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ケヴィン・イェイツ

2011年神山アーティスト・イン・レジデンス 招聘作家
 

ケヴィン・イェイツ
カナダ・オンタリオ州出身。Ontario College of Art and Design、Nova Scotia College of Art and Design 卒業。University of Victoriaにて、美術課程修士号を取得。カナダ、アメリカの大学で講師を務め、現在はトロントのYorkUniversityにて美術教授を務めている。

映像作品を一時停止したような、もしくはスチール写真のようなミニチュア作品を制作。作品として表現される切り取られた時間、空間を可能な限り細部まで表現することに重きを置き、制作している。国内外で個展を開催し、多くのグループ展にも参加。Susan Hobbs Gallery(カナダ・トロント)所属。
(テキスト:2011年)

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■KAIR2011 作品

無題(鮎喰橋)
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当時、シングルファーザーになったばかりの私は、10歳の息子を連れて、神山にやってきた。ワクワクすると同時に、私たちにとって試練でもあったが、到着するなり、温かく出迎えられ、この地域にすんなり溶け込めそうな気がした。作家として、神山にきて、現地での体験をもとに、作品を制作するというだけでなく、最高の友でもある息子と一緒に散策しながら、息子の視線を通して、神山を体感した。川で泳いだり、ハイキングをしながら、面白い植物や動物、石をさがしてみたり、台風が来た時には、川辺に立ち、ついさっきまで、恐ろしいほどの勢いで流れていた川が元の穏やかなブルーに変わる様子を恐る恐る眺めたものだ。

来日するまでは、文字通り、地球の向こう側に旅することが、その当時私が取り組んでいた彫刻作品にどのような影響を及ぼし、いかに関係づけていくか考察したいと計画していた。しかし、来町後、息子が私のアトリエから川を渡った先にある小学校に通い始め、息子の送り向かえに神山に多数存在する橋の一つを日々渡っていると、もっと小さな次元での“向こう側”を意識し始めた。

神山には、おもしろいほど多くの橋があり、中には隣り合うように架けられていたり、原始的な厚板造りの橋のすぐ横に近代的な技術を駆使した橋があったりする。町の人はそれぞれ、意図された用途以外の理由で、お気に入りの橋があるらしい。私はこの町の橋にハマっていき、建築様式や技法の違いについて橋のことすべてを知りたくなった。そこで、色々なアングルから橋を撮影したり、細部の隅々まで測定しながら、橋を巡る散策を繰り返した。町役場で橋の設計図を手に入れ、ミニチュア版で橋を再現することにより、橋への理解を深めようと努めた。キメの細かさと機械加工や作業のしやすさから、ヒノキを使用した。制作に必要なミニチュア工具(テーブル丸ノコ、ルーター、旋盤、ボール盤、カンナなど)は日本滞在中に購入したものだが、これらを使うのは楽しく、テンションが上がる作業だった。  

そして時間をいとわず、作業を手伝ってくれた人たちがいたことを忘れられない。展覧会直前の仕上げの作業の時には、皆がそれぞれ、橋をひとつずつ手に持って、細心の注意を払いながら、小さい橋の手すり部分を付け加えていく様子をみて、胸が熱くなった。

個々の橋の模型をすべてつなげてひとつの連続したジグザグの橋にするというアイデアが浮かんだのは、神山での滞在が残り少ないと感じ始めたころだ。広重の「大はしあたけの夕立」を構造のヒントにし、鑑賞者と私の息子と私自身を暗に神山につなげる橋、始まりも終わりもない“行先のない”旅をイメージしてもらいたいとの思いを込めた。

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展覧会場/ 名西酒造酒蔵
素材  / ヒノキ、青石
神山に存在する28基の橋と防災無線4基のミニチュアモデル

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(ケヴィン・イェイツ / 2011)

作品画像 撮影:小西啓三
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→アーティストインタビュー ケヴィン・イェイツ(英語版)