「石のプリントワークショップ(8月3日、5日、6日)」キム・ボスケさんにインタビュー [前編]

アート2024年7月24日

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投稿者:Art in kamiyama

8月3日、5日、6日に神山でワークショップをするキム・ボスケさんにもう少し詳しくプロジェクトや作品について尋ねてみました。

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1. 本の製作の過程で、あなたの「石のプロジェクト」の構想はどのように膨らんでいったのですか?

本の制作について考え始めた時、私は日本で作ったすべての作品、特に神山で作った作品をすべて見てもらいたいという気持ちでしたが、何かが足りないとも感じていました。神山で過ごす時にはいつも、地域で暮らす人々との深い関わりがありますし、その関りから感じる事もまた深いものです。ここへ来ると自分の家に帰ってきたように感じます。初めて下分のアーティスト用の住宅に泊まった時のことは今でも覚えています。朝起きると、果物と食べ物が盛られたカゴが玄関口にあったのです!心温まる嬉しい行為ですし、神山の人々の優しさと気遣いが沁みました。私が本に納めたいのはこのような地域の人々の感性と親しさなのです。
はじめ私は人々にインタビューをしようと考えましたが、そうしても私が彼らの優しさや気持ちを本の中で全て伝えきることができるとは思えませんでした。そのような思いに至った時、この石のプロジェクトが思い浮かびました。私の制作方法とも合いますし、前に制作した鮎喰川の作品群ともつながります。そのうえ、これは地域住民との協働作業になりますし、彼らと共に制作することで、周囲の環境を彼らがどう体験しているのかをより良く知ることができるようになります。
神山に滞在して制作する事はまた、私の時間と空間に対する感覚に大きな影響を及ぼし、人生のペースをより遅くすることができました。この遅いペースのおかげで自分の作品や周囲に対する見方も変わりました。物事の細部や、様々な要素の関連性に目が向くようになったのです。このものの見方の変化は私自身のアーティストとしての進化に不可欠なものであり、またこの本の制作に反映させたいものの一つです。加えて言うなら、私のプロジェクトは「 Symbiocene シンバイオシン」というコンセプトの影響下にあります。これは将来、人間が自然と調和して生きる事を提唱するコンセプトで私の作品作りに大きな影響を与えていて、自分の作品を通じて達成させたいと思っているコンセプトです。


2. この石のプロジェクトとあなたの他の作品群、鮎喰川シリーズや雨乞いの滝シリーズのような藍染の作品群との関係はどういったものになりますか?

この石のプロジェクトは鮎喰川シリーズや雨乞いの滝シリーズといった藍染の作品群と深く関わっています。全ての作品は自然の美しさと神山の独特な性質から生まれました。藍染の作品群にはこの場所の景観、時間、雰囲気そして歴史が反映されています。一方、石のプロジェクトは参加型のものなので直接地域を巻き込む事になります。いずれのプロジェクトも自然環境から着想を得て、神山ならではの要素を取り入れていますが、石のプロジェクトには人間的な要素も加わって、地域の人々と周辺環境の関係性がより強く表れます。
藍染の作品群も自然素材を利用しています。藍は四国の川沿いで栽培されていることが知られています。景観は具体的に作品作りに関連していて、自然環境は制作過程の欠かせない要素になっています。鮎喰川プロジェクトのような作品の制作にはとても時間がかかる工程が含まれています。なぜなら私はスクモから藍を建てる工程から関わるからです。藍を建てる工程はとても時間がかかるものです。この工程に時間がかかる事によって制作への関りがより深いものとなります。私は藍建ての桶のことを「ブルーベビー:青い赤ちゃん」と呼んでいます。なぜなら、藍建ての工程では子供の面倒を見るように注意深くその性質を理解しなければならないからです。慎重さを要し時間のかかる、この子育てにも共通する態度は、石のプロジェクトにも生かされ、自然との思慮深いゆっくりとした交流に繋がります。
作品作りの過程はわたしにとってとても重要です。作品の完成だけがすべてというわけではないのです。神山でのゆっくりとした生活のおかげで、自分の作品や自身を取り巻く環境とより深い関係を築く事ができました。そしてこの関係は藍染の作品と石のプロジェクト双方に反映されます。自然の各要素とそれら同士の関係性に焦点をあてることによって シンバイオシンの原則(自然と人間の間に調和のとれた関係を作り出す)を具現化する作品を作ろうと思っています。さらに言うなら、持続可能で丁寧な作品作りを心掛けている私にとって環境負荷の少ない和紙の使用もプロジェクトにとって重要な事です。


KAIR/Bed&Studio 2024  Kim Boske キム・ボスケさんインタビュー[後編]


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Kim Boske【HP】
Kim Boske 英語のみ
これまでの滞在中の活動などについて(イン神山関連記事)
徳島新聞「和紙と藍染で抽象作品 徳島・神山滞在のオランダ人女性芸術家」(2024.7.27)

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