まちの大人の生き方を知る、神中生2年生のキャリア学習 ーー2024年度から始まった「神山生き方図鑑」制作とは?

学び2024年8月20日

投稿者:梅田 學

(神山つなぐ公社 ひとづくり担当)

神山中学校では、2年生の総合的な学習「かみやまタイム」を使って、年間を通じた「キャリア学習」を行っています。50年以上続く伝統行事、12月の「立志式」では、自らの将来のあり方を大人たちの前で宣言します。

「かみやまタイム」のキャリア学習は単に「職業教育」ではありません。生徒が人生観や職業観を深め、自らの進路について自分ごととして考える力をつけるためのもの。

神山つなぐ公社が関わり始めたのは2021年度。中学生がより多くの地域の大人と出会うための機会をサポートしてきました。2024年度は、新しい外部パートナーも加わり、大幅にカリキュラムを改革。まちの大人の「生き方」により深く触れる時間になっています。

2019-2020年度、つなぐ公社スタッフとしてかみやまタイムを一緒に作り、現在はフリーランスの地域コーディネーターをしている荒木三紗子さんを加え、これまでの2年間ご一緒してきた中村明美さん、梅田の3人で企画。授業の伴走役としても、お兄さん役として町内在住の安東陸人さんも含めた4人のチームで、生徒たちの授業運営をしています。

現在、新カリキュラムが始まって約3ヶ月。2年生23人がどんな授業を受けてきたのか、見てみましょう。

大人としゃべり場からスタート!

<2024年度の「大人としゃべり場」>

昨年実施した、神山町農村環境改善センターから場所を移して、神領小学校体育館で。広野小、神領小、オルタナティブスクールみっけという町内の3つの学校の6年生も中学生2年生と一緒に参加。城西高校神山校や神山まるごと高専の先生方を含め、地域の大人たちも40人あまり参加してくれました。

オープニングは、5月の「大人としゃべり場」。輪になって多くの大人と1-5分ずつ話をしていく「トークフォークダンス」と呼ばれる手法で、思いを伝え合う時間です。
開催は、今年で3回目になります。

多様な大人がいて、
多様な意見があること、
大人も生徒も対等な1人の人間であること。

そんなことを、まちの大人と、ファシリテーターの山口覚さん(※)がつくる場で体感できます。
例年と同じカリキュラムのオープニングで、キャリア学習が幕を開けました。

※山口覚さん:トークフォークダンス提唱者、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス特任教授、津屋崎ブランチLLP 代表。3年間、毎年この時期に神山町に通ってきてくださっています。

神山生き方図鑑づくり開始!

6月。2年生は修学旅行で、広島を訪れ、平和学習を通じて命や平和の尊さに触れてきました。
自らの限られた人生をどう生きるか?被爆者の証言を聞きながら生き方について考える生徒もいたようです。

そんな旅から帰ってきた彼らを待っていたのは、まちの大人を招いての「神山生き方図鑑」制作の授業です。新カリキュラムでは、生徒が、じっくりと一人一人の大人のお話をインタビューし、より深く、多様な生き方について考えることを大事にしました。

お一人お一人の人生観や職業観に関するインタビュー内容を「図鑑」として仕上げ、共有していきます。

6月20日、6月27日の2日間、計6コマを使って、5人ずつ計10人の大人にインタビューをしました。どなたも、中学生のために時間を割いてくださることを快諾してくれたみなさん。これも神山の大人が、子どもをみんなで育てようと思ってくださっている表れですね!

初日は、阿部晃幸さん、高木由美子さん、杼谷学さん、林美智代さん、湊洋平さん。
2日目は、赤尾苑香さん、糸山達哉さん、高橋幸次さん、手嶋恭子さん、三好絢野さん(50音順)。


公務員や自営業、生まれも育ちも神山の人、移り住んできた人、さまざまな背景のみなさんです。大人1人当たり生徒4ー5人が1グループになって約1時間、インタビューしました。


<生き方図鑑のインタビュー中。鮎喰川コモンの三好さん>

<生き方図鑑のインタビュー中。神山椎茸生産販売協同組合の糸山さん>


「仕事で大事にしていることは何ですか?」
「仕事や暮らしを決める時に大事にしたことは何ですか?」
「中学生の自分に伝えたいメッセージを教えてください」

時間が限られるので、質問を絞って進行しましたが、それでもたくさん聞きたいこと、話したいことが溢れてきて、生徒も大人も「聞き足りない!」「話し足りない!」。1時間があっという間に過ぎたようでした。

終了後は、生徒たちの中から「楽しかったー!」「聞けてよかったー!」色々な声が聞こえてきました。

大人たちが帰った後は、グループごとに図鑑を仕上げます。そして、グループごとに発表。全ての大人に同じ質問を投げかけたため、それぞれの回答がさまざまだということも分かりました。

「人生の分岐点について教えてください」という質問では、
「人生には乗り越えられない壁がある」と答えた大人の方もいれば
「人生には乗り越えられない壁はない」と答えた大人の方も。

人によって大きく違う回答に驚き、考えた生徒たちもいました。


<グループごとに、完成した図鑑を発表。他の生徒からも質問が出ます。>

多様な生き方モデルを知って将来を考える、新旧カリキュラムの共通点と相違点

今年度の生徒たちに「君たちの周りの大人が、自分の仕事や暮らす場所を決めた理由について、知っている人は何人くらいいる?」と聞いてみました。

生徒たちの回答は、最も少ない子で0人、最も多い子でも3人でした。保護者のことでも「知っている」と自信を持って答えられた生徒はほとんどいませんでした。これは神山中学校に限ったことではないと思われます。

自分の人生のあり方を決める時、人は自分がこれまで触れてきた身近な大人の生き方に、知らず知らずのうちに影響を受けます。かみやまタイムは、様々な生き方があることを生徒に知ってもらいながら、自分の人生のあり方を考える機会を提供することを目的としてきました。

旧カリキュラムでは、町役場の「町内町民バスツアー」の制度を利用して実際に現場へ行くことを大事にしてきました。町内の事業所6か所前後を訪れる1日。生徒は、多様な大人が、多様な仕事をしていること、多様な価値観で生きていることを、仕事現場で体感。役場総務課や事業者のみなさんから多くの協力をいただいてきました。

4年目に入り、「職種というよりも、じっくり一人一人の生き方に触れ、考える機会を持ってみたい」という思いが出てきました。今年度は生徒がもう一歩、自分ごととして踏み込んで考えられるよう、生徒が主体的にインタビューする方向へ舵を切りました。成果物として「神山生き方図鑑」を制作することにしたのです。

2学期

2学期は一人一人がそれぞれ、みっちり2日間計12時間を希望の職場で過ごす「職場体験」。基本、1対1で大人と向き合い、生き方や職業観に濃密に触れる時間です。生徒は当日、職場の方からもじっくりと生き方についてお話を伺い、生き方図鑑を作成しました。

職場体験を終えると、クラス全体で計約20人分の図鑑が仕上がりました。春には「周りの人がどんな理由で仕事や住む場所を決めていたか」をほとんど知らなかった生徒たちでしたが、「30人分の生き方に触れ他ことがある」経験を積みました。

そして公社が提供する生き方図鑑のプログラムとは別に、20歳前後の少し上の卒業生が自主企画してくれている「卒業生と語る会」も経験。

以上が、「まちの大人の生き方を知る」段階。多くの大人と出会ったり、神山の事業所で仕事を体験してみるなかで、じぶんの周りの社会・環境に触れ、自分を振り返る期間でした。

10月後半からは、「自分」の内面を見つめる時間。

私たちの内面は私たち自身の個性や価値観と、家庭や地域、時代などの環境に影響されています。新カリキュラムでは、「じぶん(自己理解)」と「じぶんのまわり(社会理解)」が重なった部分を見つめることが、「じぶんらしい生き方」の発見につながると考えました。


生徒は、「自分が大切にしたいこと」や「自分が関心のある社会」について言葉にしながら、以下の図を完成させていきます。


<新カリキュラムの「じぶんらしい生き方を表す図」>

自分との対話が終わると、次はクライマックス。生徒たちは12月19日の立志式で、まちの大人や保護者たちを前に、「自分は将来、こんなふうに生きていたい」という思いを宣言します。

未来にあふれた中学2年生の「将来のあり方」がどう表現されるのか楽しみですね。


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梅田 學 (神山つなぐ公社 ひとづくり担当)

2018年6月に神山町に移住。ひとづくり担当として、神山校、神山中学校の生徒が地域で学ぶため授業をコーディネートしています。 その他、毎月一回、孫の手プロジェクトで、神山校の有志のメンバーで高齢者の庭の剪定をしています。 休日は、2年前から始めたサーフィンを楽しんでいます。徳島の小松海岸、高知の生見海岸に出没中。

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