まちの大人の生き方を知る、神中生2年生のキャリア学習(後編) ーー職場体験から立志式、そして振り返りの会

なんでも2025年3月1日

投稿者:梅田 學

(神山つなぐ公社 ひとづくり担当)

神山中学校2年生の総合的な学習「かみやタイム」は、年間を通じた「キャリア学習」を行っています。生徒が様々な生き方、働き方があることを知り、自分の人生のあり方を考える授業です。

前編に続いて紹介するのは2024年度2学期、3学期の内容。

生徒一人一人に合わせた「職場体験」、20歳前後の卒業生が自主企画する「卒業生と語る会」を経て、大勢の前で将来の思いを語る「立志式」を行いました。今年度は最後の授業に、お世話になった地域の大人を招いた「振り返りの授業」も開催。生徒の「立志宣言」への思いを、少人数の輪で受け止め合いました。

では2年生たちがどんな学びをしたか、キャリア学習の後半を見ていきましょう!

職場体験(9月26~27日)

1学期は計10人の地域の大人の生き方をじっくり聞いた23人の2年生。

9月は、町内各所の事業所で2日間働いてみる「職場体験」にチャレンジです。生徒が興味のあること、チャレンジしたいことに取り組める事業所を一人一人のために選定しました。1事業所につき、原則生徒1人が伺います。生徒は、2日間計12時間も事業所で過ごすことになるため、受け入れ側の負担も大きいはずなのですが、どちらもも快く受け入れてくださいました。「まちの子どもたちを共に育てたい」と考えている人の多い神山町ならではのことでしょう。

COCO歯科では歯科衛生士さんの指導で歯型を取るための石膏作りを体験。

神山消防署では、マンツーマンで救命救急の講習。真剣です。

鮎喰川コモンでは、子どもの「やりたい」をそっとサポート。

農業「Oronono」では広い畑でのマルチがけ作業。「楽しい!」と思わず声が漏れます。

職場体験でも、事業所の方お一人に「生き方図鑑」づくりにご協力いただきました。1対1でたっぷり時間をかけて取材する生徒も。その人の働く空間で、その人の生き方を聞く。生徒にとってはとても刺激になる時間だったようです。

卒業生と語る会

10月に毎年行われる「卒業生と語る会」は2020年度から、神山中学校出身の海老名和(いずみ)さんと中川麻畝(まほ)さんが企画してくれています。

今年集まったのは、20歳前後の6人。少し先ゆく先輩たちの生の体験に触れ、生徒たちからは「どうやって進路を選んだ?」というリアルな質問も飛び交いました。

感じたことを落とし込み、言葉にしていくプロセスから、立志作文へ

神山中学校のキャリア学習は、3つのプロセスを大切にしています。

①人と出会い、現場で感じ、考える

②その経験や想いを周りと共有する

③自分自身と向き合い、言葉にする

生徒たちは、このプロセスを繰り返すことで、自分自身の中から湧き出る思いに次第に気づいていきます。

様々な体験から感じたことや考えたことを共有し合った2年生は、自分の将来への思いをいよいよ、400字前後の立志作文に落とし込んでいきます。


今回、立志作文を書き始める前に、新たな試みとして、今の自分の価値観を『一問一答』で表現しました。「じぶんにエネルギーを与えてくれるもの・ことは?」など、今回の授業のためにつくられた12枚の「生き方質問カード」の中から、自分らしいと思うカードや自分が大切だと思うカードを選んで、回答していきます。


完成させた生き方質問カードの回答を掲示して見比べる時間。人によって色々な答え方があることに気づいていきます

これらのカードを一人一人の立志作文と並べ、作文集に掲載することで、中学2年生時点での価値観を明確に残すことができました。10年後、20年後の彼らが、今を振り返った時、同じ質問でどんな答えを出すでしょうか。私たちは、そんな先のことも想像しながら楽しく見守りました。

以下の画像は、生き方質問カードの12問です。ぜひ、これを読んでいるあなたも考えてみてはいかがでしょう?

2024年度立志作文集より転載

立志式

一人一人が、考えた立志宣言。とうとう12月19日、立志式が神山中体育館で開催されました!1950年代から続いている、いわゆる「元服式」の現代版。町長さん、町議会議長さん、議員さんたち、教育長さんなど、まちの大先輩も来賓です。保護者のみなさんもスーツや礼服の人も多いなか、緊張に負けず2年生たち、頑張りました。

春からのキャリア学習を含め、自分たちの学びをスライドで明快に説明していきます。前編で紹介した「大人としゃべり場」「生き方図鑑」づくりについても「新しい発見があった」と発表していました。いよいよクライマックスは、立志宣言です。

「人を助けられる人になりたい」

「神山のものを生かして自分のやりたい仕事をしたい」

「プロ野球選手になりたい」

「理学療法士になりたい」

ーー職業だけでなく、目指す生き方など、それぞれの未来像を自分らしい表現で発表した2年生たち。成長ぶりに、涙をほろっと流す保護者の姿も見られました。

そして、年が明けて神山町内に全戸配布された「広報かみやま1月号」は、なんと「”自分らしい”生き方を考える」特集!神山中2年生のキャリア学習が大特集されました。キャリア学習に関わる企画チーム、先生方、先輩方の思いに加え、生徒たちの立志宣言の写真も掲載されています。まちで会う人たちから「2年生の立志宣言、見たよ!」と声をかけられた生徒も。企画チームも、この特集のおかげでまちの人たちと、2年生の成長を喜びあえる機会が例年以上に増えました。


広報かみやま2025年1月立志式特集表紙

2年生一人一人の立志宣言。いずれも生津勝隆氏撮影

 

地域の大人を招いた振り返りの授業

1月16日は、最後の授業です。「生き方図鑑」や「職場体験」でお世話になった地域の大人、10人が駆けつけてくださいました。6チームに分かれて生徒3人に大人2人以上が、立志作文を見ながら、それぞれの想いを受け止めました。

生徒は、近い距離から大人に気持ちを受け止めてもらう時間。決まったセリフではなく、対話形式でのやりとり。表現に詰まる生徒に対して、じっくりと次の言葉が出るまで待ってくれる仲間や大人たち。将来についての大事な感情を扱う時間だからこそ、大人たちの温かな関心と聴いて受け止める姿勢が彼らの後押しになることを実感した時間でした。

「神山で社長になりたい」「神山の祖父のキャンプ場を継ぎたい」という生徒たちの話に、「ほんなん聞いたら、ワクワクするなぁ」とにっこりする大人も。


地域の大人のみなさん自身も、「自分自身にとっても学びになった」と嬉しそうに話しておられました。

地域の方からの応援コメントを紹介しておきます。

「神山中学校のOBなので後輩が自分の夢に向かって頑張って欲しい」

「前向きな未来についてみんなで考え、夢を語る学生が眩しく、こちらもたくさん元気をもらいました」

「振り返りがあることはとても大切な過程だと思います。生徒同士も地域の大人とも距離が近くなって自分の世界が広がったのではないかと思いました」

「それぞれの夢や目標を聞いて、応援したい気持ちが強くなったと感じました」

学校内外で、地域の大人たちがいきいきと暮らし、働く姿に触れることで、子どもたちが主体的に将来を決めるための価値観を育む。それが、神山中学校でのキャリア学習です。

関わる地域の大人もまた、自らの人生や神山町について考え、元気をもらう機会になった1年でした。神山つなぐ公社が神山中学校のキャリア学習に関わり始めて4年、素敵な循環が、だんだんと大きくなっているのを感じます。

そして、このキャリア学習は、来年度以降も続きます!ぜひ、あなたもこの動きをフォローしていってくださいね。

今回の記事前編はこちら:まちの大人の生き方を知る、神中生2年生のキャリア学習(前編) ーー2024年度から始まった「神山生き方図鑑」制作とは? | イン神山

関連サイト:広報かみやま2025年1月号

関連記事:2年生 かみやまタイム 「中学生 町内バスツアーに向けて」 | イン神山

梅田 學 (神山つなぐ公社 ひとづくり担当)

2018年6月に神山町に移住。ひとづくり担当として、神山校、神山中学校の生徒が地域で学ぶため授業をコーディネートしています。 その他、毎月一回、孫の手プロジェクトで、神山校の有志のメンバーで高齢者の庭の剪定をしています。 休日は、2年前から始めたサーフィンを楽しんでいます。徳島の小松海岸、高知の生見海岸に出没中。

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