かみやまの娘たち vol.01 はじまりの前に

なんでも2016年11月17日

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投稿者:ウェブマガジン「雛形」 かみやまの娘たち

(hinagata)

ここ徳島県・神山町は、
多様な人がすまい・訪ねる、山あいの美しいまち。

この町に移り住んできた、
還ってきた女性たちの目に、
日々の仕事や暮らしを通じて映っているものは?

彼女たちが出会う、人・景色・言葉を辿りながら、
冒険と日常のはじまりを、かみやまの娘たちと一緒に。

写真・生津勝隆
文・杉本恭子
イラスト・山口洋佑


9月14日午前11時30分。『雛形』編集部の菅原良美さんと徳島駅前で落ち合うと、神山町在住のカメラマン・生津勝隆さんが、首からカメラを提げて手を振ってくれました。これから、連載「かみやまの娘たち」を共にする制作チームが出会った日です。

「最初ですから、少し遠回りをして古代人と同じルートで神山に入りましょう」。

生津さんの車で、伊予街道から、鮎喰川(あくいがわ)沿いの県道に入り、川を遡上するルートで神山町へ。水量の少ない今からは想像がつかなかったけれど、太古は舟が往来するほどの大きな川だったそう。

鮎喰川の両岸にせりあがるように家々が建つ、神山の風景。

神山町は、昭和30年に鮎喰川流域の5つの村が合併して生まれた町。東端は徳島市、南側の多くは上勝町、北側に吉野川市、西端は美馬市など、全部で7市町村に接していて、東西の距離は、「東京で言うと、新宿から立川くらい(!)」。ずいぶん細長いかたちをしています。

山間にひろがる棚田の風景も、神山の顔のひとつ。

神山といえば、「神山アーティスト・イン・レジデンス」「NPO 法人グリーンバレー」「IT 企業 のサテライト・オフィス」などのキーワードでよく知られています。「おもしろそうなことをやっている中山間地域のまち」「新しいお店や移住者が増えているらしい」など、ふわっとしたイメージを持っている人も多いでしょう。

滞在アーティストがアトリエを持つ「下分アトリエ」にて。作品制作中の Marijn van Kreij(マライン・ ファン・クレイ、オランダ)。完成した作品もここで展示されます。

Jeannine Shinoda(ジニーン・シノダ、アメリカ)。

製茶工場跡をリノベーションしたギャラリー空間にて、インスタレーションを制作する。Jeannine Shinoda(ジニーン・シノダ、アメリカ)。[/caption]

当然ながら、これらの事象はある日突然「ポン」と現れたわけではなく、いろんな人の思いと行動がゆっくり絡まり合った“結果”としてあるものだと思います。たとえば、グリーンバレーの前身となる「神山町国際交流協会」が設立されたのは24年前ですし、「神山アーティスト・ イン・レジデンス」が始まったのは17年前。グリーンバレーが運営する「移住交流支援センター」も8年目を迎えています(グリーンバレー設立は2004年)。

今の神山の状況は、「雨だれ石を穿つ」というような、じわじわと時間のかかる営みのなかで できあがってきたと考えるほうが自然ではないでしょうか。

そしてこの春、神山では新たな動きが始まりました。町の創生戦略「まちを将来世代につなぐプロジェクト(以下、つなプロ)」を実行するため、「一般社団法人神山つなぐ公社(以下、つなぐ公社)」を設立。民間と役場の動きを有機的に連携させて、「住宅」「教育」「食・農業」 などの各分野でプロジェクト立ち上げたのです。

2年前に神山に住みはじめた、プランニング・ディレクターの西村佳哲さんも、「つなプロ」立案に関わったひとり。現在は「つなぐ公社」の理事として各プロジェクトを見守る立場にあります。この連載企画について、西村さんからメールをもらったとき、こんな言葉が綴られていました。

プランニング・ディレクターの西村佳哲さん。

「国が掲げた地方創生が、地方自治体ではなく個人の人生、なかでも女性たちの人生や生きざま、あり方にどんな影響を与えているか。継続的なインタビューを通じてその機微と変化を追う」。

「なぜ、女性にインタビューを?」というと、町にとって初めての経験を多く含む「つなプロ」 の現場で、“冒険心”が旺盛な女性たちの存在が際立っているからです。

彼女たちはそれぞれ、人生の舵を大きく切って神山に来たのですが、不思議なほど「大きな決断をした」という気負いはなくて。理由を聞けば、「たまたまタイミングが合ったから」「やりたいことができそうだったから」とあっさりした答えが返ってきます。もしかすると、彼女たちのほうが神山町に選ばれ、招かれたのかもしれません。

「かみやまの娘たち」でインタビューするのは、「つなぐ公社」で働く4人の女性スタッフたち。彼女たちはそれぞれに人生プランを変更して、「3年間の関与」を前提に「つなぐ公社」にやってきました。

左から、森山円香さん、高田友美さん、赤尾苑香さん、友川綾子さん。

「すまいづくり担当」の赤尾苑香さんは、生まれ育った神山町で立ち上げたばかりの設計事務所を休んで。「ひとづくり担当」の森山円香さんは、イギリス留学の予定を変えて神山にやってきたそう。「しごとづくり担当」は、世界各国で研究や研修を経験してきた高田友美さん。“ナゾの土地” 四国へ。「つたえる担当」の友川綾子さんは、現代アートの執筆・編集をする東京暮らしから、畑のある家に引っ越しました。

連載は、彼女たちとの定期的なインタビューを軸としつつ、ほかにもたくさんいる人生の冒険者たちと呼びたくなるような神山の女性たちにもお話をうかがう予定。“かみやまの娘たち”の言葉を通じて、「今、神山町で起きていること」を追いかけていきます。

ものごとがはじまる源は、やはり「人」です。定期的なインタビューをすることは、川の水源地から流れを追いかけて旅をするような感じになりそう。

少し長い旅になりそうですが、ときどき「今はどこを旅しているのだろう?」と、この連載の行方を気にかけてもらえたらうれしいです。

 

一般社団法人神山つなぐ公社
神山町では、2015年に約半年をかけて40代以下の町役場職員や住民など約30名によるワーキンググループの恊働を通じて、神山町の創生戦略・人口ビジョンを策定。同12月に「まちを将来世代につなぐプロジ ェクト」を公開した。このなかで、民間に地域公社をつくるという方針において設立されたのが「つなぐ公社」。役場内に置く戦略会議と「つなぐ公社」を“両輪で回す”ことにより「連続的で、拡張性があり、継続性の高い施策群の推進」を目指している。 「つなぐ公社」代表理事は神山町役場総務課で創生戦略を担当した杼谷学さん。NPO法人グリーンバレー の大南信也さん、2年前に神山で暮らしはじめたプランニング・ディレクターの西村佳哲さん、米・ポートランドなどのまちづくりでも知られる後藤太一さんも理事として参加している


ライター/杉本恭子(すぎもときょうこ)
大阪府出身、東京経由、京都在住。お坊さん、職人さん、研究者など。人の話をありのままに聴くことから、そこにあるテーマを深めるインタビューに取り組む。本連載は神山つなぐ公社にご相談をいただいてスタート。神山でのパートナー、フォトグラファー・生津勝隆さんとの合い言葉は「行き当たりバッチリ」。

転載元:ウェブマガジン「雛形」

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ウェブマガジン「雛形」 かみやまの娘たち (hinagata)

神山に移り住んだり、還ってきた女性たちへのインタビュー・シリーズ「かみやまの娘たち 」。ウェブマガジン「雛形」で全44回にわたり連載された記事をイン神山にも転載させていただきました。

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