「大埜地の集合住宅」の横の川沿いに建設中の「鮎喰川コモン」は、子育てや、子どもたちの放課後、読書を軸に、多様な人のかかわりが生まれることを期待する施設。11月から運用が始まります。その準備の中で、いまどんな時間が展開しているのか。オープン前で忙しそうな担当者・遠藤さんに聞いてみました。
 

遠藤 9月中頃からスタッフ研修が本格化しています。もう、10回近くやっている。

── 集まった人たちは。

遠藤 スタッフ募集(初夏)には、お問い合わせも含めると10名ほどの反応があって。その中から5名。

うち2人が神山で生まれ育った女性で、一時期離れていたけどここ2〜3年で戻ってきた方々。あと、最近移り住んできた女性が2人と、もう7年ほど暮らしている男性が1人。ものすごくポジティブな集まりで。

── 前向きなところがある?

遠藤 例えば〝コモンでこれから取り組めるといいこと〟を、実現性はちょっと横に置いて、互いに出し合ってみるミーティングを一度持ったんです。するとどんどんアイデアが出てくる。

まずその時点で「すごいな」って思うんですが、「たくさん出たから仕分けしてみよう」という話になり、実現のしやすさ(出来る/出来ない)とか、人の来やすさとか、軸を引いてマッピングしてみたんですよ。

でもほぼ「出来ない」のがなくて、仕分けにならなかった。(笑)

── (笑)

遠藤 あと例えば、お母さんが3人いるので、子育て支援関連の備品選びの相談をすると。

── どんなものについて?

遠藤 例えば毛布とか、ベビーサークルとか、いろいろあるんですけど、次の日にその全員から「私はこれがいいと思いました」って、具体的な商品情報が届くんです。URL付きで。

この仕事について受け身でない。「環境は用意してください」「そこで働きますよ」という感じがまったくなくて、面白いなあって。この人たちはなんでこんなに前向きなんだろう?と感じることが多い。

例えばミーティングの初めにチェックイン(全員がその日のコンディションや他愛のないことを少し話してから本題に入るスタイル。つなぐ公社ではよく行われる)を提案してみると、その日のうちに「あれ、よかった!」という反応が届く。そんな人たち。

── 打てば響く。意外でした?

遠藤 というか、そんなエネルギーを持つ5人が集まっているのが嬉しい。マイナスな発言をする人がいないし、互いに雰囲気をつくり出していて。物事を〝受け取る〟力もすごいんですよね。

── 研修はどんな内容なんですか?

遠藤 講座というより、イメージを共有する作業を重ねているんです。

例えば、神山で読書の場を育ててきた「ほんのひろば」のメンバーから、彼女たちの話を聞き。「すきっぷ」(徳島市内の子育て支援拠点)の松崎さんを招いて、詳しい話を聞き。企画段階からつながりのある「芝の家」(東京・港区。多年代の地域の居場所づくりプロジェクト)の加藤さんとオンラインでつなぎ。鮎喰川コモンの建築設計者の話を聞き。



で、お話を聞いてから、みんなで感想を語り合っている。そこで一人ひとりの口から出てくる言葉が、すごく「受け取っているなー!」と感じるものばかりなんですよね。メンバー同士も「そうそう!」ってなったり、互いに同じようなことを考えていることがわかったり。

人の想いをちゃんと受け取る力があって。で、「自分はこうしたい」と伝え合っている。そんな力、特徴のある人たちだなあと思っているんです。

── 「面白いなあ」の詳細はそういうこと。

遠藤 もっと話し合いたいなあと思っていて。あらかじめ用意された答えや正解のないことについて、もっと話をしたい。無駄話も含めて。

── そう思える人たちと働けるのは楽しそう。

遠藤 そうですね。楽しく出来るようにやっていきたい。「鮎喰川コモン」は新しい施設だし、いろんな言葉が投げかけられます。「こういうことをするといい」「してください」とか。

で、大人たちだけでなく、子どもたちの言葉や想いも受け取りながら、みんなが居心地のいい場所をつくってゆこうとしている。なのにスタッフはただ必死で働いている、ような状況になってしまってはいけないと思う。

いまはみんな、「ぜんぜんいけますよー」「こうしようよー」という感じです。私が必死(汗)なだけで!(笑)

 

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雛形|鮎喰川沿いに「謎の未分化の建物」を設計するひと 吉田涼子さんインタビュー
https://www.hinagata-mag.com/column/39638

神山町役場|鮎喰川コモン(少し古い情報です)
https://www.town.kamiyama.lg.jp/co-housing/region.html