「”働く”と”暮らす”、そして”好き”の未来を見つめた中学生町内バスツアー  ーー神山中学校の立志式とキャリア教育②」<前編>

学び2022年10月19日

投稿者:梅田 學

(神山つなぐ公社 ひとづくり担当)

 

神山中学校伝統の「立志式」を前に、今年度2年生の男子生徒ばかり8人も、一年をかけて「将来の夢」を模索しています。
8人は今、まちの多様な大人たちの考えに触れながら、「ありのまま」の自分の夢を模索し、それを言葉にしていく大事な過程を歩んでいます。

今回は、そのレポート3回目です。6月開催ですが、記事のアップが遅くなってすみません…
 

8人は、6月、町民町内バスツアーの制度を利用して、町内を一巡りしました。5つの職場を訪れ、計11人のまちの大人たちからお話を伺いました。色々な仕事、色々な生き方、そして、色々な「夢の叶え方」に触れた1日。どうやら、彼らの仕事観、人生観に変化をもたらしたようです。

<真剣に大人の話を聞く、2年生たち。「仕事観」が変わった1日になったようです>
 

「好きなことは、人生と共に変わってもいい」

「誰にも負けないほど、”好きなこと”を”好き”でいられたら、強くなれる」

「単純作業と見られがちな仕事も、ゲームのように楽しむことができる」

「始めた時は、好きな仕事だと感じない仕事でも、次第に魅力を発見していける」


たくさんの大人が人生をかけて体感している本気のメッセージをもらった8人です。
今回は、その様子と8人の感想を含めて、前編・後編に分けてレポートします。

バスツアー当日の6月16日は、快晴の一日でした。


「自分の知らない大人に会う」。それだけで、彼らにとっては新鮮な経験です。普段、彼らが出会う大人たちは主に、家族や学校の先生たちが主です。まずは、バス出発前、緊張を緩ませるために屋外で意気込みを叫びました。「楽しむぞー!」「唐揚げ食べたい〜!」。

<グランドに叫んだ8人。さぁ、今からバスに乗って出発です>

青春の声をグランドに響かせて、ふぅっと一息つきながら、笑顔でバスに乗り込みます。さぁ、出発です。

 

最初の訪問場所は、「神山椎茸」。クネクネと曲がりくねった山道を登った先にあったのは、「日本一の椎茸生産」を支える農園でした。

 

迎えてくださったのは、神山椎茸生産販売協同組合理事長、神原紀仁さんと、副社長の糸山達哉さん。お二人から、「椎茸の生産量は、17年連続、徳島県が1位」と聞いて、驚く8人。そして、神山が、その生産量を支え、ニューヨークやシンガポールなどの海外でも売られていることを聞き、また目を丸くしていました。より美味しい椎茸が育つ環境の研究を科学的データを取りながら行い、、安定的な生産に生かしていることなど、農業と科学、ITの関係を考えるきっかけももらいました。
 

神原さんからは、夢を叶えるアドバイスも。「新しい事業で失敗しない方法をお伝えしますね。これは、とにかく、準備をすることです。99%の準備をしたら、始めた時には、怖くなくなる。そして、成功します」。<夢についても、熱く語ってくださった神原さん>

<椎茸を手に、海外営業や農園の経営など幅広く教えてくださった糸山さん>
 

子ども時代から生き物の「形」がどう形成されるのか興味があった糸山さんは、生物学の研究を経て、同社へ。神山椎茸の菌床の研究から経営・海外営業などさまざまな役割をこなしています。糸山さんからは、「僕は『夢は変わっていくもんだな』ということを意識しています。出会う人、出会う学問によって変わっていく。そして、仕事を楽しむかどうかは、自分次第」と励ましてもらいました。

<後輩を前に仕事の喜びを伝える西崎さん>

 

生産の現場では、神山中学校出身の先輩、西崎友祐さんからも、菌床のブロックを作る仕事の工程を伺いました。「自分の作ったブロックから椎茸が上手く生えたら、いい仕事したなと嬉しく思えます」と後輩を前に照れながらもしっかりと教えてくれました。

<左から、宇山さん、糸山さん。日本一の椎茸生産を支える思いを伺いました>

 

椎茸を詰める過程のマネージャー、宇山真人さんからは「僕が仕事で大切にしていることは2つあります。1つ目は、”自分の頭で考えて、工夫していく”ということ。仕事は、8個の椎茸をパックに入れるというルールがあるだけですが、と思うこともあるけれど、ここでやっていることは、徳島県が椎茸生産日本一になるここのシンプルなルールのなかで、どう効率的に結果が出せるか、考えながらゲームみたいに楽しんでいます」「2つ目は視野を広く見てみること。同じ作業をしているとしんどいな、とを支えていると思うと、やりがいが出てきます」。

宇山さんの言葉も、8人の心に響いたようです。宇山さんの目をしっかり見つめながら話を聞く生徒、一言も漏らさずメモをする生徒。興奮冷めやらぬなか、椎茸の農園を眺めて農園を後にしました。

さて次は、神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックスです。

<「働き方の作り方」のヒントも教えてくださった、樋口さん>

こちらでは、フード・ハブ・プロジェクトから「NPO法人 まちの食農教育」を立ち上げたばかりの代表理事、樋口明日香さんにお話を伺いました。「学校食」という新しい言葉を作った樋口さんたち。地域での農体験と、子どもたちの給食をつなげ、食を通じて社会や世界を知っていく学校食のプログラムを作っています。樋口さんは「色々なプログラムを新しく作っていくのは、とても楽しいです。試行錯誤しかない。私たちは、”自分たちでつくる”、”新しいことをつくる”ということに関心を持っています」と新しい事業立ち上げの楽しさについても語ってくれました。

一方で、樋口さんは、NPOを立ち上げる2年ほど前、休暇を増やして給料を減らす、これまでとは違った働き方を職場に交渉して実現したことも話してくれました。休暇中はひたすら農作業をしていたそう。「、新しい景色が見えてくる。自分から交渉したら働き方も変えられます。自分のコンディションを維持しながら、働き続ける体制を維持することは大切」という大事なメッセージを受け取った8人。


さらに、文部科学省からこのNPOで半年間、研修中の堂脇義音さんにも、お話を伺いました。「中学生の時から、日本の教育システムを変えたいと思っていて文部科学省に入省しました。国会対応の時は夜通し働くこともあって、正直きついなと思うこともあります」というお話も。それでも、「教育を良くしたいとの思いが私の働くエネルギー。今は、教育現場で、みなさんの活動の様子を見ることが力になっています」とも話してくれました。激務をこなす中でも、働くモチベーションやチャレンジ精神をもつことを大事にしているそう。堂脇さんの働き方や使命感も、8人にまた新たな気づきを与えてくれました。

<「国会対応で徹夜?」と、引率の大人の方が「大変そう」と反応。しかし、8人はピンと来たのか来ていないのか、淡々と受け止めていました>
 

梅田 學 (神山つなぐ公社 ひとづくり担当)

2018年6月に神山町に移住。ひとづくり担当として、神山校、神山中学校の生徒が地域で学ぶため授業をコーディネートしています。 その他、毎月一回、孫の手プロジェクトで、神山校の有志のメンバーで高齢者の庭の剪定をしています。 休日は、2年前から始めたサーフィンを楽しんでいます。徳島の小松海岸、高知の生見海岸に出没中。

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