「地域のもので、地域の人たちとつくる」集合住宅プロジェクト
住まい2017年3月3日
こんにちは、神山つなぐ公社の赤尾です。
花粉症のおかげで顔のすべてで春の気配を感じとっている今日この頃。
春の訪れをまえに、神領字大埜地ではかつての景色が蘇ろうとしています。トップの写真は、現在の農村環境改善センターの場所にあった昔の神領小学校。 奥に旧学生寮「青雲寮」が建つまえの田畑が見えています。
この場所で進められている集合住宅プロジェクトは、解体工事と木材調達が着々と行われています。昨年末から取りかかった解体工事では、ついに最後の1棟にメスが入りました!
敷地には、コンクリートガラの大山が出現。建物内部が丁寧に分別解体されたのち、残った躯体コンクリートは現場で細かく砕かれ、再生クラッシャーとしてこのあとはじまる建設工事で建物や歩車路、雨水が通る場所に再利用されていきます。
photo by Masataka Namazu
プロジェクトでは、「地域のもので、地域の人たちとつくる」ことを大事にしています。
解体現場では、職人さんたちが重機の大きなヘッドを器用に操ってコンクリートガラに混ざった細い鉄筋を掴んだり、コンクリートを壊す重機とガラをすくい取る重機が見事な連携プレーで動いたりと、大きな機械が何やら命ある生き物のように見えてくるのです。先月、粉雪が舞い散る中を重機が動く姿も、それは美しい光景でした。
敷地に植わっているイチョウや桜などの樹木は、これからもそのままの場所で季節ごとの色合いを見せ、「青雲寮」の看板も一旦お引越しをしてまた元の場所に帰ってきます。この看板の再登場を心待ちにしてくれているまちの人もいるのだとか。
神山町と設計者たちとの考えを積み重ねてつくられた設計と、神山町の発注を受けて十二分にプロジェクトの意図を受けとった業者さんたちの丁寧なお仕事によって、地域のもの(解体ガラもまちの資源のひとつ)でつくることが実現しつつあります。
「神山の木でつくる」というのもそのひとつ。この約50年間で日本の山の木はだんだん使われなくなっていきました。
“でも木の家は建っていっきょるでぇ?”
という疑問を持たれるかもしれません。
photo by Masataka Namazu
かつては、「近くの山の木で家をつくる」ことがあたり前だった家づくりも、安価な外国産の木材が使用されることも多くなり、目の前に広がる山の木は、実はほとんど使われていません。そのような状況から林業に携わる人も少なくなり、拡大造林された杉や檜の山々にはますます手入れが届かず、山林の荒廃や鮎喰川の水量も年月とともに減少しているのです。
こうした日本全体が抱える山の状況を、神山町に暮らす人たちも以前より危惧してきました。だからこそ、集合住宅は100パーセント神山産の木材を使用してつくりたい。この想いを実現させるために、昨年この集合住宅プロジェクトをきっかけに、森林組合や林業活性化協議会が協力して、神山町産材の「認証制度」を策定しました。
Film by KAWAGUCHI FILM OFFICE
Supported by Kamiyama TSUNAGU Corporation
Special Thanks えんがわオフィス
「ご先祖さんが自分たちのために植えてくれた木が、こうやって建築用材として、まちのために使われることがほんまにうれしい」とは、集合住宅の木材調達・製材に関わってくれている上分の金泉さんの言葉。
解体ガラの再利用ははじめての試み。集合住宅で使われる木も、神山町の山林面積からするとほんのほんの一握りです。よい山の状態になるにはどれだけの時間がかかるでしょうか。でも、まずはここから。「地域のもので、地域の人たちとつくる」ことを、集合住宅プロジェクトからはじめて、山に目を向けてもらったり、地域の中で技術や職人さんたちが育ち合っていきながら、それを次につないでいけたら。
私が小さいころには、山に入ってカブトムシを探したり、紅葉した落ち葉を押し葉にしたり、川に飛び込んで魚を追いかけたりしていました。 神山の山や川からもらった豊かさを、次の世代に暮らす人たちにつないでいけるご先祖さんになりたいな〜。
「みんなでやりませんか!?」
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コメント一覧
すごいことですね! 町つくりに興味をもっていろいろ本を読みましたが、皆さん地域再生へ真剣です。 ぼくの地元でも真剣に取り組む同志を集めて話をしています。 「観光に特化しよう」が方針ですが、地域再生には、それだけでは視点が狭いと感じています。神山町の取り組みが見えて、道しるべに出会った感があります。 ありがとうございます。
2017年3月5日 04:57 | 近野浩士
山を手入れする事で山が蘇り 地域の仕事も活性化し、 そして毎年干上がっている様に見える 鮎喰川に水が戻ってくれば 本当に最高だと思います。 地域の為に何かしたいと思いながら 何も出来ずにいたのですが 改めて今年は活動したいと思います。 丁寧な文章と、素晴らしい内容の記事を ありがとうございました。
2017年3月6日 09:11 | 三倉 庸人