徳島 神山町とドアーズで考える 、山あいの町の心地よい暮らし|開催レポート

神山日記帳2019年10月7日

藤本 彩(イン神山編集部)

投稿者:藤本 彩(イン神山編集部)

2019年9月27日(金)から、大阪・南船場にある「DOORS HOUSE(ドアーズハウス)」で「“神山ええもん展” 〜ドアーズが選ぶ徳島 神山町のいいもの〜」展が始まりました。

URBAN RESEARCH DOORS(アーバンリサーチ ドアーズ)」の方々が、神山滞在中に出会った「住むこと」「食べること」「地域に根づいた暮らしをすること」。 神山町のええもん(いいもの)に直接触れ、商品だけでなく取り組みも紹介する企画展です。

アーバンリサーチ ドアーズは、「今の暮らしをここちよく」という言葉を元に、作り手の思いが感じられる丁寧な仕事を大切に、洋服や暮らしに関わるものなどを全国で展開されているブランドです。ドアーズハウスは、日本の地域を取りあげるなど、様々なテーマで催しが開催されてきた場所(明治時代の石蔵を解体した際に出た大谷石を益子から大阪まで運び、壁面に再活用されている空間も素敵です)。

 
普段は神山で出会える、もの・こと・ひとが、ドアーズの方々による目線で紹介されています。大阪で神山に出会う機会となっていて、神山に関心をお持ちの方、この企画展で神山のことを初めて知ったという方も。

今回は、初日の夜に行われた、トークイベント「徳島 神山町とドアーズで考える 、山あいの町の心地よい暮らし」の様子をレポートします。

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会場の受付では、神山の「すだち」をたっぷり絞ったドリンクや、KAMIYAMA BEERも登場!手渡されたカップの中で揺れる、すだちの輪切りが爽やか。神山に関連した配布物も、みなさん手にとってくださっていました。

2019年9月27日(金)夜に開催したトークイベントのテーマは「徳島 神山町とドアーズで考える 、山あいの町の心地よい暮らし」。話し手は、近藤奈央さん(曲げわっぱ作家・フードフォトグラファー)、本橋大輔さん(プログラマー)、馬場達郎さん(神山町役場職員)の3人。

大家孝文さん(URBAN RESEARCH DOORS)と高田友美さん(神山つなぐ公社)を聞き手に、約1時間30分ほど話が交わされた当日のやりとりの中から、抜粋してお届けします。

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高田 今日は、神山出身の人もいれば、移り住んだ視点、外に出て見ている視点を交えながら話していきたいと思います。今回のテーマは「山あいの町の心地よい暮らし」。その「心地よい暮らし」は、ドアーズのコンセプトから出てきました。そのあたりの思いを聞かせてください。

大家 ブランドも各店舗のスタッフも「今の暮らしをここちよく」という言葉を元に考えながら日々います。食べること、住むことであったり、自分たちが求める暮らしについて日々模索する中で、アーバンリサーチドアーズとして、神山町でみなさんがやっている取り組みに興味を持ったり、自分が神山出身であることもあって、里帰りする度に面白そうだなと 。暮らしの中で抱えるストレスじゃなく満足感を踏まえて、地方での暮らしにブランドとしても、個人的にも興味があるので、一つのブランドとしての広がりを目指していけたらと思っています。

馬場 僕は神山の中学校を卒業後、徳島市内の高校に進学しました。これは神山町の子どもとしては一般的で。その後は、大学で大阪に行ってお世話になりました。今回、こんなに素敵な場所で話させてもらうなんて夢にも思ってなかったです。

神山町役場では、地方創生の担当として「神山つなぐ公社」の皆さんと一緒に協働でプロジェクトに取り組んでいます。「山あいの暮らし」ということで、住まいの環境づくりの取り組み「大埜地の集合住宅」の話をしたいと思います。神山町には住みたい人がいても、家や土地が見つかりにくい状況がありました。

そこで、20世帯が入居できるような建物を、神山にある木材をいかし、町内の大工さんと一緒につくっています。「よく、なぜ一気に住宅をつくらないの?」と聞かれるんですが、全部を一気につくろうとすると工事の規模が大きくなりすぎて、まちの中で・まちの資源でつくることが難しくなってしまいます。単に家をつくろうということではなく、つくる過程で地域の課題も解決するような多義的な取り組みになるよう考えていて。

地域の景観に対して、大きな建物を建てて負荷をかけるのではなく無理のないものでという考えもあって。授業の一環で神山の高校生と一緒に生垣をつくる、小学生に大工さんの技術を伝えたりとか、そういう機会もつくってきました。

この敷地には入居者以外に、いろんな人の往来があるように、鮎喰川沿いに「鮎喰川コモン」という共有空間を設けようとしています。「この場所がどうなったらいいだろう?」と、まちの中で話し合いながら。将来、住み継がれるために自治を考えるなど、まわりの地域の方とも交流を深めながら少しづつ。子どもたちが育つ生育環境がより豊かになり、人々のつながりが増えて、新しい関係や活動が生まれていくことを期待しています。

−馬場さんからは、神山町の地域情報・人口規模感をはじめ、NPO法人グリーンバレー、KAIR(神山アーティスト・イン・レジデンス)、サテライトオフィス、多様な働き方、地域のお店紹介、神山の教育環境や農業、各プロジェクトの話が語られました。

近藤 私も中学校まで神山で、高校からは市内という馬場さんと一緒な感じです。6年前に東京からUターンで帰ってきまして、今はフォトグラファーをしつつ曲げわっぱをつくっています。

私が子どもの時には、とにかく今のようにネット環境もないし、「学校」と「家」しかないみたいな。都会だったら寄り道したいとか、習い事に行ったりっていう”サードプレイス的なもの”が子どもにもありえると思うんですけど。私はそうじゃなくて、正直なことを言うとすごいつまらなかった。子どもの頃は、いいものは大阪にあって、もっといいものは東京にあると思いながら過ごしていたんですね。

高田 それは、よくある山あいの町に住んでいる子どものイメージかも?

近藤 そうかもしれない。私は本を読んだりすることが好きで。でも神山には本屋もないし、学校の図書室の本もだいたい似たようなもので。外に行けば何かあると思って、とにかく出たかった。じゃあ、なんで帰ってきたのかというと、大学を卒業して、就職して、結婚して、主人の仕事の都合で東京に住んだりしまして、その間に東日本大震災があって。

帰ってきたのは、その直後というわけでないんですけど。停電とか、水を買うのにもスーパーで並ぶ経験をして。人はいつか突然、死ぬんだなっていう…。当たり前なんですけど、そういうことに気づいて。当時は会社に勤めて、めちゃくちゃ忙しくて「この生活のままでいいかな?」と思っていた時に地震があって。その頃、普通にメディアで神山町を見るようになって、「あれ、子どもの頃はつまんなかったけど、何かみんな楽しそう」と思って。

東京にいた時から、お料理を作って買った曲げわっぱに詰めて写真を撮って、自分のブログに載っけてたんですけど、写真+料理が楽しいなと思っていただけでした。で、なんだかんだで神山に帰ってくると、杉だらけなんです。

曲げわっぱは、杉でできているので「曲げわっぱ作れるんちゃうん?」と思って。そこが神山町の面白いところで、「まちを将来世代につなぐプロジェクト」などで、いろんな世代のいろんなお仕事の人と話す時に「神山町の杉でこんなん作ってみたいんですけど」って言っていたら「面白いんじゃない」って言われて。木材や板とかもすぐに持ってくれたり。困っているとか、こんな機会がいるとか、いろいろ言っていたら「この人に会いに行くといいんじゃない」と教えてもらって。

高田 すぐつながっていく感じ。この曲げわっぱは、4年前には実物がなかったんですよね。ブログ「曲げわっぱな日々」をやっていますというところから、ご自分でつくれるようになって。

近藤 まだ実物はなかったですね。やり方がわからないところから始めて教わって。いまはもう自分で作れるところまできているし、自分で材料を取りに行っています。

「杉に見守られながら、曲げわっぱをつくっているって最高!」と思っていて。地元の自然のものだけを使って、伝統の作り方で物と向き合う。しかも素材から自分で調達できたりとか、そこら辺に生えてたもので。

小学校時代の「つまらないな」と思っていた場所としては全く一緒なんですけど、でもやっぱり自分が「心地いいな」とか、「好きだな」っていうものとか、人と出会うことになって。同じまちでも、こんなに幸せな時間と活動ができるんだっていうのがあります。

本橋 僕は埼玉県出身で、徳島市内で仕事をしていたんですけど、7年前に気軽な感じで神山町に引っ越しました。ちょっとしたきっかけで神山を知って、楽しそうだからみたいな。テレビで面白そうなことをやってる会社が、東京から徳島に来てるらしいって見てたんですけど。

高田 そんな感じだったんですね。

本橋 その半年後にはもう、その会社に就職していました(笑)。お誘いいただいたり気軽に仕事をしていると、だんだん遊びと仕事の区別がつかなくなって。いまは主に「ダンクソフト」「Kamiyama  Makerspace(神山メーカースペース)」「CoderDojo Kamiyama (コーダー道場神山)」の3つの仕事をしてます。


ひとつは、プログラマーとしてソフトウェアをつくっています。プログラマーとしての仕事は、いろんな世の中にある便利なプログラミングを組み合わせて「こういう仕事に使うと楽になりますよ」みたいなのを紹介しています。

神山メーカースペースでは、3Dプリンタや、レーザーカッターなどのデジタル工作機械をつかって、ものづくりをしています。「アナログとデジタルの融合でものづくりをしよう」というのが我々がやっていることです。

近藤さんも、曲げわっぱの裏側を見ると名前が入ってるんですが、名前を入れるのにレーザーカッターで刻印しています。パソコンを使ってものづくりをすると、使い始めると便利であれもこれもとなるんですが、なかなかそこまで手を出せない。それはなぜかと考えた時に、みんなパソコンに慣れてないんじゃないかと。

そこで始めたコーダー道場は、世界的に広まっている参加費無料の子ども向けプログラミングクラブ。子ども向けのプログラミングの教材がたくさんあるので、こういうことをやると楽しいよという紹介をしています。ゲームを作ってみたい子、3Dプリンタでおもちゃをつくってみたい子、パソコンを思い切りさわってみたい子も。

ほかにも、ドローンを使った教室とかね。いま暮らしているのは、大埜地の集合住宅なんですが、ドローンで撮影した写真を見ると、左側に鮎喰川という綺麗な川が流れていて。今年の夏なんかは子どもを連れて遊んでいました。

高田 神山の中では、ITやプログラミングの話はよくあることなんですが、普通の「山あいの暮らし」では聞かないところにも入っていたのかなと思います。先ほど馬場さんからも「神山町でどんなことに関わっている?」という質問がありましたけど。何年か前に「作り手の交流が定期的にあるような集まりがあると、どんなことが起きるんだう」と近藤さんが言っていたような。

近藤 そうですね。近所だし世間話はするし仲はいいけど、お互いものづくりの職人として話す場ってなかったんですよ。そういう時に「手でつくる教室」っていう、神山町に住みながらつくることを仕事にしている靴職人さん、染物職人さん、服をつくれる人とかが集まって。教室の先生役として教室を開くだけでなく、もっと深い話ができたり、グループとして別の動きが生まれたりとか。人との縁というかつながりというか、それはすごく感じています。

高田 神山の作り手さんたちは、ドアーズハウスで開催中の「神山ええもん展」にも参加されていますよね。先ほど本橋さんから、神山の集合住宅に暮らしていることを紹介いただきましたが、住んでみてどうですか?

本橋 面白いですよ。自分で関わることができるのは、なかなかない体験だなと。これまで住んでいたところでは、お隣さんと会うこともほとんどないし、大家さんと話すこともなかった。何が面白いって、僕が住んでいる家を建ててくれた人と知り合いになる。その家を建てた木材を山から切り出した人や建材にした人も知っている。そういう状況で、自分も関わりながら家やコミュニティをつくっていける。僕は小学校でドローンの授業をしているんですが、教育にすら関わることができる。神山町にいると全てが手の届く範囲であって、力を発揮しようと思えばいくらでも発揮する場があります。子どもたちにとっても面白い環境だと思います。

高田 大家さんのお兄さんには、神山町内の民家改修などで家を直していただいたりと大活躍なんですが、そんな家族の働きぶりを大阪から見ていてどんな感じですか?

大家 実は、近藤さん、馬場くん、もちろん兄とも同じ学校で青春時代を過ごしていて。兄は神山にとどまり、僕はどんどん場所を変えて、今は大阪で家族とは全く違う仕事をしているんですけど不思議な縁があって。

お互いの仕事のことは間接的には見ているけど、仕事の内容とか細部の部分は話さない。兄や父が働く姿が好きだったので、帰れば仕事場を見に行って古材を持って帰ったりとか。その兄がしている仕事とか、父の仕事に口はつっこまないけど、見て忙しそうでよかったみたいなのは感じるんですけど。

兄と自分が、何かこう全く違う人生を歩んでいってつながる。それは近藤さんと馬場さんも同じことですけど、この場でつながっていて。みなさんの話にもありましたが、コミュニティの中に、自分もこうやって関わっていけるということ。まとめると、一番思ったのは「神山で楽しそうに仕事をしているな、うちの兄」みたいな。そういう自分が見る風景っていうのは帰りたくなる町であるし、 自分自身も今は神山を離れて、このアーバンリサーチドアーズでやりたいこともあります。何か新しい、自分たちのブランドとして関わっていきたいなって思いますね。

馬場 みなさんから紹介いただいたように、神山っていろんな人がいて普段から距離が近いというか。僕はいまの子どもたちが本当にうらやましくて。これからも素敵なまちが続くといいなと思っています。

本橋 神山町の話をさせてもらったんですけど、100%は伝わらないというか(笑)。興味を持ってくださった方は、もしよかったら一度、神山に遊びにきてください。

近藤 わたしは神山に生まれ育って、ネガティブなことも言いましたけど…。神山に帰ってきて、このまちに生まれてよかったなと感謝しています。わたしは、おばあちゃんになるまで曲げわっぱをつくるのが目標です。

以上、開催レポートをお届けしました。トークイベントが終わった後も、しばらく会場に残ってゆっくりと話す姿が見られました。ご参加いただいたみなさん、関心を持ってくださった方々、ドアーズのみなさんもありがとうございました。

次回は、10月12日(土)に「山あいの町でパンを焼く」を開催予定です。「地産地食 | Farm Local, Eat Local 」をモットーにしているフードハブ・プロジェクトのパン職人、農業担当、それぞれの視点からお話を聞きます。

話し手:白桃 薫 (Food Hub Project.inc 農業長)、山田友美(Food Hub Project.inc おやつ係)
聞き手:西村佳哲(神山つなぐ公社)

地域にあった農業のやり方を考えて実践していくこと、そしてそこで採れた農作物をふんだんに使ってパンを焼くことについて関心のある方、どうぞお越しください。

●詳細は下記をご覧ください
http://www.urdoors.com/shop/27554/

10月12日(土) 13:00〜17:00までの間は、神山の里山みらいの皆さんの協力により、「すだちのつかみ取り」もあります!*なくなり次第終了

同日、ドアーズ近くの難波神社では、「秋の恵みと、ぐりぐりマルシェ」が開催されます。こちらは10時から。ぜひ、あわせてお楽しみください。「神山ええもん展」のことも紹介してくださっていて嬉しいです(ありがとうございます!)。

引き続き「神山ええもん展」もお楽しみください。

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“神山ええもん展” 〜ドアーズが選ぶ徳島 神山町のいいもの〜
期間:2019年9月27日(金)〜10月15日(火)
店舗:DOORS HOUSE (南船場店併設)
住所:〒541-0059 大阪市中央区博労町4-4-4
TEL/FAX:06-6241-2061
営業時間:11:00~20:00
*カフェ営業時間:11:30〜20:00
定休日:不定休

●詳細は下記をご覧ください
http://www.urdoors.com/shop/27554/

藤本 彩(イン神山編集部)

藤本 彩(イン神山編集部)

神山つなぐ公社・つたえる担当。「イン神山」編集部。好物は、かまパンのチョコローフ、スキーランドのアメゴ定食。 最近は石積みが気になっています。

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