これからの城西高校神山校を考える~教育の魅力化による地域の活性化~【講演レポート】

学び2018年9月5日

投稿者:池田 流輝

こんにちは、つなぐ公社インターンの池田です!

神山で過ごして2週間ちょっと経ちました。
夕暮れ時の山の合間から陽の光が差し込んでくるのが好きで、
夕方はずっと外にいたいなと感じています。

また、先日町内バスツアーで岳人の森に行ってきました!
観月茶屋でお昼をいただいたのですが、すだち鶏天が本当においしかったです!
その駐車場から見える、向かいの山の立体感を感じられるような景色に出会えました。

 

先日役場で行われた藤岡慎二さんの講演の様子をお伝えします。
藤岡慎二さんは、面接や作文など大学独自の基準で評価される入試対策の事業をしていた方で、
大手教育関連企業の教材開発のアドバイザーとしても活躍されています。
現在は行政・自治体と協働し、教育を通じた地域活性化に取り組まれています。
藤岡さんの参画されていた島根県隠岐島前高校の事例は、
離島中山間・へき地の公立校が取り組む教育魅力化による地域活性化のモデルとして全国でも有名です。

島根県隠岐島前高校の取り組みなどのお話を聞きながら、
高校生が神山町の中で学ぶことの意義・価値を改めて考える2時間でした。

講演の内容は、藤岡さんが手がけていらっしゃる高校魅力化プロジェクトや
2020年度の入試改革に伴う高大接続改革などについてでした。

会場には、城西高校神山分校の先生方をはじめ、
神山町の教育関係者の方々、役場の方々など40人ほどの方々が集まっていました。


以下、講演会のレポートとして、高校魅力化プロジェクト、高大接続改革、学問カルタについてそれぞれ書いたのち、
講演を聞いて考えたことを記載します。

 

高校魅力化プロジェクトについて

前半の話の中心は高校魅力化プロジェクトについて。
高校魅力化プロジェクトとは、

「その地域・学校でなければ学べない独自カリキュラム、
 学力・進学保証をする公営塾の設置、教育寮を通じた全人教育の3本柱で、
 多くの生徒が行きたい、保護者が通わせたい、
 魅力ある高校にするプロジェクト(高校魅力化プロジェクトHPより)」

です。

北海道や島根県、沖縄県などいまや日本全国で実施されています。


その地域だからこそ学べる独自のカリキュラムを通して、
地域社会・地域経済の持続的発展に貢献できる人材を育成することや、
教育寮の中でリーダーシップやコミュニケーション能力、異文化理解など、
非認知能力を鍛えることを目指す取り組みだそうです。


講演の中で「高校の魅力化が移住定住政策の一環の側面を持つ」という内容がありましたが、
確かに高校の魅力化の取り組みは教育にとどまらないものなのだと感じました。

地域が社会の縮図として高校生の学びの場、高校生と地域の方々の接する場になること。
その高校の寮に入るために新たに地域に来る人たちがいること。
その地域で学び、地域外に進学していった人が、
進学先で知識を得てその地域に戻ってくる(かもしれない)こと。

教育に関わっている人や地域の人が協働して、
地域総がかりで取り組むからこそ起きる新たな変化もあるのではと感じました。
 

 

高大接続改革について

次に、高大接続改革。

これまでは高校と大学で求められる力が異なっていました。
高校生は、正しい答えを学んでいく力を求められ、
大学生は、物事を突き詰めて未知の領域を明らかにしていく力を求められます。
今の仕組みでは高校で学んだことが大学で使えないことがあります。


また、AIの出現などにより社会も変化してきています。
「2011年にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、
大学卒業時には今はない職業に就くだろう」とも言われているようです。
その社会に対応して生きていける子どもの育成が求められています。


高大接続改革とは、
高校と大学の学びに一貫性を持たせることで
子どもたちがこれからの社会で生きるうえで必要な学力を獲得することを目指すものだそうです。
2020年度から大学入試の制度が変更になります。

どう変わるかというと、


これからの学生として求められる、
 ①知識・技能、思考力
 ②判断力・表現力、主体性
 ③協働性・多様性、
という学力の3要素を評価する入試になる


とのこと。


藤岡さんが言うには、

 ・高校卒業の段階で、大学での学びのために必要な能力を身に付けているかを
  問われることになる
 ・高校在学中に、大学での学びに必要な能力を身に付けられるよう、
  高校の学びの在り方を変えていくことが求められる

という変化があるそうです。


高校で学力の3要素をどうやって身に付ければよいのだろうという疑問も出てきますが、
神山分校の場合、農業高校だからこそ実現できる取り組みが②判断力・表現力、主体性
③協働性・多様性といった力の育成に効果的なのではとのことでした。
農業を軸としたアクティブラーニングを行うことで
日々の学びを言語化し、自身の成長に結びつけたりすることが可能なのではというお話もあり、
来年度以降の神山校のカリキュラムにも影響を与えそうなお話でした。


AO入試で地域貢献人材を募集する大学があったり、
地方創生系の学部が続々と設立されていたりすることもあり、
地方で魅力化に取り組んでいる高校が
2020年度の大学入試改革の際に人気校になる可能性がある、
と藤岡さんもおっしゃっていました。

講演を聞いて考えたことを数人で話し合う時間をとったあと、質問の時間がとられました。


少人数で講演を聞いて思ったことを話し合いました

質疑の時間では、
子どもたちが経験して感じたことを言葉にする力を身に付けられるかどうかは
家庭の教育力・経済力に反映される部分が大きいので、格差を助長するのではないか、という話が出てきました。
それに対して藤岡さんがおっしゃっていたのは、「地域で子どもを育てる」ということ。

子どもの育ちを家庭の中だけで支えるのではなく、
その地域にいる大人たち・コミュニティ全体が子どもの育ちを支えるようになることで、
個々人の家庭だけに委ねることなく、子どもの考えの言語化をサポートしていけるのではないか、と期待を込めていらっしゃいました。

 

学問カルタ

質疑の時間の後は、「学問カルタ」の時間。今回の講演で特に会場が盛り上がりました。
学問カルタとは、ある問いや研究課題と、その問いを扱う学問分野は何かを組み合わせていくものです。

学問カルタの風景

これもただのゲームではなく、
「子どもたちの主体的な学びを進路に結び付けるためには、
 大人が各学問の持つ問いの違いを理解していることが重要」
というメッセージがありました。

経済学と経営学の違いなど、聞かれても答えられないところもありました…!

実は時間が押してしまっていたのですが、
藤岡さんは最後に参加者がフィードバックシートを記入している時間にも話をしてくださいました。
内容は藤岡さんが北陸大学で実践・研究されていることでした。
質疑の時間に疑問として挙がっていた言語化能力の身に付け方についても紹介がありました。

そもそも学生が地域へ出る前に基礎的な知識や考え方を身に付けていなければ、
実際に現場へ行っても問題発見したり課題解決に取り組もうとしてもできない、
というお話がありました。
学生たちは、それまでの経験を振り返り、
そこから得た学びを意識して行動することによって、今までうまくいったことを再現したり、
うまくいかなかったことを回避できるようになっていくと藤岡さんはおっしゃっていました。
藤岡さんがその再現力を育成するために大事にされているのが言語化能力で、
経験から得た学びを言葉にできなければ現場で再現できないとおっしゃっていました。
藤岡さんの取り組みでは、学生たちは言語化能力を鍛えるために経験の振り返りの発表をしていて、
10分間の発表用原稿作りを通じて言語化能力を鍛えているそうです。

今回の講演会は、来年度からの神山校の授業内容のみならず、
小中学校や地域全体の関わりの中で、
地域で子どもを育てていくこととはどういうことなのかを考えるきっかけになるような会だったと感じました。

 


講演を聞いて考えたこと

講演を聞く中で私自身が思ったのは、
来年度以降の城西高校神山校の在り方を考えるうえで、
大人の意識をそろえることが難しそう、ということでした。

立場が異なれば、大切にしたいことや考え方も変わってくると思います。

それぞれの立場の人たちが全く同じことを考えるわけではないですが、
神山に暮らす人は、地域で一緒に学んだ神山校の子どもたちと地域を支えていきたい、
高校生の親御さんたちは、子どもをより良い進路に送り出したい、
学校の先生は、子ども自身に主体的な学びを届けたい、
など様々な考えがあると思います。

今後も地域全体で神山校を作っていくために話し合いを重ね、
全員が神山校の在り方に納得して関わっていけるといいと思いました。


神山校がどんな学びの生まれる場になっていくのだろうと楽しみになるような2時間でした。
 

池田 流輝

神山つなぐ公社・ひとづくり部門の学生インターンです。静岡出身。神山で自炊できるようになりたい!

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