくるのが良策、と理解しているけど、そのセオリーにしっかり乗っかっているな。

梅田 少しづつ段階を踏んでいるところがいいですよね。そこは森山さんがすごいなと思う。生徒たちにとってバリアー感のない道具立てで始めているので、構えさせていない。先生たちには他の学校の事例を見てもらいながら不安を取り除いて、みんなで一緒に一段づつ上がっていった。神山校の先生たちも前向きなんです。

── あの方々は常にそうね(笑)。

梅田 ですね(笑)。他の公立校でまだ取り組んでいないのに「やろう、やろう!」と楽しめている。ZOOMでの授業は、もう先生が率先して環境を準備していて。研究テーマを話し合う三人一組の生徒のブレイクアウトルームに、先生も一人づつ入っていて。

僕や森山さんは、技術的な支援をしたり、一緒に入って生徒らに「どんなことに興味がある?」「もう少し詳しく調べてみようか」ってかかわっている。3年生の総仕上げの課題研究授業が、オンラインで始まっている。

── 小学校から大学まで、いろんな先生が遠隔授業の導入に苦労していたこの2〜3ヶ月だと思うけど、梅田さんたちは「いまあるもの」で組み立てている姿がいいなと思う。「今夜冷蔵庫にあるもので、美味しいものつくる」感覚というか。

梅田 (笑)生徒たちの授業の感想やコメントを読んでいて、教室で書いてくれるものと、違う感じがするんです。いつもより素直に書いているというか。

使っている道具が、普段から慣れているものだからかなあ。スマートフォン。彼らは日頃からインスタのストーリーとかで、ドロドロした本音を交わし合っているんです。そのいつもの空間で書いている感じがあるのかな。等身大のものが出てきている感じで、いいなあって思う。

── これからは?

梅田 今週高校では、ZOOMでする課題研究の2週目です。どうなってゆくかな。

あと、同じくお休み状態の保育所の先生と、「家にいる子どもたちとオンラインでつながれないかな」と話し始めていて。

たとえば、朝みんなで挨拶したり、手遊びを10分くらいしてみたり、画面の前で一緒に踊ったり。所長さんや保育士さんと話していたら、「出来るといいな」ということがいろいろ出てきて。感染拡大はなにも喜べないけど、高校の試みがあったので、そんな動きも始めることが出来ている。

イン神山/神山日記帳
「神山創造学のいま」 2020年4月22日 森山円香

生徒の声も載っています。最後から二枚目の写真・右端が梅田さん。