アレックス・カーの桃源郷

なんでも2009年3月17日

投稿者:早渕

8日の森づくりの参加を諦め、高知まで講演を聴きに行きました。(いい加減また森づくり行きたいなー・・)その途中、以前からどうしても一度見てみたかった場所に立ち寄りました。

東祖谷の山奥にある「ちいおり」という場所です。古い茅葺き(かやぶき)の民家を再生して宿泊もできるようにした場所です。この古民家を再生させたのは、東洋文化研究家として著名なアレックス・カー氏。現在はバンコクに居られるそうですが、世界を舞台に多彩な活動をされています。

車を止め、小さな道を下っていくと、茅葺きの家があります。

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ちいおりに着くと、海外の方が一人、本を読みながら囲炉裏に薪をくべて、到着を待っていてくれました。禅寺の修行僧のような何とも言えないやさしい雰囲気の方です。ここを管理されているポールさんは、元々京都で英語の講師をされていたそう。京都でアレックスさんと知り合い、現在は祖谷に移住してここのハウスマネージャーをされているそうです。

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明るい屋外から一歩中に入って、その雰囲気に驚きました。

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アレックス・カーは若い頃に祖谷を訪れ、この場所に桃源郷を見たのだとか。といっても、それから30年以上経ち、残念ながら当時の風景は過疎化や乱発する公共工事などでことごとく失われてしまったそうです。00002611.jpg

彼は、初めて日本家屋に足を踏み入れたときの事を「周りの廊下だけは明るく、中の座敷は真っ暗。それは神秘的で自分が生まれてくる前の遠い遠い昔に戻ったような感じがした。」と書いていましたが、まさに。

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ずいぶん前の新聞記事で彼が、古民家を再生させる事について「ロマンがないとダメ」と言った意味がよくわかりました。中に入ると静かと言うより静けさが漂っている感じ。

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しかし、自分も木造で典型的な日本の様式の家に住んでいるのに、どうしてこういった事を感じないのか。今の生活は形だけは日本式でも実際は本来の生活様式からかけ離れてしまっているんだと感じました。何でもない日常に感動出来るというのはとても豊か。

台所も物が少なくいい雰囲気です。

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囲炉裏を使っていると燻されて茅葺きが真っ黒。屋根も迫力があります。

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しばらくすると、ポールさんがお茶を入れてくれました。囲炉裏を囲んで話をしました。「四国村という場所知ってますか?」と聞かれ、はて?と考えていると、そこに保存されている茅葺きの民家の話に。茅葺きの民家は徳島、高知、愛媛、香川など同じ四国でも微妙にその様式が違うのだとか。勉強不足でした・・。

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 そろそろ失礼しようとした時、近所のおじさんが花を摘んできてくれました。照明の横に花を飾ると外でおじさんとポールさんとの一服が始まりました。

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この風景の中での一服は何とも贅沢です。

ポールさんありがとうございました。

帰り、よく見ると茅葺き屋根がずいぶん傷んでいるなと思いました。実は2010年に屋根の葺き替えと痛んでいる箇所の修復を予定しているそうです。茅(かや)は6尺(約180cm)の縄で束ねた物を1束と考え、この家一軒の屋根を葺き替えようとすると、その1束が約1400束(!)必要になるそうです。途方もない作業ですが、一度替えれば何十年と持つのでそれほど大きな投資ではない、とはアレックスさんの言葉。それらもNPOで運営されているそうです。こちらのNPOも面白い活動をされています。

見学されたい方は「ちいおりトラスト」までご連絡をとの事。

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実は最初目印に気づかず通り過ぎ、長い時間山をさまよってしまいました・・。

目印は右手に現れる小さな看板。見逃すと、えらい事になります。

早渕

足繁く神山に通う神山ファン。作品制作やアートプロジェクトなどで活動中。

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コメント一覧

  • 一度訪れていたいと思っていました、チイオリ。 素敵な雰囲気ですね。 ますます行きたくなりました。 確かに、場所によって、(古)民家の形は微妙に違いますね。 同じ徳島でも、海系と山系は違うし、同じ神山でも、川系と谷系など、微妙に違いますね。 表の間、はたの間、奥の間、茶の間、母屋(おもや)、納屋と、それぞれの部屋や屋敷に呼び方がついていて大好きです、古民家。 皆が木の温かさのある古民家の良さに気づいてくれたなら、安っぽい建築(お金をかけたかどうかというよりも、天然素材のものかどうか)には惹かれなくなるでしょう。 それと、一脚(いっきゃく)も大好きです。 花火したり、お花見をしたり、寝っころがって星空を見上げながら流星を待ち焦がれたり。 木製だから肌触りもいいし、移動も簡単。 縁側のかわりになるしね。 一脚は神山の独特のものなのか、他では見たことないのですが。 

    2009年3月17日 11:00 | サスケ

  • 確かに、一脚はあまり見なくなりましたね。上板町でもおじいさんが使っていて、子どもの頃自分も大好きでした。そういえば移動式の縁側になっていましたね。なるほど。。 今はアルミやプラスチックなど一見便利に思う建材が目立ちますが、それらと比べても天然の素材は同じ位かそれ以上長持ちするそうです。 当時住んでいた人は管理の大変さに家を出てしまったようですが、かと言って今のように全てを便利だけでかえてしまうのはちょっと残念です。今の物と昔の物とがいい所で折り合えればいいのですが。

    2009年3月17日 17:14 | 早渕

  • 『美しき日本の残像』を読んでから、訪れてみたいと思っていたのですが、そういえば神山からそう遠くはないところにあるんですね。すっかり忘れていました。思い出させてくれてありがとうございます^^ 次回神山に行くときに併せて訪問してみたいとおもいます。

    2009年3月17日 22:18 | ソガケンタ

  • 一脚(いっきゃく)は、良かったです。 花火、星空、かき氷、うちわ。 夏の夕暮れ、 夜 。 良い時間が過ごせた・・・という思い出が残っています。

    2009年3月17日 22:25 | ニコライ

  • ボクも行った事がない・・・。早渕君の行動力には脱帽です! 曽我さん、神山からは車で2.5時間はかかるんとちゃうかなぁ。

    2009年3月17日 22:56 | 大南 信也

  • 三脚は脚三つ。でも脚が四つあるのに、どうして一脚なんでしょう・・・(?)

    2009年3月17日 23:01 | 大南 信也

  • 曽我さん アレックスさんの本、面白いですね。タッチの差で本人には会えなかったのですが、静かでいい場所でした。また神山に来られた時に。 ニコライさん やっぱり、一脚の話は「思い出」になってしまいすね。今の若い人もどんどん使うべきだと思います。 大南さん 学生の特権かもしれません。「金はないけど時間はある」(笑) でも、神山に通いだしてからずいぶん自分も目が肥えた気がします。

    2009年3月18日 00:01 | 早渕

  • 神山の自宅に一脚が今、2台あります。 3脚めを作成するプロジェクトを検討中です。  今度、その一脚を文字どおり、舞台にして (その上に座り一席)、ご近所を招いて、落語寄席をやります。 阿波の落語話、「田能久」です。 一脚が高座の代わりにもなるということで。  田舎に育ったおかげで、天然のいいものにたくさん触れて育つことができました。 同じくらいの年でも町(都会)育ちの人は、土の運動場すらなかったといい、「ジェラシーを感じるわ」と羨ましがられます。 

    2009年3月18日 10:03 | サスケ

  • あらら、2時間半ですか。けっこう離れてますね~ どうもボケているようで...^^; 次回は、高松空港→チイオリ→神山というルートでチャレンジしてみようかな。 しずかな空間でゆっくり瞑想でもしてきます。(hopefully not 迷走...)

    2009年3月19日 13:28 | ソガケンタ

  • 国道439号を通っていくのですが、 距離がめっちゃ遠いというのではなくて 道がくねくね曲がっていて狭い! (なにせ)別名「酷道ヨサク」・・・(笑)

    2009年3月19日 16:30 | 大南 信也

  • ソガケンタ様へ。 高松は、屋島(源平の古戦場)の山麓に「四国村」というのがあって、「古い民家」を四国の各地から数軒 移築しているのがあります。 その中に私の先祖の家「旧河野家住宅」というのがあり、愛媛県から移築しています。(じ・・じ・・冗談です。)(笑) 四国村の中には、彫刻家「流政之」氏の作品もあり、良いと思います。(余談ですが、私、徳島市役所の中庭においてある、彼の「黒みかげ石の作品」、好きなのです。) 四国村での昼食は、やっぱりうどんの「わら家」でしょう。 四国村の散策は2~3時間はかかります。 このあと、 「栗林公園」の散策や、「高松港」東へ500mにある「北浜アリーナ」のイタリアンレストランでの食事も良いと思います。 (デートコースに良いかな・・・・。) これらは「インターネット」で検索すれば、即(そく)出て来ます。「高松」と「ちいおり」と「神山」を、まとめて制覇しようとすれば、24時間、寝なければOKです。

    2009年3月19日 23:31 | ニコライ

  • ニコライ先生 四国村の重要文化財からデートコースまで幅広く紹介いただきありがとうございます^^ 睡眠不足がたっぷり必要な僕には眠らずの24時間強行コースはちょいときついですが、まだ神山だってじっくり見れていないのに、いってみたいところがどんどん増えてこまっちゃいますね^^;

    2009年3月20日 01:50 | ソガケンタ

  • ソガ先生。 「高松」のコースは、私の「いにしえ」のデートコースを書いただけ・・・・。(笑) ノー・プロブレムですよ。

    2009年3月21日 00:45 | ニコライ

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