神山が好きだから。神山の成長に最前線で関わりたい。
ーまち出身、まちと関わり続ける若者たちの現在地(上)

なんでも2024年11月8日

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投稿者:神山つなぐ公社

神山で生まれ育った若者たちと、ふるさととの関係性が少しずつ変化しています。中学校までは地域を身近に感じていても、高校以降は関わりが薄くなるのが一般的でした。しかし、2024年の現在、中学・高校卒業後も、まちづくりに積極的に関わる10代、20代が増えています。

まちとの関わりを深めている若者に今の思いを聞いてみると、共通していたのは「神山が好き」「大人になっても、神山町と関わっていきたい」という熱い思い。

1回目の今回、登場するのは、神山中2021年度卒業の佐々木崇善さん、瀬川悠仁さん、坂東真凜さん、森本謙信さん、矢武彩羽さん(50音順)の5人です。
 

 
まちづくりで自信をもらった。「神山と関わり続けたい」という現在地:森本さんの場合

森本さんは神山中学卒業後、市内の高校へ進み、今は教師を目指して、四国大学児童科で学んでいます。「中学生の頃から『教師になりたい』という思いがあったものの「なれるんだろうか?」と小さな不安もあった森本さん。しかし、「助っ人大学生」として神山町のまちづくりに関わった経験から大きな自信を与えられたようです。

「助っ人大学生」は、町内出身の大学生が、小中学生の学びや遊びを支える事業。 2021年から始まりました。夏休みの宿題を手伝うイベントや、夏休み中の広野小学校の校舎で一日中、遊び尽くすというイベントなどまちの恒例行事になってきています。

「主に子どもたちと関わって。まちの人たちが、僕らが企画したイベントに参加してくれて、盛り上がったなということを初めから終わりまで関わらせてもらったんです。まちの人たちが僕らの企画に参加してくれて、そこで一緒に盛り上がった経験は、大きかったですね」という森本さん。

今までは、知らないところで神山が発展したり、メディアに取り上げられたりして、噂で聞く程度だったそう。自分が実際に参加してみて、「まちづくりに携わる人」になることで神山の成長に触れている実感が湧いてきたといいます。


 <2023年の助っ人大学生の夏休みイベント。「大学生と見つけよう!神山のいいところツアー」>

森本さんの行動力の源は、地元・広野を大事にする思い。神山町の中でも、人口の多い神領地区でのまちづくりがニュースになることが多いことが気に掛かっていました。「神領でできていることは、広野でもできる。でもそれは先頭に立ってやる人がいないとできない。だから、自分たちが、やってみよう。ダメだったらダメなりに、またそれを生かしてやっていけばいいだけ」。助っ人大学生の活動を機に、行動が始まります。

2024年は、夏休み以外も活動。9月からは坂東さん、矢武さんと一緒に、旧広野小校舎「ほんのひろば」で多世代が集う居場所「まったり みんなの広場」も始めました。9月の初回は、お年寄りから放課後の小学生まで多数参加し、大好評でした。

森本さんは、今後も神山町の成長を間近で見守り、自分もそこに貢献したいという強い思いを持っています。「最前線でまちが成長している姿を見たい。自分も先頭に立って、まちづくりを担いたいという気持ちが強いです」と語ります。

 

「最前線で、神山町の変化をみたい」。来年は母校で教育実習へ。:坂東さんの場合

坂東さんも、助っ人大学生として活躍中の1人です。夏休みの小学生の宿題をサポートから、広野小での小学生向け1dayキャンプ、そして新たな「みんなの広場」など企画してきました。

「高校生の頃は、神山に住んではいるけど、神山のことを知らなかったんです。神山がいい場所っていうことは分かっていても、外から来てくれる人に具体的に『ここがいいところ』と表現できない自分が寂しかった」と語るのは坂東さん。

大学に入ってからまちへの関心が変わります。「公社の方から声をかけていただいて、いろんなイベントに関わるようになったんです。そこから神山町が成長している姿を最前線で見たいと思うようになりました」といいます。

 <今年の1dayキャンプで水鉄砲。子どもも大人も大はしゃぎ>


そんな彼女が目指しているのは、子どもたちの話をカウンセリングできる、養護教諭の先生。きっかけは中学時代の「落ち込んだ時に、家族や友達に話を聞いてもらって、乗り越えられた経験」。カウンセリングをできる人になりたい、子どもを支えたいと言う思いで、この道を選びました。来年始まる教育実習先に選んだのは、まさに母校、広野小学校です。イベントだけではなく、さらにまちとの関わりが深くなりそうな予感がしますね。

 

神山の農業を現場で学びたいという強い思い。「農業で神山を盛り上げたい」。
:瀬川さんの場合

瀬川さんは神山中学校から城西高校神山校へ進み、さらに農業大学校に進学。しかし、わずか5日で退学を決意しました。農大の机上の勉強よりも「神山の現場での学びを大事にしたかった」といいます。
中学校3年生の進路選びのときに、「農業をやりたい」と考えて家からも近い神山校地域創生類へ進学し、2年時からは食農プロデュースコースを選択。高校で農業を学ぶうち神山在来種「神山小麦」の栽培が楽しくなり、自分で農業したいという思いが強くなったそうです。

農業大学校へ進学しましたが「実習が思っていたほどなくて想像と違った。5日で登校をやめて、2ヶ月、自分が本気で農業をできるか悩んだ」といいます。しかし、行動することで変わると考えて、神山町鬼龍野で農業を営む「Oronono」松本直也さんのもとでのインターンへ踏み出しました。「松本さんから現場で、なぜその作業をしているかという本質や効率を教わって、現場での意識の持ち方も変わった」とのこと。

「農業が好き。好きな分野に対してずっと集中できている神山の環境が、やっぱり好き。キャベツや葉物野菜など5つをメインに多品目の露路栽培をするのが目標です。今後は、結果を出した上で仲間を誘い、自分が主体となって農業をしていきたい」と強い思いを持っています。

 
「国際交流プログラムで成長させてもらった。その成長を、神山に返したい」:矢武さんの場合

作業療法士を目指して、専門学校健祥会学園で勉強中の矢武さん。2018年の夏、中学2年生で神山町とオランダとの国際交流事業に参加したことが、自分を変えた大きな出来事だったと言います。

プログラムへの参加は「人生で初めて、自分で決めたことだった」と言います。 オランダを訪問したり、ホームステイを受け入れる中で大きく内面が変化しました。

「オランダでは、自分の思いを出す人が多くいて、すごく良いなって思って。私もちょっとずつ積極的に発言したり、行動したりできるようになりました。国際交流に行ってなかったら、周りにうまく自分の気持ちを話せず、人に合わせることが多かったんじゃないかな」。

「いろんな年代の人、いろんな国籍の人、いろんな言葉をしゃべる人がいて、世界の広さを感じました。でも、一番面白かったのは、そこに必ず、ぐるっと神山が関わっていること」。

「神山でいっぱい成長させてもらったことを、大きくなった今、お返ししようっていう思いがある。だから、本業の勉強もあるけど、勉強と並行して神山のまちづくりもやっていきたい」。海外への興味を持ちつつ、ふるさとも大事にする矢武さん。森本さん、坂東さんたちと一緒に、1dayキャンプ、「みんなの広場」など広野を盛り上げる活動に取り組んでいます。

<2021年の広野小での大学生企画「1dayキャンプ」。スダチの鬼から逃げる小学生たち。校舎内だけど子どもたちは思う存分、走り回ることができました。学校だけどハメを外せる楽しい時間の演出は、大学生ならではの発想>

 

「神山校で農業を深めてみたいと思った」。神山での農業の道を志す:佐々木崇善さんの場合

 
農業大学校に通って2年。農場で香りの高いごぼうを栽培している佐々木さん。将来的には「神山で、野菜を作ってみたい」といいます。中学生の進路決定の際、神山校へ行くことは決めましたが、当時は真剣に就農する未来を想像してはいなかったとのこと。

けれど「神山校に進んで、農業を学んでその面白さに気づいて。多分、自分の性格に合うんですね。それから農業を深めてみたいと思って、農業大学校に進みました」と言います。

小さな頃からごぼうが大好物で、この日集まった同級生たちも佐々木さんのごぼう好きを覚えているほど。今は農場で育てているごぼうの商品化も考えているそう。「最終的に 乾燥させたりして加工品にして。ごぼうって、正直言って『渋い』っていうイメージがあると思うんですが、おやつにして若い人や子どもにも、ごぼうを好きになってほしいという気持ちがあります」。

卒業後は、高校時代から何度かインターンに行っていた神山しいたけ栽培協同組合で働くことも決まっています。「農業をやっていた祖父の土地があるので、将来的にはその土地で農業をして独立したいです」。神山での農業の担い手として着実に進んでいます。

 

みんなに共通するのは、「神山との絆を感じ続けたい」「まちから育ててもらったものを恩送りしたい」という思い
 <5人は河野町長を囲んで、座談会をしました。若者からの話に大人たちも、うんうん共感したり、まちが将来世代につながっていく未来を確かめました。>


「自分が育った場所なので、恩返しがしたいというか、ちょっとでも地域に貢献できることがあればやりたいなと思っています。農業で盛り上げるといったことをしてみたい」という瀬川さん。

それぞれ異なる道を歩みながらも、神山町との深い絆を大切にし続けている5人。彼らの思いは、地域社会とのつながりを強くし、神山町の未来を明るく照らす力となるでしょう。

次回は、今回も度々出てきた「助っ人大学生」を支える橋本幸奈さん、大林風太さんのお話。町出身ですが、進学などのため町外に住みながらでも、イベントを支えています。


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この記事で取り上げた5人が関わっている企画・記事

大学生企画!1DAYキャンプ/かみやまch.065
普段、神山でできない体験をしよう!/助っ人大学生

まったり みんなの広場/ かみやまch.167

神山町で過ごした学生生活を振り返って「ずっと見守ってくれているのが分かるから、神山に帰ってきたくなる」 | 神山はいま (高校卒業時の佐々木さん)

(文:中村明美、インタビュー:梅田學、秋山千草)

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神山つなぐ公社

神山つなぐ公社は、神山町の地方創生の一環で、2016年4月に設立された一般社団法人。「まちを将来世代につなぐプロジェクト」に取り組んでいます。

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