KAIR/Bed&Studio
Kim Boske キム・ボスケさんインタビュー[後編]
アート2024年8月8日
現在、KAIR/Bed&Studioで滞在制作中のKim Boske キム・ボスケさんの今回のプロジェクトのインタビュー、後編です。→前編はこちら
2018年から継続的に神山で作品制作を行っているKim Boske(キム・ボスケ/オランダ)さんが、神山や徳島で制作した作品をまとめた作品集の製作をすすめています。ぜひ、神山の皆さんにも本の製作に参加してほしいとのことで、この夏、神山滞在中に石のプリントのワークショップを企画しました。参加してくださった皆さんどうもありがとうございました。ワークショップで制作されたプリントが、ヨーロッパを拠点に活動するキムさんの本や展覧会の一部となります。
インタビュー(前編)では、以下の質問をしました。
1. 本の製作の過程で、あなたの「石のプロジェクト」の構想はどのように膨らんでいったのですか?
2. この石のプロジェクトとあなたの他の作品群、鮎喰川シリーズや雨乞いの滝シリーズのような藍染の作品群との関係はどういったものになりますか?
ここから後編インタビューです!
3. このプロジェクトで藍ではなく墨を使う理由は何でしょうか?
これまでの作品作りでは藍を使いましたが、この石のプロジェクトでは墨を使います。なぜならそうすることによってはっきりとした明暗を表すことができ、石の細部や独特の風合いを際立たせることができるからです。墨による豊かで深い表現は、自然石の形を引き立たせて紙の作品をくっきりとした鮮やかなものにします。さらに言うなら、墨を使用することによって(藍とは)異なる表現が可能になり、このプロジェクトの思索的で黙想的な性格とよく調和します。
この石のプリントのプロジェクトは墨と石両方の歴史的文化的な意義をまとめあげます。鮎喰川の石で紙の作品を作るということは、芸術的で精神的なアイデアを表すのに自然素材を長い間使ってきた伝統と関わる事にもなります。石の独特の風合いと形は周囲の環境や地域の歴史との実体のある関わりをもたらします。
日本文化において墨は単なる画材ではなく、芸術的な表現や精神的な描写の象徴でもあります。墨を擦る過程は瞑想的で、精神の集中と潜在意識へと我々を導きます。この自然世界と黙想の関係は自然の要素を捉えようとする芸術の伝統と墨を密に結び付けます。石を集め、紙に表し、物語を共有する、という活動は参加者たちを自然素材だけで芸術を表現した古代の体験と結びつけます。墨はその深い歴史的背景とともに、現代のプロジェクトと何百年にも渡る日本の芸術と文化をつなぐ関係を豊かにします。本質的にこの石のプリントのプロジェクトは単なる芸術の制作にとどまりません。それどころか歴史、自然、地域社会を持続的な媒体である石と墨を通じてつなぎ合わせる事にまで至ります。この素材(自然)と意思(製作者)の相互作用は、日本文化の中で何世代にもわたって詩や歌に詠まれてきた、人類と自然世界の永遠の関係を反映しています。このような試みはまた、人間と自然の間に調和のある相互作用を育てる「 Symbiocene シンバイオシン」の原則とも合致します。
4 どういう経緯で神山でのあなたの作品を本にするという考えに至ったのですか?
本を作るという考えは、神山での経験とそこで制作した作品を記録し共有したいという私の欲求から生まれました。ある時自分の作品を見つめ直していたら、そこに足りない要素があることに気づいたのです。それは神山の人々の温かさと声です。神山はずっと私の経験とひらめきの大事な一要素であり続けているので私は本に取り入れる方法を模索しました。石のプロジェクトはそのための完ぺきな方法として頭に浮かんできたのです。このプロジェクトによって私は地域と協働できますし、神山の人々の気持ちを反映した、共同作業による作品作りが可能になります。神山の事を本に表し、一緒に作品を作ることを私は望んでいるのです。
これまでの神山での滞在を経て、私はゆっくりしたペースでの生活を理解できるようになりましたし、自分の作品や周囲の環境とより深い関係を築くことができるようになりました。私自身に起きたこうした変化は、地域の人々の貢献と共に私がこの本に取り入れたかったものです。本はHansGremmenのデザインによってFW-Books社から2025年の7月に発行される予定です。本の中には神山のエッセンスや地域の人々から頂いた気持ちや出来事も取り入れるつもりです。そうして神山の地域社会をこのプロジェクトに含む事によって、人間と自然の間に調和を生み出すという「Symbiocene シンバイオシン」の法則が含まれた共同作品を作ることを望んでいます。
Kim Boske
キム・ボスケの作品は、時間の経過によって起こる物理的変化がどう自分たちの視点に影響を与えるのかを、観察することである。
個々の観点、それらをいくつも重ね合わせひとつのイメージにすることで、さまざまな層が織りなす新たなリアリティーを生み出すのである。そこには何層にも入り組んだ複雑な世界が存在し、これは彼女にとって、そのもののあるべき姿であり、作品の要として表現される。
それゆえ、不自然さともいえる違和感を覚えるかもしれない。しかし、物語と景色の調和が損なわれることはない。作品の構築を通して、鑑賞者は写真に収められた多種多様な物質や景色の色調・形を感知し、ゆっくりとその本質を捉えることができるのだ。
Kim Boske【HP】
Kim Boske 英語のみ
これまでの滞在中の活動などについて(イン神山関連記事)
徳島新聞「和紙と藍染で抽象作品 徳島・神山滞在のオランダ人女性芸術家」(2024.7.27)
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