岩瀬直樹さんをゲストに迎え「先生みんなでごはん」を開催しました
学び2018年11月27日
フードハブ・プロジェクト 樋口(食育係)です。
神山つなぐ公社主催の「先生みんなでごはん」は今回が4回目。
今回初企画となった「ゲストトーク」は、岩瀬さんをお迎えしました。岩瀬さんには昨年開催された「風越コラボ」で初めてお会いしましたが、神山町でご一緒できればなぁ〜といういつかの願いがこんなにも早く実現するなんて。ありがたいご縁に感謝しきりです。
2016年から実施されている「先生みんなでごはん」は、神山町内の保育所、小学校から高校までの先生方が集い、ごはんを食べながら気軽に情報交換ができる場です( これまでの様子はこちらより)。
今回は、高校を会場にして町の取り組みを共有する時間を設けたりゲストをお招きするなど、拡大版の3部構成で実施しました。
- 第1部:勉強会①「子どもたちをつなぐ、町の国際交流」
- 第2部:勉強会②「城西高校神山校の新コース開設に向けて」
- 第3部:ゲストトーク:岩瀬直樹さん(一般社団法人軽井沢風越学園副理事長)
第1部:勉強会①「子どもたちをつなぐ、町の国際交流」
小学校、中学校、高校の先生から、各校で実施された国際交流プログラムの報告
のち、校種混合のグループで感想を共有
第2部:勉強会②「新コース開設に向けて」
高校の先生から学校設備の案内と、森山円香さん(神山つなぐ公社)から、神山校の新コースについての説明がありました。
神山分校の先生の案内で敷地内にある温室を見学
第3部:岩瀬直樹さんによるゲストトーク
城西高校神山分校からWEEKに移動して、第3部は岩瀬さんのゲストトークです。
岩瀬直樹さん岩瀬さんは、埼玉県内の公立小学校で22年間教諭を勤めたあと、東京学芸大学教職大学院で准教授として3年間、教員養成・教師教育に携わってこられました。現在は一般社団法人軽井沢風越学園設立準備財団の副理事長として、2020年に開校を目指す幼小中混在校設立を目指して活動されています。
「ぼく、親しい人たちから “ごりさん” と呼ばれることが多いので、ぜひ “ ごりさん” と呼んでください。」
ここからは親しみを込めて…ごりさんとお呼びすることにします。
ご家族を含めた自己紹介、ごりさんがどんな幼少期を過ごされていたかをお話しいただき、笑い声も聞こえてきたところで小学校教諭時代のお話へ。
「20年後、どんな社会になっていたらいいだろう」というところから学校のあり方を考えているというごりさん。
教室のなかでどのような「学び」をつくってこられたのか、大きく4つのテーマに沿ってお話ししていただきました。
- 子どもといっしょにつくる
- いっしょに「楽しみ」に変える
- いっしょに相談する
- いっしょに学ぶ、ゆるやかにつながる
ごりさんのお話の中で、子どもたちが活動している動画や写真をたくさん見せていただきました。
特に印象に残ったのは、4人の子どもが机を並べて自分の課題に取り組んでいる場面。テストをしている2人がいて、復習をしている人、原稿を書いている人、それぞれが取り組んでいる教科もバラバラでした。「学び方や進度は一人ひとり違って当然」が目に見える風景でした。いや、でも…子どもたち、カンニングしないの?「同じこと」しなくて平気なの?などなど「学校の当たり前」メガネで見ると「!!!!!」です。ごりさんがピシャリとおっしゃったのは「一斉授業で全員が同じタイミングでわかったり、できるようになるというのはフィクション」って。
自分がどんなメガネをかけてそこにいるのか、どんなモノサシでいるのか、意識的でありたいなぁと思った瞬間でした。
お話の内容をここですべてお伝えすることはできませんが、興味を持たれた方は、ぜひごりさんの著書を読んでいただければと思います。
さて、この日お集まりいただいた先生方は、ごりさんのお話をどのように聞かれたのでしょう。参加された先生方の感想を紹介します。
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がんじがらめの教育を受けてきたわたし世代にとっては、岩瀬先生の話を聞いて「あぁ、こんな教育を受けられる子どもたちは幸せだなー」って切に思いました。子どもたちの「居心地のいい居場所」をつくってあげて、学校に行きたい、楽しいって思える、そんな子どもたちが増えたら、いじめはなくなっていくと思います。
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「学び」と「遊び」というのが、非常によく似た世界で、わたしたちはどっちをやっていけばいいのか…枠組みと自由にやらせたい気持ちで葛藤します。子どもたちに任せる、考えてやっていくような活動を求めたいな、と思います。
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教室の環境を子どもたちで作らせる発想がこれまで自分自身に全くありませんでした。衝撃でした。自分がもし子どもだったら最高に楽しいなって思います。
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今日、他校の先生にもお会いして、色々お話できてよかったです。日々のいろんなことに追われていますが、町内の学校同士の連携ももっともっと増やしたいし、もっともっと遊びこんだり、子どもに自信をもたせたりしたいと思いました。
ごりさんのお話を受けて「もう少し聞いてみたい」と質問を投げかけたのは、森山円香さん(神山つなぐ公社・ひとづくり担当)。
森山さんからごりさんへ。
(森山)動画をたくさん見せていただきましたが、その中に子どもがファシリテーターの役割を担っている場面がありました。子どもがファシリテーターになる時にどういうことを大事にしてほしいと子どもに伝えているのか、少しエッセンスをいただけたらと思います。
尊敬しているファシリテーター 青木将幸さんに学校に来てもらったことがあります。会議ってこんなに変わるんだと思った時に、青木さんが「ごりさん、民主主義を大事にしている国はね、子ども時代からファシリテーターの練習をしてるんだよ。自分たちで決める練習は、しなきゃ絶対できるようにならないから、子ども時代からずっとやっているんだよね」って。それをそのまま子どもに話します。
あと、ファシリテーションのスキルも一緒に練習します。例えば、オープンクエスチョンで「もう少し詳しく教えて」「何かエピソードある?」というように、相手が話したいことを聞く練習等をします。
次は、ホワイトボードに意見をそのまま書く練習をします。楽しい話題から始めてどんどんリアルなテーマに変えていきます。国語の授業「話すこと・聞くこと」で1ヶ月くらい練習すると身体化してくるので、話し手が勝手に深めて話せるようになってきます。話し手が変わってくるから、聞き手は前に出てウンウンって書くだけになってくる。ここはけっこう丁寧にやっています。
(森山)何年生頃からできますか?
3年生以上なら確実にできます。多分、2年生とか1年生でもその学年に応じた方法で、幼稚園では「書く」ことをしなくても口頭で聞くことはできるようになってきます。基本的によい学びは年齢を問わないって思っているので、何歳だからできるとはあまり考えません。
(森山)今、幼稚園、小学校、中学校までの混在校を作られていますよね。まさにこの場(先生みんなでごはん)ってそれに近いんじゃないかと思っています。ごりさんが準備されている軽井沢風越学園で、幼稚園から中学校までの先生たちがどのように話し合いを行っていて、どう連携しているのか、様子を聞かせていただけたら。
幼小中高校の連携を考える時に一番大事なのは「子どもの育ち」から考えていくことだと思います。幼稚園年長から、年長長、年長長長みたいに幼稚園から設計し直していって、小学校のやり方を考え直す。その延長として中学校を考え直す、としていくのが一つ。
もう一つのキーワードは異年齢だと思ってます。小規模であればあるほど、異年齢っていうのは “強み” になるはず。中学生と小学生とか、高校生と小学生とか、高校生と幼児とか、年齢が離れれば離れるほど、面白いことが起きるはず。その異年齢の可能性っていうのは、もっともっと試してみる必要があると思っています。大きく変わるのならそこだと思います。
(森山)異年齢の学びの良さをもう少し聞かせてください。
人が学ぶとき、いま一人でできないことを、誰か人の力を借りて明日できるようになるのが成長です。これまでは先生が「足場をかけてあげる」のがデフォルトだったけれど、異年齢でお互いの足場のかけ合いがたくさん起きるはずです、先生一人でがんばらなくても。
もう一つ、異年齢は「ケアし合う」という関係性を育みやすい。その感覚は、体験を通してしか味わえないことです。社会はそういうふうにはできていないのに、学校文化だけが同年齢の同質集団です。同質集団は比較の視線が入りますが、異年齢になると、違うことが当たり前になるので、比較がぐっと弱くなります。当たり前ですが、人の成長のスピードって、人によって違います。歴史的に見れば、この100年くらいですよ。同年齢で学年を組んで学ぶようになったのって。だからぜひ異年齢を神山で!いいと思います。大人ってそういう(異年齢の)なかで学んでいますよね。同年齢の会社とか気持ち悪いじゃないですか(笑)。
(森山)ありがとうございました。ほんと、神山にいると色んな世代の人が入り混じっていて、年齢も経験も異なる人たちでお互いに学び合う日々です。子どもたちにもそういう環境が当たり前になっていくといいなーって思いました。
<記念撮影>はい、すだちー!
(ごりさん)今日はありがとうございました。今日、こんなご縁いただいて、どんな話しようかずっと迷っていて、今日4時半くらいにここに着いて、一から作り直しました。今思っていること、けっこう思い切って言えたなーと思っています。ずっと神山来たかったので、また来ます。いやほんとに、貴重な時間、ありがとうございました。
神先さん(WEEK 料理人)のお料理と、笹川(Food Hub Project かまパン)の焼くスペシャルパン。神山町産の野菜も含めて、おいしいごはんを用意してくださった作り手のみなさんにも感謝です。
わたしは、神山滞在中のごりさんとたっぷりお話しさせていただき(超贅沢な時間)、いつもよりはっきり、くっきりと自分の「やっていきたいこと」が見えるようになった感じがしています。
神山の保育所から高校までが「ゆるやかにつながる」ってどういうことだろう。
「20年後の社会」はどんな社会になるといいのだろう?
その出発点が、誰かではなく自分だとしたら??
先生方はもちろん、子どもたちや地域の方々と、これからも「いっしょに」考えていけるといいなぁと思います。
岩瀬直樹さん近著
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インクルーシブ教育を通常学級で実践するってどういうこと? 青山新吾・岩瀬直樹 学事出版(2019)
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クリエイティブ・ラーニング―創造社会の学びと教育 井庭 崇【編著】鈴木 寛・岩瀬 直樹・今井 むつみ・市川 力【著】(2019)
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シンプルな方法で学校は変わる 自分たちに合ったやり方を見つけて学校に変化を起こそう 吉田新一郎・岩瀬直樹 みくに出版(2019)
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子どもが学ぶ、先生も学ぶ みんなのきょうしつ 岩瀬直樹・中川綾 学事出版(2015)
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せんせいのつくり方 岩瀬直樹・寺中祥吾・プロジェクトアドベンチャージャパン 旬報社(2014)
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クラスづくりの極意「最高のチーム」になる! 岩瀬直樹 農山漁村文化協会(2011)
他、多数
樋口 明日香 (Food Hub Project 食育係)
食育係/パン先生。徳島市出身。 神奈川県で小学校教員として働いたあと2016年に徳島に戻り、フードハブに入社。現在は、保育園児から高校生までの子どもたちの食と農の取り組みにかかわっている。一番好きな食べものは、みそ汁。
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