まもなく鮎喰川コモンの母屋が竣工します
なんでも2020年6月30日
本記事はイン神山内の「ほぼ月報」という枠組みの中で執筆しました。2019年〜2021年までは神山つなぐ公社が「まちの様々なプロジェクトのいま」を、2022年以降は神山つなぐ公社とグリーンバレーで「神山に関わるみなさんと共有したいまちのできごと」をお伝えしています。
集合住宅につながる川沿いの緑地は「鮎喰川コモン」と呼ばれていて、その母屋がまもなく竣工する。設計した吉田さんの案内で、工事中の現場を見学しました。
軒下は来週に「三和土(たたき)」の工事を予定。周りは芝生になる。屋内で腰を下ろすと、幅広の窓から、三方向の景色が見渡せて気持ちいい。いま自分がどんな場所にいるのかよくわかる。窓が柱で分断されないように構造の設計を頑張ったんだな、と思いながら、吉田さんのあとをついてゆく。
屋根下の登り梁と柱をつなぐ斜めの構造材に、丸太が使われている。丸太は昔は足場材にも使われる安い材だったが、いまは四角く挽かれる材が主流で安くはない。でも他のところでコストを抑えた分、頑張ってみたと言う。「ひとの目線や身体に近い部位だから」(吉田)。
構造の特徴を示すこの部位は確かに目にとまりやすい。見比べるとわかるけど、角材は陰影がはっきりするので暗い面が占める面積も大きくなる。丸材だと、光がグラデーションで回り込んでくるので、空間の印象が地味に大きく変わる。
建物の背骨、棟木まわりの構造も面白かった。できるだけ柱が少なくて自由に使える空間をつくるために、色々考えたんだな。ボルトの丸穴をふさいでいる木の栓が、うっすら表に膨らんでいるあたり、粋だなあと思う(マニアックな視点)。
川側の軒下。少し奥に入り口がある。
入り口のまわりはガラス屋根をかけたトップライトで明るい。逆側にトイレや授乳室が並んでいるのだけど、そこにも幅狭のトップライトがあり自然光が気持ちよかった。小さいけど窮屈に感じない、心地いい場所になりそう。
ハウスメーカーの住宅を筆頭に、現代の建物の多くは、木造でもその構造を見せない。大壁で仕上げられていて、柱がどこにあるかわからないし、天井裏がどうなっているのかもわからない。でも、目に見える構造はそれ自体が教育資源だ。
この建物では隣接する集合住宅と同じく、大工さんの手仕事がよく見える。贅を尽くした高級物件ではないが、経験の浅い日雇いの人でも建てられるプレファブリックな建物でなく、腕のある職人さんが、自分の仕事を喜びながら、誇らしい気持ちで建て終えてゆける質を備えた仕事の塊になっていて嬉しい。
子どもを中心にいろんな人がすごす場として準備されているけど、そこで働くスタッフと別にこの建物自体が、人格をそなえたもう一名のスタッフとして、子どもたちと対話を交わしてくれるんじゃないかな。「こんなふうに屋根を支えているんだよ」「建物はこんなふうに出来ているんだよ」「ぶつかっても怪我しないように、面をとってあるよ」とか。
採光と換気と屋根裏の小部屋を抱える、重ね屋根の壁面。設計図では水平の横板張りを書いたが、大工さんから「こうする方がいい」と、少しづつ角度をずらしながら張ってゆく提案をもらったそうだ。
「扇(おうぎ)という手法だそうです」と吉田さん。
竣工前の見学の機会は、来週のあと2回で終わり。要申込。
7/10(金)14:30~15:30
7/11(土)9:30~10:30[最終回]
>鮎喰川コモン|現場見学ツアー再開します。
隣接する「大埜地住宅」メインの見学会はその翌週。こちらはオンライン見学もあり。要申込。どちらもどうぞ。
7/17(金) 9:00~/10:30~
7/18(土) 9:00~/10:30~
7/19(日) 9:00~/10:30~/13:00~/14:30~
>大埜地の集合住宅|ぐるっと見学会
西村 佳哲
にしむら よしあき/1964年 東京生まれ。リビングワールド代表。働き方研究家。武蔵野美術大学卒。つくる・書く・教える、大きく3つの領域で働く。元神山つなぐ公社 理事(2016〜21)。著書に『自分の仕事をつくる』(晶文社/ちくま文庫)、『ひとの居場所をつくる』(ちくま文庫)など。
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