「結い」 神山里帰り/3日目
なんでも2014年8月19日
「神山里帰り」ツアー、3日目のレポートです。
いよいよ最終日。最後のプログラムは、
【山で暮らすおじいちゃんに会いに行く!】
2日目に訪れた棚田から、鮎喰川の谷を挟んで、ちょうど正面に、大きな山が見えます。
写真中央の山の稜線のあたり、上分(かみぶん)地区の西ノ名(にしのみょう)にお住まいの西尾良市(にしおよしいち)さんを訪ねます。(西尾さんも『結い』にご参加くださっている地域の方の一人です)
林道を車で登っていきます。道中、杉林しかありません。まっすぐに伸びる杉の幹のあいだから覗く里の景色が、どんどん下へ遠ざかっていきます。
崖から落ちないようにハンドルをしっかり握り、曲がりくねった山道を登ること20分。山林のなかに、西尾さんのお宅が”忽然”と現れます。
かつては山の上のこの地区にも水田があり、人家があり、集落を形成していたそうですが、今では多くの方が山を降りて里に住まいを移し、残っている家はごくわずかです。
西尾さんも一度は街へ出て仕事をされていましたが、リタイアした後、この山の家に帰ってこられました。
上の写真に写っているお宅は、屋根や外壁を改修していますが、すでに築450年以上たっているそうです。代々、この地で先祖の方がつないできたバトン。今は、西尾さんの手にしっかり握られています。
そんな西尾さんは、現在、山の斜面に広がるご自宅の庭にさまざまな花木を植え、毎日手入れをしながら、山上の暮らしを楽しんでいらっしゃいます。
季節の移り変わりとともに、さまざまな花々が、かわるがわる咲き乱れ、町内でも知る人ぞ知る、桃源郷のような場所になっています。
到着と同時に、ぽつぽつ雨が落ちてきました。
本降りになる前に、さっそく、西尾さんの案内でお庭を散策させていただきました。
お庭といっても、規模が大きくて、ほとんど「山」そのものです。ご自宅の敷地内ですが、まさに「散策」です。
斜面に百本以上植わっているという桜の時期はすぎていましたが、若葉の淡い新緑とともに、五月の花々が咲き誇っていました。
花のトンネルをくぐりながら斜面をのぼります。
しばらく登って、振り返ると、すばらしい景色が広がっていました。
これがご自宅のお庭からの眺めだなんて、ちょっと信じられません。昨日訪れた江田集落の棚田も見えていました。
でも、西尾さんのお庭からの眺めは、これだけじゃないんです。
庭の桜を真上から眺めたい、そしてもっと遠くの景色まで見たい、と思った西尾さん。思い立ったが吉日とばかり、昨冬、斜面から杉を伐り出してきて、お一人でお庭に「櫓(やぐら)」を建ててしまったのです。
参加者のみなさん、アスレチック気分で、どんどん登っていきます。手作りしたとはとても思えない大きさです。
在冬くんも、西尾さんに後ろから支えてもらいながら、てっぺんまで登りました!
高所恐怖症の私は下からじっと見上げていました(汗)。なので、残念ながら、てっぺんからの写真がありません(涙)。
お庭といってもここは山の斜面。どこにいても、こんなに傾斜しています。
西尾さんは、毎日この傾斜を登ったり降りたりしながら、花木の世話をなさっているのです。山の方はみなさん、本当に足腰が丈夫です。
途中、ヨモギを使った止血方法を教えてくださいました。「暮らしの知」とも呼ぶべき西尾さんのこうしたお話に、みなさんとても熱心に耳を傾けていらっしゃいました。
丹精をこめて手入れされているお庭に、里帰りツアーのみなさんをご案内することをとても楽しみにしていた西尾さん。事前に、このルートがいいかな?花を見るならこちらのルートかな?と、実際に斜面を歩いて、順路を考えてくださっていました。
西尾さんのお陰で、甘い芳香を放つ季節の花々から、アクティブでダイナミックな櫓のアスレチックまで、短い時間のなかで、とても充実した体験をさせていただきました。
西尾さんのお宅に戻ると、奥さまが散らし寿司を作って待ってくださっていました。山を歩いてすこしお腹が空いてきていました。お昼までまだ時間がありましたが、お言葉に甘えて、古民家にお邪魔させていただき、お寿司をいただきました。
散策の最後に、斜面で育てているお茶の木から参加者のみなさんが若葉を摘んできてくださっていましたので、生茶にして、お寿司といっしょにいただきました。どちらもとっても美味しかったです。
お腹もふくらみ、生茶で身体も温まり、その後は、まったりとした雰囲気のなか、お昼が来るまで、昔話や子供の頃の山の思い出を西尾さんが気さくにお話ししてくださったり、縁側に出て、しっとりと雨にぬれる山の景色に感じいったり・・・、まるでここで暮らしているような、のんびりした時間を過ごさせていただきました。
雨模様のお天気を、はじめは残念に思っていましたが、静かに降る雨が、旅の興奮や疲れをそっと鎮めてくれたのか、かえって、しみじみと、山の暮らしを味わうことができました。
こうして、2泊3日の「神山里帰り」ツアーは静かに幕を閉じました。
駆け足での紹介でしたが、いかがでしたでしょうか?
人が人を慕い、慕われる喜び、
琴線にそっと触れるような
素朴な感動をもとめる気持ち・・・ 。
耳を澄ませばいつも静かに聴こえてくる心の声を
ゆっくりひろい集めるように暮らしたい。
(後略)
これは、昨年十月、『結い』の募集をさせていただいた際に、パンフレットの最後に書いたメッセージです。
当時は、まだなにも始まっておらず、メッセージを書きながらも、どこか半信半疑で、言葉だけがふわふわと宙に浮かんでいました。
でも、あれから数ヶ月。都会の、田舎の、それぞれの参加者の方々が、『結い』の趣旨にご賛同くださり、「おすそわけボックス」や「ゆいブック」を通じて、この新しい取り組みを育ててくださいました。
そして、そのエピローグでもあった「神山里帰り」ツアー。
お会いいただいたペアの方同士の間に、参加者のみなさんと集落の方々の間に、そればかりか、参加者のみなさんとスタッフの間、集落の方々とスタッフの間に・・・、メッセージに託したような、素朴な交歓が生まれていたように感じました。
このレポートが、その一端だけでも、お伝えできていれば幸いです。
参加者のみなさん、地域のみなさん、ボランティアでお手伝いくださったみなさん、スタッフのみんな、そして『結い』を応援してくださっているみなさまに、この場をおかりして、心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
そして、長い長い記事に、最後までお付き合いくださった読者のみなさまにも心より感謝申し上げます。ありがとうございます。
(追伸)
今回は残念ながら神山にお越しいただけなかった参加者のみなさん。特別ツアーとしての「神山里帰り」は終了いたしましたが、ペアのお相手のおじいちゃん・おばあちゃんに会いに、いつでも神山町にお越しくださいね。お待ちしています!
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コメント一覧
暮らしのなかのアートでございます。
2014年8月23日 23:07 | ニコライ
田中くんのおかげで、少々、時期を逸しても、 レポートが書けそうであります。 ありがとう。(笑)
2014年8月23日 23:09 | ニコライ
>ニコライさん す、すみません・・・。 三ヶ月遅れです(笑) 田中
2014年8月26日 23:50 | 結い