【KAIR2016】水谷一、Thu Kim Vu

アート2016年10月23日

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投稿者:Art in kamiyama

 

現在開催中の神山アーティスト・イン・レジデンス2016の展覧会で、これまでの招聘アーティストの作品も同時展示しています。
劇場寄井座には2009年招聘アーティスト水谷一、 名西酒造酒蔵には2012年招聘アーティスト、ベトナム出身のThu Kim Vuの作品が展示されています。

水谷一「事象」 劇場寄井座

2009年の展示では自然光のみでご覧いただいていました。その後の劇場内外の状況の変化により、今回は照明を使用しての展示となっています。当時はまだ縁側オフィスはなく舞台奥の窓からは隣の家の植木が見えておりました。
会場内には作品と共に作品制作中にアーティスト本人の綴ったテキストも置いてあります。どうぞ一緒にご鑑賞ください。

水谷一「事象」2009 撮影:小西啓三        (©KAIR  転載禁止)

水谷一

表現すること、表現されること、表現されないこと、表現されたもの、表現する人について思考する。2016年までに神山AIRを含む国内外11のアーティスト・イン・レジデンスに参加。近年の展覧会に「引込線2015」(旧所沢市立第2学校給食センター、埼玉県、2015年)、「憲法を書き展示する会」(gallery&space弥平、神奈川県、2015年)、「反戦 ‒来るべき戦争に抗うために」(SNOW Contemporary、東京都、2014年)、「瀬戸内国際芸術祭」(旧三豊市立粟島中学校、香川県、2013年)等。1976年三重県生まれ。2003年多摩美術大学大学院修了。

長野県・信濃大町にて2016年11月11日〜20日「あさひAIR 第二回滞在アーティスト成果発表展」を予定

http://shinano-omachi.jp/asahi-air/

 

Thu Kim Vu ツー・キム・ヴー
Miniture space ミニチュアスペース

2012年の展覧会の際は粟カフェの2Fギャラリーと劇場寄井座の2会場での展示でしたが、今回は粟カフェで展示していた「Miniture space」という作品を名西酒造酒蔵にて展示しています。以前にご覧になったことのある方も前回の展示とは一味違う雰囲気での作品をご覧いただけると思います。

Miniture space 2012 Thu Kim Vu  撮影 小西啓三    (©KAIR  転載禁止)

ベトナム、ハノイで生まれ育つ。2003年にシカゴ美術館附属美術大学(SAIC)にて、美術修士課程修了。
ライスペーパー上に、頭で考えず落書き調に白黒のインクでドローイングすることから生まれる作品に興味がある。書道や伝統絵画で用いられる伝統的な素材のしなやかさや、さまざまな空間で折り曲げできる軽さを利用し、平面から立体へと展開させる。
近年は旅が作品の主なインスピレーション源となっており、現在は地図に焦点をおいたプロジェクトに取り組んでいる。地図は反復したさまざまな形や断片、建築空間からなり、記憶や観察を基に、訪れた町や施設をナビゲートする。地図のレイアウト上には、緻密に描かれた線の間に構造物や方位が表現されており、町並みや車の往来、そこに住む人や建造物をイメージさせる。
現在はトロイ大学やベトナム国立大学のハノイ校で、非常勤講師としてビジュアルアートを教えている。

(以下のテキストはKAIR2012の時の展覧会テキストです。当時、粟カフェにて展示した「ミニチュア スペース」という作品を今回は名西酒造酒蔵にて展示させていただきました。)

日本に来る前の当初の計画では、和紙と墨を使い、ローカルエリアの地図を反映したドローイングを神山で制作したいと考えていました。実際に神山に来て生活するうちに、私の空間への興味は地図というコンセプトから、ふたつの空間との関係へと発展していきました。この地域の周辺環境と私の関係を反映しているように、山々に囲まれた自然風景の中では、自分自身が小さく感じるのに対し、畳のある和風の家の中では自分が大きく感じます。このような関係性に着目し、こぢんまりとした家庭的な雰囲気の粟カフェと、自然の中で踊っているような気持ちにさせる、より広々とした寄井座を展示スペースに選びました。

Miniture space ミニチュア スペース

展示場所:粟カフェ(2012)、名西酒造酒蔵(2016)
形式:インスタレーション
材料:和紙(雁皮)、墨、アクリル板、杉、ランバーウッド、LEDライト

粟カフェの作品シリーズは、和紙、特に雁皮を使って、自然風景を表現した作品とインテリア空間をイメージしたミニチュアボックスからなります。箱の作品は障子のある和風の家のインテリアや徳島の人形浄瑠璃の舞台からインスピレーションを得て、仕切りを何層にも重ねるという構想から発展したものです。
木の箱の内部には、これまでの記憶や日本で観察したことを基に描いた墨のドローイングを何層にも配置しており、断片的な内部の建築空間を表現しています。また、
それぞれの箱の内側の後方部分、または、外側の後方部分に特殊なライトを設置し、内部を照らしていますが、光の効果は紙と木の構造により弱められ、古風な色合いを醸し出しています。また、箱の内側には、日本の障子に似せて、複層のプレキシガラス(アクリル樹脂を使用したガラス)を使用しており、ミニチュア空間内部が透けて見えるようになっています。内部のドローイングは、ミニチュア式に家具や室内のオブジェを写実的に描いたり、鑑賞者が自由に解釈できるように抽象的に表現したものです。