「”働く”と”暮らす”、そして”好き”の未来を見つめた中学生町内バスツアー  ーー神山中学校の立志式とキャリア教育③」<後編>

学び2022年11月11日

投稿者:梅田 學

(神山つなぐ公社 ひとづくり担当)

神山中学校伝統の「立志式」を前に、「将来の夢」を模索中の2年生8人。町内町民バスツアーの制度を利用して、町内を巡った1日のリポート後編です。
 

さぁ、今度は、田んぼの真ん中にある、一戸建ての新築現場へ。施主さんの希望を一から聞いて作り上げていく、神山杉の素敵な注文住宅です。設計士で「その建築設計工房」の赤尾苑香さん、荒井工務店の荒井充洋さんからお話を伺いました。

実は荒井さんは、神山中学校出身。

赤尾さんからは、住む場所も、仕事も、自分の”好き”が根本にあり、軸のぶれない姿を学びました。「神山が好きで、神山から出ることをあまり考えなかった。だから事務所も神山でやっています」。何人かの生徒が持つ「高校から神山を出て、都会で働く」という価値観を爽やかに揺るがしてくれました。
 

「子どもの時から住宅のチラシの間取りを見るのが好きで、インテリアを学ぶ学校へ行きました。授業の中で、設計士という仕事の存在を知って、インテリアから建物全体を設計する方へ舵を切ったんです。今は、好きなことがそのまま仕事になっています。だから、寝る時間も忘れてやってしまいますね」と、周り道をしながらも好きな仕事に突き進む喜びも語ってくれました。

 

一方の荒井さんは「父が大工で、家族総出で小さな頃から大工になれと言われて育ちました。二十数年前の立志式でも、建築士や大工になると書いたように思います。実は、20代前半までは他の仕事がええなぁと思ったこともありました。でも、今は、やりがいも、面白さも増してきて楽しいですね。自分のためだけではなくて、周りの人が喜んでくれること、人のために何かできることが、やりがいになりますね」と教えてくれました。新井さんが身につけてこられた”やりがい”の定義。「好きじゃないかもしれない道」の中にも、ただ一筋に技を磨き、人に喜ばれるなかで自ら”好き”を育んでいく、そんな生き方もあることを8人も感じていました。

 

お二人から真っ直ぐな話を伺った8人。回り道をしながら、本当の”好き”を発見して追求する生き方、目の前の技を追求する中で”好き”を発見していく生き方、色々な生き方があることが分かってきました。

  

<施主さんの意向を聞きながら、建物の内部を工夫した点を説明する赤尾さん。2年生は一言も漏らすまいという勢いで、熱心にメモをとりながら聞いています。>

<箸作りの体験。荒井さんが鉋でさぁっと竹の棒を削ると、みるみるうちにお箸の形が完成します。一方、生徒がやると、なかなか時間がかかります。ものづくりの楽しみと、技術の積み重ねを体感した時間でした>

さぁ、盛りだくさんの午前中ですが、お腹はぺこぺこ。お昼の時間です。「めし処山びこ」では、生徒待望の唐揚げ定食が既に用意されていました。
山盛りの唐揚げを頬張り、「肉汁が溢れ出す!」と食レポする8人でしたが、食事の後、店長である谷真宏さんのお話が始まると、顔は、すぐに真剣に戻りました。
谷さんもやはり、神山中学校の先輩です。

大学で英語教諭の免許を取りながらも、アルバイトを通じて、料理の魅力を発見し、料理人としての道に進んだことを教えてもらいました。「包丁も握れないところから始まりました。大学を卒業するときに、僕は今自分がやりたいことは料理で、今、楽しいことを大事にしたいと思って料理の道へ進みました」。

谷さんは、最後に「大人ってな、やらなあかんこともあるけども、最終、自分がやりたいことをやったら、楽しいよ」という言葉で結んでくれました。大人は大変だと思い込んでいた8人は、「え、大人って楽しいの?」と目を丸くしていました。
 

そして、1日の最後の訪問先となったのは「株式会社ドリームジャック」です。大阪に本社を置き、昨年10月に寄居商店街にサテライトオフィスを設置したIT企業。説明してくださったのは、大阪から駆けつけてくれた社長の佐藤充さんです。本当は、外には出せないゲームの企画書まで、8人に大公開。スマホゲーム世代の8人は、興味津々で、画面を食い入るように見つめました。会社の売り上げは、実は大手コンビニや金融機関などの堅いシステム開発が支えているという経営のことも聞きながら、8人は「楽しい」「好き」「仕事」について、色々と考えを巡らせました。

「IT業界は進化が早くて、我々エンジニアも、ずっと学び続けなければいけない」「プログラマーは一人でやっているかというと違う。チームでやるので、優秀なプログラマーはめちゃめちゃコミュニケーション能力が高いんです。自分の考えを相手に伝える力があることが大事。会社でも、伝える力を伸ばす研修をしているくらいです」

 

子どもの頃からプログラミングが大好きで、好きを追求するうちにプログラマーとして起業していった経緯を教えていただきました。「プロのバスケットボール選手と会うことがありますが、彼らは異常にバスケットが好き。好きだから練習量が半端ない。だから強くなる。僕らプログラマーにも言えることですが、”そのことが好き”だということが一番、プロになる近道だと思います」と力強い言葉をもらいました。

サテライトオフィス社員の方からは、ウェブサイトのプログラミングの様子を少し体験させていただきました。プログラミング言語の文字を1文字、pink  からblueに変えるだけで、HTMLのウェブサイト上の丸い形の色が変わります。「コンピューターはバカなので、人間が教えてあげないといけない」という佐藤さんのお話にも8人は驚いたようです。


盛りだくさんで、高揚しながら学校に帰ったバスツアー。彼らが書いた感想文からは、1日に受けた学びがビシバシと伝わってきます。
実は、この感想文を読んで、私たち神山タイムの企画チームは、感動しました。1回目、2回目の授業で感じていた彼らの考えが、バスツアーでものすごく深まっていることを感じたからです。

中学校の許可を得て、8人の感想をアップしますので、皆さんもぜひ読んでみてください。(原文のまま)

 

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僕はバスツアーで色々な人に会いました。昔は違う夢を持っていたけれど、全然違う夢に変えていたり、同じ夢をずっと持っていたりしていました。しいたけ組合さんでは「なりたい仕事は変わってくる」と言う言葉が心に残っています。

最初は特に思っていなかったけれど、たくさんの人に話を聞くたびに、僕も納得しました。食農NPOでは「自分のやりたいことをする」と言うことを聞きました。これは他の人も同じようなことを言っていました。自分も自分が好きなことを将来の仕事にしたいと思っていたのでとても良いなと思いました。

赤尾さんや荒井さんの話では自分の興味があることを仕事にしていました。特に仕事をする上で大変なことがあってもそれを乗り越えきると、後に継なげられるという言葉が心に残っています。そして初めは興味がわかなくてもだんだんしていくうちに納得のできる仕事にできると言っていました。やまびこさんでは他の人の役に立ちたいと言う思いで仕事をしていました。この思いはとても参考になりました。自分のため以外に他の人のためにできることをすると言うことです。ドリームジャックさんでも自分の好きなことを仕事にしていました。僕はたくさんの人からいろいろな行き方を知れてとても参考になりました。

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最初にしいたけ組合に行って糸山さんの話を聞いてみると、自分の好きだったことを職業にするべきだと思いました。他にも準備を99%にするとうまくいくことがわかった。夢は子供の時なろうと思っていても夢はどんどん変わっていく。幸せをつないで生きるのが1番の幸せ。プロバスケットボールの選手は、本当にそのスポーツを大好きでいる人しか上にはいけないことがわかった。神山にない定食や食べるところを作れるようにしている人もたくさんいるので僕も作れるようにしたいです。自分が頑張れるためには「ありがとうございます」などの感謝の気持ちを伝えてくれることでやりがいにつながる。この学習を通して自分の好きなことを1番に考えてこれからは、行動していきます。

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神山町のバスツアーをして感じた事はほとんどの人は、自分がやりたいこと好きなこと、楽しそうなことと言う考えで仕事を選んでいると思いました。その話を聞いて思ったのはできる「体験」をすることが大切だということです。バイトや試験などの体験をしてみてこの仕事がしたいやしてみたい等と思えるようになってみたいです。1つ1つ自分ができる体験をしてみたいなと思いながら生きていこうと思いました。自分が楽しいと思えば楽しく仕事ができるかなともすごく心に残りました。

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僕はバスツアーで大人の話を聞いて自分の好きなことを仕事にしたいと思いました。

例えば役を演じることが好きだけど人前に出るのは、恥ずかしいので声優になったり、水泳が好きなので水泳のコーチになってみたいと思いました。

それはバスツアーに会った大人の人は、自分の好きなことや、小さい頃の夢が叶ってそれが仕事になったことが大きかったからです。それを1番好きと思った人が1番強いと聞いたり、楽しいことは、大変やつらいとは感じないという話を聞いたので自分の人生は、自分の好きなことをするのが1番良いと思いました。自分の仕事は好きなようにすることができます。

・ペースを自分で考えることができる。

・楽しくすることができる

・単純な作業でも楽しく、どうすればもっと効率よくすることができるかを考えながらすることができる

・仕事は大変なこともたくさんある

・仕事の時に、客のことをどれだけ思いやってどれだけ考えてどうしたら人のためになるかを知ることによって、気持ちよく、嫌、面倒くさいとすることによって

仕事を楽しくすることができる

・早く大人になりたい。

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・僕はバスツアーを通して僕たちが楽しくすごせられているのは働いているみなさんのおかげなんだなと思いました。

・僕が心に残っていることは、毎日同じ作業してつまらないじゃなくてつ1つ工夫することが大切ということが1番心に残っています。

・「ドリームジャック」を見学した時に何をするとこうなるというプログラムをたくさん作らなければいけないうえに英語のコミュニケーション能力が必要だと言っていたので大変だなと思いました。僕もプログラマーになりたいので英語の力とコミニケーション能力をきたえたいなと思いました。いつもやっているゲームのふく雑なことを設定しているんだなと思いました。1文字でも間違えたらエラーになるのでしんちょうにしなければいけないんだなと思いました。

・仕事をしているみなさんが、楽しい、好きなどの理由で仕事を選んでいました。僕も、好きなことを仕事にできるように、自分の苦手なことをがんばるようにしたいです。

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・神山にも仕事がたくさんありました。どの仕事も「楽しい」を共通にしていました。仕事が楽しいことは仕事を続ける理由にもなると思います。また「好きなこと」を仕事にするのも良いと思いました。自分は好きなことを仕事にするのを考えていなかったけれど、今回の学習で好きなことで仕事をすることも大切にしようと思いました。山びこの谷さんは「神山にこんな物ができたら良い」と言っていて、地域を活気づけるようなこともしたいと思いました。

・フードハブは、給食の衛生管理のことを話してくれたいつも食べている給食の野菜が3回も洗ったり部屋を変えているのはびっくりした。

・しいたけ組合は準備が大切なことを教わった。準備をすれば怖くないので、僕も、準備をしたいと思った。

・ドリームジャックはコミニケーションを教えてくれた。どれだけ能力が高くても、コミニュケーションも大切なことを教えてくれた。

・建築では工夫がすごかった。1年もかけて家を建てていてすごかった。

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人によってどんな仕事がしたいかなどの気持ちはちがった。

・全員に共通していたのは「楽しい」ということだった。赤尾さんは「仕事というより楽しいことをしている」と言う感じだそう。どの人も自分の仕事について、とても楽しそうに、おもしろそうに話していた。

・小さなころから、夢はもっていたらしいけれど、アルバイトなどのきっかけから変わったそう。ぼく自身も夢は変わってきているので、これからも変わるかもしれない。

・心に残った言葉が2つある。一つは、しいたけ工場の人の「準備を99%すると失敗しなくてこわくもなくなる」と言う言葉。勉強もしっかり準備すれば、テストも良い店が必ず取れる。もう一つは「自分が頑張っても、自分より好きなやつには勝てない」と言う言葉。陸上でも、誰よりも、走ることが好きになりたい。

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大人の話を聞いてみて、どの人も自分の好きなことを仕事にしている人が多かったです。

 

・自分はそんなになりたくても、やってみたら楽しい時もある。

・一つのことが好きならそれを極めれば他の人よりものびがいい。

・やる時は全力でやって休む時は全力で休む人もいる。

・苦手なことを好きにすれば自然と得意なっている。

・遊ぶ子ためにお金がいる。そのために仕事をする人もいれば、仕事=遊びという考えを持っている人もいる。

・工場で、働く人は、家に仕事を持って帰らなくて良い。

・何事も全力で体験したい。

・どんなこともゲームと考えてやる人もいた。

・皆で競い合って仕事をしている人もいた。

・何事も楽しみたい。

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神山タイムの授業で考え始める前は、「大変そう…」というイメージが大きいようだった彼らの仕事観。1日のバスツアーの感想の中で、仕事はただ大変なだけではないという認識に大きく変化していることが分かってきます。11人の大人が伝えたかった人生観、仕事観を受け止めてくれた様子も、伝わってきます。

さぁ9月は、いよいよ、町内で8人が思い思いの職場に分かれて、2日間、1つの仕事を体験する「職場体験」が待っています。夏を超えて、またどんな思いで将来に向き合っていくか、今から楽しみです!

 

梅田 學 (神山つなぐ公社 ひとづくり担当)

2018年6月に神山町に移住。ひとづくり担当として、神山校、神山中学校の生徒が地域で学ぶため授業をコーディネートしています。 その他、毎月一回、孫の手プロジェクトで、神山校の有志のメンバーで高齢者の庭の剪定をしています。 休日は、2年前から始めたサーフィンを楽しんでいます。徳島の小松海岸、高知の生見海岸に出没中。

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