前に小学校で教えながら、ある料理教室で樋口さんが考えていたこと

なんでも2021年8月15日

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投稿者:西村 佳哲

「神山で働く」でスタッフ求人を始めた、神山のあたらしいプロジェクト「食農教育NPO」(仮称)。その中心人物・樋口明日香さんと交わしたインタビューから、求人記事(8/15公開)に掲載しきれなかった「小学校で教えていた頃」の話を、日記帳に転載します。

彼女が6年前徳島に戻って来る前。神奈川の小学校で十数年教えていた、その頃を振り返って聞かせてくれた話。
 

樋口 小学校で教えながら10年ほど前、少し体調を崩した時期があったんです。特定のものが食べられなくなって。

同僚がいろいろ差し入れしてくれてお世話になったけど、そのとき世間一般で言われる〝からだにいいもの〟を食べたからって元気になるわけじゃないんだなって。やっぱり働き方とセットだし、余裕のなさや、精神的なことも絡んで、健康って崩れちゃうんだなって体感して。

当時はお肉が食べられなくなったので、肉を使わない料理を美味しくできるようになりたい、と思って飛び込んだのが「白崎茶会」という料理教室でした。


解説:「白崎茶会」は、料理研究家の白崎裕子さんが葉山で主宰しているオーガニック料理教室。『にっぽんのパンと畑のスープ なつかしくてあたらしい、白崎茶会のオーガニックレシピ』など著作多数。https://shirasakifukurou.jp/


樋口 そこに通いながら教わる中で、料理への認識が変わっていった。先生は、調味料やルウもオリジナルでつくっちゃう人で、私も「自分の食卓のものを全部自分でつくる」って目標を立てた。麺もパンもお菓子も焼けるようになろうって。

そうしているうちに、だんだんと学校給食に目が向くようになって。

それが視野に入ってきた。

樋口 同じ食べ物なのだけど、自分が料理教室に通いながら目指している食卓と、学校で子どもたちが食べる給食の違いが気になってきたんです。

白崎先生に教わってつくっているものは、全部説明が出来る。けど給食は「これ、どこのもの?」と訊かれてもわからないし、「なんでご飯に牛乳?」と訊かれても『なんでだろう』と思うし、納得感がなかった。

あの料理教室を通じて、あらためて気づいたのは、〝食べ物は社会と自分を繋ぐものだ〟ということ。なら、たとえば社会との繋がりが学校の給食で見えれば、教科の学びも深まるし、食が教材になるところまでいけるんじゃないか、というのはその頃から感じ始めていました。
でも一教員では…。自分のクラスの中のことはいろいろ出来る。けど、給食そのものを変えたり、仕入れ先を変えることは出来ない。

もうすこし自分の手の届く範囲で、食について話したり、学んでゆきたいなと思った。いろんなタイミングが重なって、一度先生の仕事を辞めたんです。


 

…そして徳島に戻ってきた頃、ちょうどフードハブ・プロジェクトが立ち上がり(2016)、メンバーに加わって食育を担当。学校の農作業体験をサポートしてゆくうちに、それを「食農」という言葉で語るようになり。いまNPOの設立に向かっている。

樋口さんの現在地点と仲間さがしは、「神山で働く」のインタビュー記事をご覧ください。

すべての子どもに農体験を|神山の新しいプロジェクト「食農教育NPO」が、立ち上げメンバーを募集
https://www.in-kamiyama.jp/recruitment/59794/

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西村 佳哲

にしむら よしあき/1964年 東京生まれ。リビングワールド代表。働き方研究家。武蔵野美術大学卒。つくる・書く・教える、大きく3つの領域で働く。元神山つなぐ公社 理事(2016〜21)。著書に『自分の仕事をつくる』(晶文社/ちくま文庫)、『ひとの居場所をつくる』(ちくま文庫)など。

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