「ハウスマスターの仕事は、暮らしをつくること」神山つなぐ公社は、あゆハウスで高校生と共に暮らし、共に成長する人を募集します。

終了2024年8月12日

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投稿者:神山つなぐ公社

城西高校神山校に通う生徒のための町営寮「あゆハウス」はオープン6年目。遠方から入学した生徒たちが協力し合い、共に暮らしをつくる場です。地域の中で、1人1人の思いを大事にし合う話し合いの文化が根づいています。
この度、来春(2025年)までにハウスマスターを新たに採用することになりました。「ハウスマスターって聞きなれない言葉だけど、どんな仕事?」という疑問について、6年目の兼村雅彦さん、4年目の中村奈津子さんからお話を伺いました。聞き手は、開寮から見守ってきた公社スタッフ、秋山千草です。


<自分の気持ちにしっくりくる言葉を選びながら話す、兼村さん(中央)。言葉を待つ秋山さん(左)と中村さん(右)。「思いを聴き合う」をいつも大事にしているのがあゆハウスのチームです>

神山つなぐ公社は、2016年より神山町版地方創生戦略である「まちを将来世代につなぐプロジェクト(以下、つなプロ)」の施策実現のために作られた組織。神山校の存続を図る「高校プロジェクト」は、神山町役場、地域の方々など多くの方の協力のもと、つなプロの「ひとづくり」事業として進められてきました。その大きな要のひとつが「あゆハウス」です。
あゆハウスは、県外など遠方から「神山校で学びたい」という意志を持って入学して来る生徒を受け入れるための場。寮生は地域の大人からも「まちの子ども」として、深い関わりを持ちながら成長します。3年間、卒業生を送り出してきた今、「また神山に戻ってきて住みたい」という生徒も出てきました。

秋山2人にとって、あゆハウスは、どんな場でしょうか?どんな時間が好きですか?

中村大好きな場所!あゆハウスは、私にとってもう一つの家のような存在です。彼らと一緒に時間を過ごすことが本当に楽しい。先日の夜は、寮生の1人が共用リビングで、カフェを開いてくれたんです。ちゃんと焙煎したコーヒー、ラムネ、スイカジュースなんかを用意してくれて。みんなで笑いながら過ごしました。

兼村僕も夜の時間が好きかな。夕方やから夕食までは、ある程度決まった流れがあってそれを見守っていることも多いけど、消灯ぐらいの時間になると皆それぞれの時間を過ごしていて、その時間帯は自然といろんなことを話せる時間になったりしている。少人数でおやつを食べたり、話し合ったり。2、3人と土手で一緒に星を見ながら話したり、外のベンチで一緒に歯を磨いて口の中をぶくぶくさせながら話をしたり。
そういう時間は結構自分も仕事モードではなく素の自分で楽しんでいるし、みんなも自然体になっているのかな。そういう時間を一緒に過ごすと関係性が縮まっていく気がします。


<ちょっとしたティータイムを楽しむ、寮生たちと兼村、中村両ハウスマスター>

秋山いい場ですね。そのような場になるまでに、寮生たちと信頼を築く際、どんなことを大事にしていますか?

中村何かをしなくても、寮生たちのことを「知っている」「気にかけている」ことが大切だと感じています。関心を持ち続けることで、彼らが困った時に自然と反応できる関係を築いています。「ねぇ」と声をかけるだけでも、彼らが安心できるような関係性。あゆハウスでは、定期的に寮生全員が寮のことを考える「全体会議」を開きますが、ある時、みんなの良いところを手紙にして送り合う日があったんです。この時に「なむちゃんはいつも愛情をくれる」という手紙をもらって、一方通行ではない関係性を感じて嬉しかったことを覚えています。

兼村難しい質問ですね。「仕事なんだけど仕事ではない」、というスタンスが必要かなと思うことが多いですね。仕事とはいえ、人と人との関係。仕事かどうか関係なく、一人の人間として向き合うことが大切というか。「仕事」というラインがあると、管理する側の大人と寮生という壁が崩れない気がします。僕は単純に寮生と「友達になりたいな」と常に思ってます。

秋山確かに。ハウスマスターと寮生は、「管理者」と「寮生」という関係ではありませんよね。

兼村そう。例えば、僕は「江田」という地域の棚田で米作りをしていてますが、田んぼにそこまで興味ない子が、イベントじゃない普通の作業も意外と来てくれていて、それは友達の関係があるからかなと思ったりしています。僕が仕事関係なくおせっかいすれば、寮生も手伝おうかとなっているという感じでしょうか。
関係が築けてくるとお互いの思っていることを話し合える。彼らの悩みを聞いたり、自分の悩みを話したり。ハウスマスターとして悩んでいることも、正直に寮生に話すこともあります。大人も悩みながらやっているんだなと理解してもらえると僕らの目線にも寄り添ってくれたり。そうやって僕らを通して、自分の世界だけではなく広い視野で物事を考える寮生が増えるといいなと思っています。


<江田の棚田にて、春の「代かき」イベントにやってきた寮生たち。どろんこです。>

兼村僕自身も、あゆハウスに関わって、成長したんじゃないかな。あゆハウス内での話し合いはもちろん、広報や視察対応を通じて人前で喋る機会が多いので、苦手だった人前で話すことも今は結構出来るようになってきました。僕が30過ぎてできるようになったことを今の寮生は普通にしているのですごいなと思います。
あと自分自身6年の中で変化したこともたくさんあると思うけど、大事にしていることは最初から意外と変わっていないかもしれません。それは誰に対しても、何に対しても正直で誠実で、自分自身、偏らずフラットでありたいというところかな。

秋山元々のまささん自身の在り方が、あゆハウスの考え方と合っていたということ?

兼村確かに、今思うとあゆハウスの考えと合っていたのかもしれませんね。ここに関わるまでは、高校生とやりとりするような環境は全然なかったんだけど。

中村今の話を聞いて、私、まささんと一緒に働けて良かったなと改めて思いました。大人が役割でなく、誠実に、正直に子どもに関わることが、人が成長する場づくりの一つの大きな要因になっていると思います。

兼村あゆハウスでの学びって、言いにくいことを伝えてみる、相手のことを受け止めてみる、ということかなという気がしています。寮生だけじゃなくて、大人も。どうしたらみんなが、その場所が心地良くなるかを伝え合う、受け取り合うという練習の場になっているのかな。

秋山2人は、寮生のやりたいことに対して、「導く」関わりではなく、「共に楽しむ」関わりでいますよね。

中村そう!例えば寮には「あゆファーム」という畑があり、毎日の食事に活用する野菜を育てています。ある寮生は、畑がやりたくて入寮してきたんですよね。私も畑作業が好きなので一緒に楽しんでいます。彼女や他の寮生の意欲関心から畑は拡大し、隣の敷地を借りて、「あゆひろば」という名前もつけて活動が広がっています。地域の人に教わって、鶏を飼ったり、鶏小屋やピザ窯を建てたり。今、彼女は、かまパン(※)にバジルを卸してるんです。タネから調べて取り寄せて植えて。肥料も工夫しています。

※神山校の近くにあるフードハブ・プロジェクトが運営する「かまパン&ストア」。神山校の生徒は、平日半額でパンを購入できます。

<地域の大人からサポートを受けながら作った鶏小屋の前で。迎えたばかりのニワトリと一緒に記念撮影。右の2人は鶏のポーズをとっています。>


<畑の一角にピザ窯を建設中。写真は石を積んで土台ができたところ。このうえに窯を制作予定。>

秋山寮生がやりたいことが芽生えた時、きっかけ作りをサポートするという役割もハウスマスターにありますか?

中村そうです。今回の場合、あゆひろばの土地はご近所さんから借りました。畑の土地をスムーズに借りられたのは、ハウスマスターとして、まささんが地域との関係を築いてきたことが大きいですね。鶏については、食育スタッフ(※)の1人も面白がって協力してくれて、色々な農家さんを繋いでもらい、飼育について学ばせてもらいました。ハウスマスターも、寮生の活動の伴走を楽しんで一緒にやっています。寮生は、そのうち彼らが自らの興味を見つけて自分で動けるようになっていく。寮生のやりたいことの伴走は仕事ではあるんだけど、必ず達成しなければならないことにしてしまったり、大人の思惑が大きくなると活動のプロセスは大きく変わってしまいます。メンバーの一人として楽しむことや寮生が主体であることを大切に関わっています。

※食育スタッフ:ハウスマスターとは別に、日々の食事づくりを中心に寮生をサポートをするスタッフ。

秋山地域との信頼関係は、どうつくってきましたか。

兼村地域との関係は一町民として、このまちで、あゆハウスで、「誠実に過ごす」ということができれば、自ずとついてくるんじゃないかなと。僕自身別に丁寧に生きれているとは全く思わないんですが、八方美人にならないこと、正直にいること、はずっと意識してきました。やらかしたときはすぐ謝りに行きます(笑) でもその失敗を乗り越えると以前より関係が深まったということが何度もありました。
寮生が色々なことにチャレンジして、でも失敗した時、もしまちの人に迷惑をかけてしまっても、あゆハウスのスタッフとして、謝ったら許してもらえる関係性が作れているといいなと思っています。近所の人と信頼関係を作っているから、寮生が何かしても地域の方から見守ってもらえるというか。
あと、移住者・地元の人と区別するわけではないんだけど、目立つ人ばかりではなく、周りで普通に暮らしている人に目を向けられる人になってほしいなという思いもあります。

秋山学校とはどのように連携をとっているのでしょうか?

兼村僕は今、社会人講師として環境デザインコース2年の授業に入っています。学校に出入りするようになったので、先生とも、「最近こういう状況なんですね」と話す時間が増えました。寮ができた当初よりも、神山校の先生たちとも距離はより近くなってきているし、お互い支え合えるような形が作れてきているんじゃないかなと思います。

秋山ハウスマスターの難しさは?

中村難しいのは、思春期の彼らの選択を、1人の人として尊重する一方で、大人として彼らを守らなきゃいけないところはある、というところ。例えば、多感な時期の彼らの「恋愛したい」という思いは尊重するけど、性のことはしっかりと伝えたいといった点も含まれます。あゆハウス3年目の途中から共育LAB.さんに関わってもらい、定期的に性教育のワークショップの場を設けています。私たちだけでなく、つなぐ公社、地域の方など様々な方に相談しながら考えています。

秋山高校生の自己決定を尊重しながら、思春期の心や体の揺らぎを受け止めること。大人としても誠実な対応が求められますね。ハウスマスターの仕事は、一言で言うとどんな仕事と言えますか。

中村日々のご飯や人との関わりを作るプロセスを通じて、高校生の暮らしを共に作っていくのが仕事。暮らしと仕事が分断され、働くことが中心のライフスタイルでは、日々の食事や人との関わりがなおざりになってしまいがち。。けれど、あゆハウスは、暮らしをつくること、互いに関わり合うことを真ん中においています。ハウスマスターという仕事を通して、私も寮のメンバーとして、暮らしを真ん中におく生活が送れることはとても幸せだなぁと感じています。ルールが細かく決められていて、調理を含めた食卓の時間を共にしない寮には、「暮らしを一緒に作る」と言う感覚は少ないかもしれない。でも、あゆハウスでは、ハウスマスターが寮生と「暮らしを一緒に作る」ことを通じて、お互いに成長する場が作られていくんです。

兼村「暮らしをつくることが仕事」、名言(笑)。あゆハウスは、「暮らしをつくる」という枠があることで、寮生と大人、寮生同士が、自然と関係性を作っていける場所になっているんじゃないかな。僕は6年間、あゆハウスを見てきましたが、相手の話を聞いて、自分の意見も伝えられる人が育っている。そうやって想像してみると、社会的に自分としても意義があることをしているなと感じられるし、だからこの仕事を続けられているのかなと思っています。

僕には、田んぼづくりの師匠がいます。師匠は、僕にとって「どこで何をしていようが、失敗しようが、僕のことを受け入れてくれる存在」。お互いの利益関係はないんだけど家族みたいに付き合える関係性。寮生にもそういう人を神山の3年間の生活の中で作って欲しいなと思うし、自分もそういう存在の一人になれるといいなと思ったりしています。


<インタビュー後も色々な思いが溢れてきます。「マサさんと一緒に働けて、ほんとよかったって思ってる」と伝える中村さん>

2人によると、ある時、「デンマークのフォルケホイスコーレに似ていますね」と言ってくださった視察者がいたとのこと。フォルケホイスコーレは、民主的な社会を築くプレーヤーを育てるために作られた国民学校。自分も相手も尊重し合う価値観が似ていると感じられたのかもしれませんね。

「暮らしを一緒に作る」は、あゆハウスのハウスマスターとして最も特徴的な役割ですが、他にも、様々な役割があります。寮の運営や食スタッフ、つなぐ公社メンバーとの連携、生徒が通う神山校との連携、そして町役場との交渉なども含まれてきます。それぞれの立場を尊重しながら、「つなプロ」実現という共通目標へつながり、力をまとめていく役割もまたハウスマスターとして求められています。

まちの未来を作る、ハウスマスターという仕事。興味を持たれたら、あなたも、是非、応募してみませんか?

参考URL
神山つなぐ公社とは?
城西高校神山校の寮「あゆハウス」(神山町役場HP)
あゆハウス通信Vol.22  暮らしを共にする「1対1」の人間として、見守り、関わる。  あゆハウスのスタッフ5人の思い。

あゆハウスの記事一覧:
https://www.in-kamiyama.jp/author/ayuhouse/
あゆハウスのインスタグラム:
https://www.instagram.com/ayuhouse1949/

募集職種 一般社団法人神山つなぐ公社 職員
あゆハウス専任スタッフ
雇用形態 正社員
給与・待遇 月給 205,200円(初年度)
・賞与 年2回支給(年度途中に雇用された人は、年度稼働する期間に応じて支給。業績により2ヶ月から2.5ヶ月分)
・各種手当(時間外手当最大30時間まで・宿直手当4400円/1日・パソコン購入)あり
※宿直は通常運営期間は月10回程度、長期休み期間で閉寮期間がある月は6回程度
・各種保険完備(健康保険、雇用保険等)
・交通費補助あり
・家賃補助あり(半額補助/上限25,000円まで)
・勤務中の食事代補助あり(夕食・朝食の半額分)
・有給休暇(年20日)、夏季休暇(5日)、年末年始休暇(12月29日から翌年の1月3日)
仕事内容 下記を、2名の常勤スタッフと神山つなぐ公社職員とで分担します。
 ・高校生が生活する寮での現場運営
 ・保護者/学校/役場との調整、情報共有
 ・寮イベントの企画運営、地域連携
 ・寮費の運用や施設の管理
 ・入寮募集
*現場でのシフト勤務(寮生および寮スタッフ対応)を週3日程度、そのほか業務を週2日程度想定しています。
勤務時間 週5日勤務(1日7時間45分)
※ シフト勤務:16:45-翌朝9:00 その他業務:フレックス
※ 宿直で日をまたぐ場合、週6日勤務になる可能性もあります。
勤務地 徳島県名西郡神山町
求める人物像 ・あゆハウスの運営方針および神山町の創生戦略「まちを将来世代につなぐプロジェクト」に共感できる方
・管理や指導といった関わり方ではなく、ともに暮らすメンバーとして寮生やスタッフに関心を持ち、対等に関わることができる方
・寮での関わりに加えて、まちとのつながりを意識して柔軟に取り組むことができる方
応募資格 ・2年以上の社会人経験
※社会人経験の有無については学生時代の経験によっては、その限りではありません。
(子ども、若者と関わる仕事やプロジェクトマネジメントの経験がある方歓迎)
・遅くとも2025年3月までに働き始められる方
・3年以上継続してハウスマスターの業務を行うことができる方
応募について こちらのフォームよりご応募ください。
ご記入いただいた内容をもとに書類選考を行い、オンライン面談・現地訪問を予定しています。
※応募期限:2024年10月31日まで
求人に関するお問い合わせ 一般社団法人神山つなぐ公社(担当:中村)
メール:ayuhouse@tsunagu-local.jp
電 話:088-603-8184
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神山つなぐ公社

神山つなぐ公社は、神山町の地方創生の一環で、2016年4月に設立された一般社団法人。「まちを将来世代につなぐプロジェクト」に取り組んでいます。

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