あゆハウス常勤スタッフ採用|高校生たちと、日々の暮らしをつくる

終了2021年9月15日

投稿者:あゆハウス

(ayuhouse.yoriinishi@gmail.com)

全国から神山へ、地域留学に来た高校生たちが暮らす寮で、寮生の暮らしをサポートするハウスマスターを募集します。

〝寮母さんが面倒を見てくれて、舎監の先生がいて点呼があって、3食付き〟。「寮」という言葉から、そのようなイメージを持つ人もいるかもしれません。

今回ハウスマスターを募集する寮、通称あゆハウスは、いわゆる「寮」とはかなり異なる、寮生と地域の大人とで話し合いながら暮らしをつくっていく場です。

 

あゆハウスの様子やそこで働くハウスマスターの仕事について、高校の先生、役場の職員、ハウスマスターの言葉を通してお伝えします。

 

 

神⼭町は、⼈⼝約5100人(2021年4月時点)の⼭あいの⼩さな町。過疎を受け⼊れながらも、若者やクリエイテイブな⼈材が集まり、多様性に富むユニ⼀クな働き⽅や暮らし⽅の実現にむけた、様々な取り組みが行われています。

寮生の通う徳島県立城西高校神山校(以下、神山校)は、町役場や町内唯一のコンビニからすぐのところにあります。県立の高校でありながら、神山町とも、とても密接に関わっている農業高校です。

ターニングポイントになったのは、神山町の創生戦略「まちを将来世代につなぐプロジェクト」ができた2015年。それ以降、地域をフィールドに学ぶオリジナルの授業や、学校で習得する剪定技術を活かして高齢者の庭の手入れを行う有償ボランティア(「孫の手プロジェクト」)など、地域性と、高校の専門性を生かした取り組みが数多く展開されています。

 

「うちはとても小さい学校で、先生と生徒の距離が近いです」

そう話すのは、神山校歴通算16年目の阿部三代先生。

徳島県内にはいくつか県立寮がありますが、あゆハウスは町立です。高校の先生が舎監として入ることはありません。しかし阿部先生が寮に関する窓口に立ってくれているので、情報の共有や相談をスムーズに行うことができています。

神山校は全校あわせて、生徒90人と教員17人。徳島市内にある生徒数約500人の本校と、分校である神山校とでは、先生や生徒の雰囲気もだいぶん違うようです。

「生徒の方から、『先生、見て〜髪切った〜』とか『今日の弁当、何?』とか本当に些細なことで話しかけてきます。生徒数の多い小中学校に通っていたときはあまり目立たなかったような子が、うちでは主役になることもよくあります。生徒数が少ないので目を配りやすいんです」

自分から神山校を希望して来た子もいれば、中学の先生に薦められて来たという子もいます。後者の場合、自己肯定感が低く自信のない子も多いそう。先生たちは「高校生活を通して自信をつけてもらいたい」という願いを持って生徒と接してきました。

2019年度に神山校は、地域創生類/環境デザインコース・食農プロデュースコースに学科を再編して新たなスタートを切りました。3年が経ち、入学してくる生徒の雰囲気も変わってきたと言います。

「全体的に、マイナスな発言をしたり他の学校と比べる子が減りました。特に県外の子たちは、自分でわざわざ調べて『ここで勉強したい』『ここで暮らしたい』と言って来ています。あゆハウスがなかったら県外生はうちに来れていませんので、感謝しています」

 

あゆハウスは、学科再編と同じタイミングで「神山校への入学を希望する生徒が、県内外の遠方からも来られる環境をつくろう」と町役場が開設しました。

神山校から徒歩3分のところにあるコンクリート造の元教職員住宅と、町役場が2018年に建てたリビングシェアタイプの木造住宅を、高校生の寮として活用。運営は一般社団法人神山つなぐ公社です。

現在は、元教職員住宅に男子9人、木造住宅に女子3人が暮らしています。

今後最大18人まで入居できるようになる予定で、現在同じ敷地内に共用リビング棟を建設中です。

 

ある日のあゆハウスを覗いてみましょう。

夕方5時。夕食づくりがスタートします。朝食と夕食は、寮生が当番制でつくっています。大人はあくまでサポート役。栄養バランスや旬の野菜を使うことなどアドバイスをしつつ、見守ります。

今日の食事当番は1年生の片桐理乃さん。冷蔵庫や野菜のストックを見て、使える食材を確認します。ししとうが大量にあるということで、この日のメインは鶏肉とししとうの甘辛煮に決定。

近くの肉屋とスーパーに買い出しへ。手慣れたもので、必要なものをササッと買い物カゴに入れていきます。

食材が揃ったところで、残りの食事当番の2・3年男子も参戦。当番でない後ろの2人はマインクラフトに没頭中。

片桐さんの横で見守るのは神野昌子さん。食育スタッフの1人です。神山町での地域おこし協力隊を卒業後、町内で別のお仕事をしながら、あゆハウスの食育スタッフとして週2日関わります。

「ちょっと味が薄い気がする」「もうちょっとお醤油入れた方がいいかも」

15人分の食事づくりは、味を決めるのがなかなか難しそう。

この日は、役場総務課の相原課長をゲストに迎えて、料理をふるまいました。あゆハウスは総務課が担当ですが、相原さんはこの4月に総務課長に着任したばかり。実際の様子を知ってもらおう、と企画しました。

「なんで神山校に来ようと思ったの?」「暮らしてみてどう?」と寮生に聞いたり、「総務課ってどんなお仕事してるんですか?」と逆に寮生から質問されたり。

 

食べ終えたあとに、少し話を聞かせてもらいました。

「おいしかったです。みんな、活発やね。もうちょっと落ち着いてるかと思った」

はい、毎日とっても賑やかです。

「『自分たちで料理をつくる寮に興味を持ったので来ました』と言っていた子がいましたね。寮が地域留学の決め手になっていることに驚きました。自分が高校生のときは寮に対して自由な時間がないイメージを持っていて、時間がかかっても家から通うことにしたタイプなので」

神山出身で田舎暮らしの大変さが身に沁みている相原さんにとって、都会からあえて神山に来ることを選んだ高校生たちの存在は、新鮮だったようです。

「いまはスマホもあって独りになりやすいから、あゆハウスで地域の人とコミュニケーション取ったり集団生活をする経験はいいよね。自分からコミュニティに溶け込んでいける力は、社会に出ても大切だと思います。違う場所に行っても、ここの経験を生かして成長してくれたらと思います」

神山の人たちは「定住してほしい」みたいなことをあまり言わない印象があります。

「気持ちとしては、卒業後も神山で暮らしたり働いてくれたらいいなとは思うけどね。難しいところがあるのは分かっとるから。卒業したあとも気軽に顔出してほしいね。社会に出てからあゆハウスを客観的に見たらどう思うんだろう。聞いてみたいな」

 

この日はちょうど、ある寮生の誕生日。手作りのケーキとスコーンとメッセージ集をプレゼントされていました。学年を超えて、和気あいあい。

彼ら彼女らは今後どう育っていくでしょうか。まちの人たちは楽しみに見守っています。

 

寮生たちがつくるのは日々の食事だけではありません。庭で野菜を育てたり、コップや皿を陶芸でつくったり。勉強机も手づくりです。地域の大人たちに教えてもらいながら、「つくる」経験を重ねています。

「暮らしをつくる」。その意味するところはモノづくりにとどまりません。寮がはじまって3年目、食事当番や掃除、ゴミ捨ての分担など、だいたいのルールは決まってきました。しかし、どれも不変のものではありません。自分たちでやってみて、誰かに負担が偏ったり不満が出てきたら、その都度話し合ってルールを変えていきます。

話し合いを通して自分たちで納得のいく答えを見つけていくことを、あゆハウスではとても大切にしています。

 

 

「当たり前だけど一番大切なのは、人に関心を持ち続けること。ハウスマスターは、目の前にいる寮生の気持ちに耳を傾けることはもちろん、共同生活の中で、人の関係性や場の動きを見て、必要なことをやっていく。そういう仕事だと思います。」

そう語ってくれたのは、寮が始まるタイミングで神山に移り住み、初代ハウスマスターとしてゼロから今のあゆハウスをつくってきた荒木三紗子さん。

大阪で都市開発の仕事をしていたときに神山を訪れ、まちの風景や地域の人たちの営みを間近に見る中で「自分に合ってる」と感じたそう。地域の中に学びの場をつくることや、多様な人が関わる場づくりに関心があり、それを寮という形でこのまちでできるなら、と移り住みました。

「人に興味を持ち続け、持ってもらい続けることで、人は良くなるしよく育つ、という話を聞いたことがあって。本当そうだなと思うんです。あゆハウスにはいろんな家庭環境の子、いろんな経験をしてきた子がいますが、神山に来て、まちや学校でたくさんの大人たちに、自分のことを見守ってもらっていることや応援してもらっていることを感じる中で、良い方向に変わっていく子たちを見てきました。

 私自身、今までの人生を振り返ると、家族以外の人と、本当の意味で深い人間関係を築くことってあまりできていなかったように思うんですけど、今あゆハウスの寮生たちは私にとって家族に近い存在です。興味を持って接することを諦めないようにしてきた気がします」

現在、ハウスマスターは常勤2人と非常勤1人。さらに食育スタッフが非常勤で3人。20代から60代まで幅広い年代のスタッフが寮生と日常的に接していることで、地元のお母さんたちの卓球サークルに連れていってもらったり、集落の田植えや山登りに参加させてもらったりと、寮生は幅広い経験や出会いができるようになっています。

一方で、子どもたちが多様であるように、大人側も意見が一致しないときはしばしばあるそうです。

「それぞれ大事にしているものがあるので、ぶつかることもあります。大人同士も自分の思いを話し合って、答えを見つけていくしかないんだと思います」

 

誰しもに勧められる仕事ではないです、とはっきり言う荒木さん。

「ハウスマスターは何でも屋だと思います。寮生やスタッフとの関わりはもちろんですが、学校・役場・保護者との調整も多いので、そういった色々な人たちの意見を取りまとめていく力は必要だと思います。日常的な広報や、寮生の募集も仕事のうち。現場以外の時間も多くあるので、運営全般に関わることになります」

 

荒木さんがハウスマスターになったときに1年生だった寮生たちも、いよいよあと半年で卒業です。彼ら彼女たちの卒業と同じタイミングで、荒木さんもあゆハウスを卒業することにしました。

「自分の120%を出したいと思ってやってきました。ただ、この仕事を生涯やるわけではないと思って、期間を決めたんです。

 自分がやりたいことを本当、十分にさせてもらえました。あゆハウスは面白いと思っているので、次の新しい人にもそういう経験をしてほしいんです」

 

荒木さんは仕事を通して、自分自身の在り方を振り返られるようになったと言います。

「大企業に勤めているときは、責任の所在が自分じゃなかったり、周囲も割り切って仕事をしているところがあって。寂しさを感じつつ自分も馴染んでいたところがあったけど、ありがたいことに、ここは風通しがよく、現場でいろんな裁量を任せてもらいながら運営できる環境だと感じています。

 人と関わりながら仕事を進めていく中で自分自身の新たな一面に気づいたり、ここは変えていかないとと思ったり。大げさかもしれないけど、自己成長できている実感があります」

自分の成長と、同時に進む寮生の成長。毎日ちょっとずつ変わっていくその様子をそばで見続けられるのは、ハウスマスターの特権かもしれません。

「寮生がどんどん新しいことを吸収していって成長していく姿は、すごく嬉しい。集中する時間伸びたなとか(笑)。ぐっと真剣な表情をして話すようになったり。そういう場面に立ち会えたときに、すごくやりがいを感じます」

 

日常をつくり続けていくあゆハウスは、今日もにぎやかです。

大切なバトンを渡せる人を探しています。

高校生とともに育ちあう、神山でのハウスマスターを経験してみませんか。

 

 

募集要項

雇用形態 一般社団法人神山つなぐ公社職員
あゆハウス専任スタッフ
給与・待遇 月給 19万円〜(経験や能力に合わせて給与決定)
・賞与(年2回支給)、時間外・宿直手当あり
・各種保険(健康保険、雇用保険等)
・交通費・家賃補助あり
・勤務中の夕食・朝食代は半額補助
・有給休暇(年20日)、夏季休暇
仕事内容 下記を、2名の常勤スタッフと神山つなぐ公社職員とで分担します。現場でのシフト勤務(寮生および寮スタッフの対応)を週3日程度とその他業務(下記項目参照)を週2日程度を想定しています。
・保護者・学校・役場との調整・情報共有
・寮イベントの企画運営、地域連携
・寮費の運用や施設の管理
・入寮募集
勤務地 徳島県神山町
勤務時間 週5日勤務(1日7時間45分)
 ※ シフト勤務:16:45-翌朝9:00   その他業務:フレックス
 ※ 宿直で日をまたぐ場合、週6日勤務になる可能性もあります。
求める人物像 ・あゆハウスの運営方針および神山町の創生戦略「まちを将来世代につなぐプロジェクト」に共感できる方
・管理や指導といった関わり方ではなく、ともに暮らすメンバーとして寮生やスタッフに関心を持ち、対等に関わることができる方
・寮での関わりに加えて、まちとのつながりを意識して柔軟に取り組むことができる方
応募資格 ・2年以上の社会人経験
 (子ども若者と関わる仕事やプロジェクトマネジメントの経験がある方歓迎)
・遅くとも2022年3月までに働き始められる方
・3年以上継続してハウスマスターの業務を行うことができる方
応募について こちらのフォームよりご応募ください。
ご記入いただいた内容をもとに書類選考を行い、オンライン面談・現地訪問を予定しています。
求人に関する
お問い合わせ
一般社団法人神山つなぐ公社(担当:荒木)
メール:ayuhouse@tsunagu-local.jp
電 話:050-2024-4700
参考URL 神山つなぐ公社とは?
城西高校神山校の寮「あゆハウス」(神山町役場HP)
あゆハウス通信
神山はいま(神山出身者・在住者のインタビュー集)
かみやまの娘たち(神山で暮らす女性のインタビュー集)

 

あゆハウス (ayuhouse.yoriinishi@gmail.com)

城西高校神山校の寮は、鮎喰川の「あゆ」をとって、「あゆハウス」と呼ばれています。 「あゆハウス通信」では、あゆハウスで暮らす高校生・ハウスマスターが日々の活動を定期的に発信しています。 「地域で学び、地域と育つ」をコンセプトに、神山でさまざまなことにチャレンジする私たちを温かく見守っていただけたら嬉しいです。

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