「大人としゃべり場」の開催報告

なんでも2022年5月27日

投稿者:梅田 學

(神山つなぐ公社 ひとづくり担当)

「自分の気持ちに素直になって話せました」

青春真っ只中、神山中学3年生と、まちの大人たちとが生き方を伝え合う場「大人としゃべり場」。5月9日(月)、町農村環境改善センターで開かれ、中学生20人、大人たち約30人が参加しました。

会場に入る前と、入った後では、皆さんの表情が大きく違いました。2時間という長丁場でしたが、「終わった後は、(感じる)空気が明るくなりました」という中学生の感想に、参加者の誰もがうなづいたワークショップ。


せっかくなので、その一部始終をドキュメント形式でレポートしてみますね。

<開始>


中学生にとっては5時間目となる13時すぎ。センター3階の大会議室は、パイプ椅子が二重円になって並べられています。中学校から歩いて会場にきた生徒は、支持されるまま、内側、大人は外側に座り、向き合います。


「一体、何をするんだろう?」という顔がたくさん。


そこへ躍り出たのが、大人としゃべり場の発案者であり、全国各地で同様のワークショップを開いている山口覚さん(慶應大学大学院特任教授、津屋崎ブランチLLP代表)。みんなの戸惑いを待ってましたと言わんばかりに、ニコニコしながら話します。


「今日はとにかく肩書を外して、年齢も外していただいて。おしゃべりを楽しんでいってください」


「年齢が違っても、意見が違っても、みんなが何故か楽しく話ができると言うことを考えたら、この形になりました」


この二重円は、どうやら仕掛けがありそうです。

福岡で山口さんが考案した、地域での対話を生みだす「トークフォークダンス」という手法。今や全国各地で開かれてはいますが、神山には初上陸です。山口さんは最初の注意事項を丁寧に話します。


「大人へのお願いです。”中学生にしてはすごいね”といった評価はしないでください」

 

おやおやと、少々、会場はざわついたような空気。「中学生にしてはすごいね」って褒め言葉じゃないの?もしかして、この褒め言葉は、上から目線の「評価」なの?つい口から出てしまいそうな言葉だと感じた大人たちは、少なからずいたようです。

そして。
中学生の心へ静かに響いた様子だったのが、山口さんの「中学生へのお願い」。


「どうか、大人が求める答えを考えずに、自分の感じたことを話してください」

「ここに来るまではどういうことを話したらいいのか迷っていた。相手が求める答えを話さないといけないと、考えながらきました」という中学生もいました。

 

この山口さんの言葉が、どれだけ彼らの肩の荷をおろしてくれたことでしょうか。同時に、実は大人も、ちょっとだけ肩の荷がおりたはずです。

 

「大人らしく賢いことを伝えなければって思ってきたけれど、もしかしてそんなこと言わなくてもいいかも?」って。

 

「1分間の話は、2人の間だけの秘密です。他の人に話すときは、ご本人の許可をもらってからにしてくださいね」

段々と大人も中学生も、心の鎧をおろすような空気が生まれ始めました。

 

<各自1分のトークタイム>

 

そしていよいよ始まった、各自1分のおしゃべりの場。

1つの質問で、1分間、目の前の相手と話します。その後は、内側、外側それぞれのタイミングで1つずつ左に席をずれます。だからほとんどいつも、違う相手と新しい質問について回答しあうことになります。
 

「最近の出来事で、うれしかったこと、あるいは悲しかったことはなんですか?」


「あなたの好きな本や映画、漫画は何ですか?」

たくさん話すにつれて、たくさん、相手の人の言葉を聞くにつれて、
段々と、緊張が緩みます。


「自分の大切な友達のことを1人、語ってください。それは誰で、なぜですか?」


こんな大切な質問もありました。初対面の人が多いのに、大人も、中学生も真剣。目が潤む人もいます。本気で話しているから、言葉に詰まることも。それでも、お互いに待ちます。
 

大人だって、中学生だって、関係ない。

そこには、一生懸命に生きる、人間の関係が生まれているようです。

 

次第に、前のめりになって熱く語っている中学生が増えてきました。

大人も「今のはここだけの内緒にしておいて」と思わず中学生に言ってしまうほど、素の自分に返って心のうちを分け合っていました。


「10年後の神山ってどうなっていると思う?」。

目の前の2人で考え合う時間もありました。

「神山まるごと高専ができていて、ちょっと人口が増えて、ちょっとお店が増えていたら、いいと思う」という共通の未来像を話してくれたチームもありました。

最初は、緊張の薄布に覆われたような空気だった大会議室が、最後は、燦々とした太陽に直接照らされているかのような、明るい空気になっています。
 

実際、ある中学生は「終わった後は、会場の空気が明るくなっていました」と全体に向けて発表してくれました。「すごく良かったので、中学校の1〜3年のオリエンテーションでやれば楽しいと思いました」という提案も。


「自分の気持ちに素直になって話せてよかったと思いました」と一皮向けた表情の中学生もいて、大人たちは、心からの笑顔で喜びながら彼らの発表を聞きました。

 

「10年後に、今度は自分が大人の側に座って、その時の中学生と話をしたい」と複数の中学生が語ってくれていました。

中学3年生にとっても、多様な大人の価値観、生き方にふれ、自分の思いを語る初体験の機会でした。色々な人がいて、どの人の思いにも、正解も不正解もない。そんなことを体験できた彼らが、どんな風に生き方や進路を考えていくか、楽しみですね。

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<編集後記>

実は、「まちの大人たち」の中には、後藤正和町長も、高橋博義教育長もこっそり入っていたんですよ。最後にお二人の感想を聞いてみました。


高橋教育長は「2時間があっという間に過ぎて、中学生全員と話したかったなとも感じました。最初は、大人との会話を恐れる子がいるかなと危惧していたけれど、私と話した中学生はみんなしっかりしていた。私もいい経験でしたが、彼らも良い経験になったのではないでしょうか」と話しておられました。

 

後藤町長は、「もともと神山町は、多世代での会話が多かった町。コロナで交流が途絶えてはいるが、こういう会をもっと開いて行けたらいいですね」。
 

お二人とも充実した笑顔で会場を去っていきました。


中学生と大人という場だけでなく、小学生と先生や保護者、地域の人同士、色々な組み合わせができそうですね。

梅田 學 (神山つなぐ公社 ひとづくり担当)

2018年6月に神山町に移住。ひとづくり担当として、神山校、神山中学校の生徒が地域で学ぶため授業をコーディネートしています。 その他、毎月一回、孫の手プロジェクトで、神山校の有志のメンバーで高齢者の庭の剪定をしています。 休日は、2年前から始めたサーフィンを楽しんでいます。徳島の小松海岸、高知の生見海岸に出没中。

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