【神山校 特別授業】フリースタイル・ライティング

学び2021年11月18日

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投稿者:森山 円香

 

いつまでも布団のなかでぬくぬくしていたい。そんな季節がまたやって来ました。

 

神山校3年生の課題研究が今年も進行中です。

この授業は、生徒が学校や地域で学んできたことや関心を持っていることから自分なりの課題(テーマ)を設定し、実践を通して学びを深めていくもので、いわば高校3年間の集大成です。

進路を意識したテーマもあれば、純粋な興味関心を追求するものもあります。学校の畑で育てた野菜や神山小麦を使った加工品づくり、木材を使ったものづくり、造園系の資格取得、など農業高校らしい取り組みもあれば、サバイバルスキルやダンススキルの習得といった変わり種も。(トップ写真参照)

幅の広さがこの授業の面白いところです。

4月から各自でテーマを設定して取り組んできました。11月からはまとめとして2000字程度の作文を書き上げ、1月の最終発表会に向けた準備に移ります。

 

4月の時点で「作文がイヤ」「2000字なんてムリ」といった悲鳴をちらほら耳にしてきました。

うーん、困ったなぁ・・・。

よし! それならば、書くことを楽しんでいる人に会ってみよう!

ということで、ライター・地域ジャーナリストの甲斐かおりさんにお越しいただきました。全国各地をめぐって見聞きしたことを様々な媒体に寄稿したり、本にまとめたりと、まさにその道のプロ。

書くことへの気持ちのハードルがちょっとでも下がるといいな…と願いながらの授業だったのですが、当日は我々の想像を大きく上回る光景が目の前に広がったんですよ。その様子をすこしお届けします。

 

 

「はじめに、みんなのいまの状態を知りたいのでアンケートとりまーす。手を上にあげてくださーい」

スッ(挙手)

「書くのが好き!得意!な人は手をそのまま真上に。これを100%として、気持ちが下がるほど手を下ろして。全然ムリ、超苦手!な人は手を真下に下ろして0%を表現してください」

「せーのっ」


ストンッ。

 

・・・はい、大丈夫です。想定の範囲内です。そのために甲斐さんに来てもらったんです。

「みんなが『書くのイヤだなー、苦手だなー』と思っている気持ち、よく分かります。私も『話すの苦手だなー』と思いながら、今ここに立っています」

甲斐さんの飾らない言葉に、じっと耳を傾けるみんな。

はじめに、自己紹介とあわせて甲斐さんが思うライターという仕事の面白さについて聞かせてもらいました。

甲斐さんは長崎で生まれ育ち、高校生の頃は田舎から出たくて仕方なかったそう。それが今では熊本の南阿蘇村という田んぼが一面に広がるような場所で暮らし、全国のいわゆる田舎をめぐっているのだから、人生何があるかわからないものですね。

「いろんな人に会いに行けて、自分が魅力的に感じることを社会に発信できるんだよ」「人と人をつなぎ、プロジェクトが生まれていくのが面白い」と甲斐さん。

 

そのまま実践編へ突入。まずは描写のワークから。見ていない人にも伝わるように文章にしてみる、というものです。ちなみに写真はどちらも神山校で撮影したもの。

みんなの手がスラスラッと動き始めます。

「書いてみたものを、読んでみてくれる人いますか?」

「はい! 僕がいきましょう!」

誰に言われるでもなく、前に出てきて仁王立ちで文章を読み上げる強者。いいキャラしてるよ、ほんと。

彼に続いて、何人かの生徒が少しはにかみつつ、書いたことを発表していきます。

生徒の読み上げる文章を聞いて、「すごくイメージ伝わってくる!」「小説の書き出しのようだね」とコメントを返す甲斐さん。

クラスメイトの書く文章に触発され、場の温度が高まっていきます。

お題は続きます。

「最近の悲しかったこと・うれしかったこと・起こったことをどれか選んで書いてみよう。ただし、うれしかったことをそのまま『うれしかったです』と書くのでなく、違う言葉で表現してみましょう」

「今朝の出来事を、ここまで練習した『描写』『感情の表現』を意識しながら書いてみよう」

書くのは苦手、と言っていた子たちも、ペンを握る手に力が入ります。

 

2時間はあっという間に過ぎていきました。

 

いやはや、驚きました。みんな、書けてるんですよ。自分のなかに眠るものを掘り出すのを楽しんでいる余裕さえありました。あれだけ「イヤだー」と言っていたのは何だったのだ!

何かと比べていたのかな。私も「絵を描くのは苦手です」とか言っちゃうもんな。

課題研究のまとめを「レポート」ではなく「作文」にしているのは、ルールに則った論理的な文章の書き方を身につけるよりも(それもめちゃ大事だけど)、自分の考えや感情を言葉にして表現する練習を重ねてほしいから。その経験はきっと、自分と付き合っていくことや、社会とつながるときの助けになると思うんです。

 

甲斐さん、ありがとうございました。フリースタイルな作文集を、どうぞお楽しみに。

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森山 円香

岡山出身。 2016年4月〜2022年5月まで、神山つなぐ公社でひとづくり分野を担当。NPO法人まちの食農教育の理事をしています。 このまちに来て、石を積めるようになりました。(でもまだまだ)

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