この月報の４月号で書いた「神山のオンラインショップの話」。町を訪れる人がコロナ禍でいなくなり、あらたな販路開発を…と始めた試みの半年後の現在を、手掛けてきた若手、西海千尋さんに聞いてみた。

　
西海　「自分に何ができるのかな？」って。お店で働いた経験はあるけど、オンラインショップを立ち上げたことはなかったし。

でもコロナが広がり始めた春先。例えば「手でつくる教室」*2 のメンバーと話していると、彼らの不安をいろいろ感じて。やったことがなくても、役に立てることはあるんじゃないかと。何かしないといられなかったというか。

── それで約半年やって、どうでした？

西海　最初は、町内のつくり手や事業者さんの「オンラインショップの一覧ページ」*1 をつくり、それを面白いものに育ててゆくイメージを持っていました。〝打ち出し〟を手伝うことで機能出来るんじゃないかって。

でも、始めてみるとそこはあまり求められていない感じだった。実際「イン神山」まで来た人にしか届かないわけです。

── 日々大量のアクセス数を誇るサイトではないしね。

西海　ですよね。そこからみんなが「助かる！」状況にはなりにくい。紹介記事を書いてゆこうと思っていたけど、感染拡大にどう気をつければいいのかもまだあまりわからなくて。町内とはいえ、取材訪問を躊躇してしまう感じもあり。

そんな中、「一覧ページの運用より〝新規オンラインショップの立ち上げサポート〟に注力するとどうだろう？」という切り口が出てきて。

── 最初はどう思いました？

西海　「いいんだろうか？」「個別支援になってしまうし」って。

でも何組かヒアリングをするなかで、「手でつくる教室」をご一緒してきた植田千寿美さん（フラワーアレンジメントの仕事をなさっている人）から、彼女が暮らす集落で、移り住んで来た仲間と７年ほど重ねてきた「エタノホ」という農作業の活動体が、収穫物の売り先を開拓して行きたいねと話している…と聞かせてもらう機会があって。

それで、まずは「エタノホ」のオンラインショップづくりに、かかわってゆくことになったんです。

── 彼ら自身がつくりたいと考えていた。

西海　話自体はこれまでも毎年出ていたそうです。とくにここ１〜２年は「やらないと」って。

でも中心メンバーの３人にはそれぞれの仕事もあり。「エタノホ」は現状、仕事というより仲間内の活動という感じでもあったから、なかなか先へ進めずにいたみたい。そこに私が一緒に働いている作田さんが「貸し出し西海」という言葉を投じて（笑）。

── 人を（笑）。

西海　貸し出すものとして有効かわからなかったし、特定の人たちの個人的な事情の中に入ってゆくことにもなるので「大丈夫かな？」という不安がありました。「でもまあ、やってみるしかない！」と、貸し出されてみて。

６月から計11回のミーティングを経て、「エタノホ」は10月15日にオンラインショップを開きました。とても嬉しい！
　

https://etanoho.stores.jp

私がみんなに代わってつくったわけではなくて、３人がそれぞれの持ち味を活かしてつくっている。〆切も決め、お盆明けくらいからは毎週水曜日に集まり、コンスタントに取り組んできました。

── 西海さんはそこで、具体的には何をしてきたんだろう？

西海　「オープン後もみずから運用してゆけるように」という方針を、最初に共有しました。私自身はデザインを提案しないし、文章も書かない。でも問いは挟みます。「何を届けたかったんでしたっけ？」とか「この表現だと、読む人はどんなふうに感じるかな？」とか。彼らが伝えたいことを、一緒に見つけてゆくというか。

── 伴走的。

西海　はい。もし開設してみたい人がいたら、一度ご相談いただければ。

── 自分の仕事は、肩書きで言うとどうなります？

西海　えーーっ！（困）……こう言っていいかな、と浮かぶのは…「壁打ち」。

── 打つのはショップを立ち上げる側ですよね？ だと「壁」？

西海　違いますよね（笑）、そびえ立つ頑強なものではないし。（キャッチボール？）いや、子どもとお父さんみたいな関係ではないし。「下手なキャッチボールの相手」？ わからない！（隣人？）いや、それはおこがましいです。「おせっかいおばさん」！

── 若いのに（笑）。