短期連載コラム/第1回「私がコモンで出会ったもの。」

なんでも2023年10月4日

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投稿者:やすともゆうこ

はじめまして。やすともゆうこです。
縁あって、鮎喰川コモン開館3周年記念イベント「コモンでであう、本と人。」と連動し、短期連載のコラムを書かせていただくこととなりました。
さてはて何回まで続くのか、それは最後まで追いかけてくださる奇特な方のみぞ知る。


私とコモンの初対面。

「コモンでであう、本と人。」
私は確かに、コモンで本と出会っている。
しかしながら、それだけで終わらせてしまうには勿体ないほど、多くのことに出会っている気もする。
私は一体、コモンで何と出会っているのだろうか。まずは、そこから考えてみることにした。

2021年、春。我々夫婦は、徳島市内から神山町に移り住んできた。きっかけは非常に単純なもので、知人から聞き及んだ大埜地住宅なるものへのトキメキが尋常ではなかったからである。
内覧に訪れたある秋の日、未来の住まいから徒歩30秒と激近にもほどがある、まちの建物「鮎喰川コモン」と初めて出会った。
恐る恐る入った私の目に一番に映ったのは、こじんまりとした畳スペースの向こう側に広がる大きな窓、圧倒的解放感。
それから、縦横無尽にはしゃぎまわる子どもたち。
その中になんとなく大人たちが点在し、しかもなんだかとてもリラックスした様子。
当時息子を妊娠中であった私の足元を気遣い、ナチュラルに椅子をすすめてくれるスタッフさん。
皆が揃って、初めて訪れたはずの私に対しまるで旧知かのように笑顔で挨拶をくれた。

なんなんだここは。
元来人見知りの気がある私は、戦慄した。
私は他人ではないのか?もはやその笑顔、友人のそれではないか…。
今日から私は友人ということでいいですか?
さらには皆が皆、まるで我が家のように過ごしているだと?
鮎喰川コモン歴何年なんですか?え、オープンしたて?
と、大げさな表現のように感じられるかもしれないが、そのくらい私がこれまで出会ってきた場所とのギャップが凄まじかったのである。
初めてコモンと出会った日、私は、居心地よく我が家感がありつつも、お洒落な雰囲気を醸し出す、不思議な場所だなぁと思ったのだった。


子育てに白目を剥く日々の、オアシス。

時は流れ、なんやかんや神山町へと越してきた私は、初夏に息子を出産した。
それからの一年間は、正直なところ、記憶がない。
いや、正確にいうと、授乳と乳腺炎と止めどない睡魔の記憶はある。
子育てを経験されている先輩方、否、全人類に祈りをささげる日々だった。すごいよおかあさん。みんなすごいよ。

そんな記憶が錯綜している私だが、少しだけコモンの記憶もある。「すくすく子育て in 神山」だ。
すくすく子育てとはなんぞや?なあなたへ。
こちらを読むとよくわかる。
特に現役赤ちゃん様がいる方には吉報である。上記のイベントの日以外でも、気軽にコモンを訪れてみてほしい。特に平日の午前中が、赤ちゃん連れにはお勧めだ。

とにもかくにも、コモンは子育てに奮闘する母たちを癒す場でもあるということだ。
普段は気にもならなかったような些細な事が頭を駆け巡り、我が子の泣き叫ぶ声に白目を剥く日々の、オアシスなのである。
「なんで泣くんでしょうか・・・。」
「そんなもんそんなもん!やすともさん、がんばっとるわ!どれ、かしてみ!」
そんなやり取りに何度心救われたことか。
子との日々に埋没し、大人との会話を忘れかけているあなたにこそ、コモンと出会ってほしいと思ってしまうのである。


社会に出てから「友達」って、何人できたのだろう。

我が家の息子も立派な二歳児となり、気の赴くままに緑のフィールドを駆け、すっかり赤ちゃんみがなくなってきた、今年の春。
私と彼が本格的にコモンに入り浸り始めたのは、この頃からである。

午前中に行くことが多いためか、我々がよく出会うスタッフは3名。
岩丸智子さん、太尾めぐみさん、三好絢野さんだ。
彼女らは私と同世代であり、母としての先輩でもあり、心優しきコモンスタッフ達の一員でもあり、それぞれが家族を想い懸命に生きている、魅力溢れる人達だ。
一人一人へのラブレターを綴り始めると、とてもではないがこのコラムに収めきれる自信がない。
そのくらい、お世話になり、彼女らを愛している。
愛しているなんて、夫にも伝えたことがないかもしれない。

突然だが、社会に出てから「友達」って、何人できたのだろう。
私は残念なことに、かなり少ない。いやむしろ、学生時代から少なめかもしれない。
ここまで読んでくれたあなたには察せられていることかと思うが、私は元来とても人見知りなのである。オプションで場所見知りまでついてくる。初めての場所は異様なまでに緊張するのが常だ。
そのくせ人と沢山話したいという欲求だけは一丁前で、ちぐはぐな心を持て余しながらコミュニケーションを模索する日々だ。
そんな厄介な性質を持つ私だが、彼女らは心を開かせるのが三者三様にとても上手い。
気が付けば、私はいつも心を丸裸にされている有様である。
何をとち狂ったか、私自ら「友達になってくれませんか。」などと言い出す始末だ。
これには自分でも驚いた。下手をすれば、人生初かもしれない。
帰宅後、布団で悶えた。
そんな私を温かく受け止め、今では「ゆうちゃん」と呼んでくれるのだから、こそばゆく本当に幸せなことである。

コモンで私は、友人にも出会ってしまった。なんということだ!


粘り強く、より良いものを誰かのために作り上げる喜び。

晴れて彼女らと友人となり数か月後、私と鮎喰川コモンは新たな転機を迎えた。
前述した開館3周年イベント「コモンでであう、本と人。」の開催が決定したのである。
それと同時に、このコラムの連載を提案していただいた。私は喜びで飛び上がり、帰宅して不安に駆られ、やはり布団で悶えた。
これまでの人生、私と本とは切っても切り離せない、相棒のようなものだった。この件については機会を伺いつつ、追々書いていこうと思う。
そんな相棒がメインのイベントに、関わることが出来るなんて!

この企画の裏側には、いや、コモンの全ての楽しさ・優しさの裏側には、彼女らを含むコモンスタッフ全員の地道な努力、まちの方への愛そのものが隠されていると、私は感じている。
いつも笑顔で我々を迎えてくれる、そんな彼らも人間だ。「良い」笑顔でいられる日ばかりではないだろうし、血がにじむような努力をしても「報われないな」と感じる日だって、きっとある。
しかし、そんな彼らの人間臭さこそ「鮎喰川コモン」という場所の一部なんじゃないかと思う。
私はこのコラムでイベントの楽しさはもちろんだが、隠された彼らの愛や人間臭さにも、注目したい。だってなんだか素敵なんだもの。
私の文章で十分に伝えきることが出来るのか些か不安ではあるが、その機会を頂いた誉を胸に精一杯取り組んで行きたいと思う。

時間戻ってコラムの話を頂いたその晩、勢いのまま、イベント特設Webサイトをデザインしてしまった。実は私は昔からWebサイトを作るのが好きで、数年前から前職を辞め少しずつではあるが取り組んでいる。
どうしよう、作ってしまった。
恐れと不安を抱きつつも、生み出してしまったものは何故か友人に見せたくなるのが世の常である。
翌日、私のデザインを見た彼女らはいつものように柔らかな笑顔で受け入れ、数日後にはなんとイベント特設サイトの制作が決定してしまった。
なんということだ、2回目!私はWebデザイナーとしての道と出会ってしまった!それも愛するコモンのために。

それから私と彼女らは計7回にもおよぶ濃密な議論を重ね、より「鮎喰川コモンらしい」特設Webサイトを目指して試行錯誤した。

はじめにデザインしたものとは大きく異なるが、最終的に完成したデザインは、我ながらすごくコモンらしく素敵、なのではないかと思っている。
杉の木目を背景にあしらい、コモンをすぐ隣に感じられるように。
また、全体を通して意識したのは、全世代のまちの人を柔らかく包み込むイメージだ。私がコモンに抱いているイメージそのものでもある。
このデザインに行き着けたのはひとえに、スタッフである彼女らがコモンを愛し、イベントに情熱を傾け、忌憚ない意見を私にくれたからだ。

一つ一つの企画のイメージが、その頭の中にしっかりと存在している。
イベントの先に居る、来館者の顔まできっと彼、彼女らは思い描けている。
普段、どれだけ真剣に向き合っていれば、そんな風になれるのだろう。
私は今回の制作を通して、粘り強く、より良いものを誰かのために作り上げる喜びを、彼らのそばで実感している。

私と彼女らで作り上げたWebサイトは、9月28日、ついにオープンした。さらに、告知用ポスターの制作も一部ではあるが担当させていただいた。
是非あなたにも、見に来て欲しい。そして、イベントに、コモンに来て欲しい。
喜びと不安とソワソワとが複雑に入り混じり、でもやっぱり一番はワクワクが大きい、私からの心からの願いだ。


トキメキが凄いぞ。「コモンでであう、本と人。」

この人は、いつになったら3周年イベントの詳しい内容話すのかな?と思っているあなたへ。私もその通りだと思い、今、ジンワリと汗をかいている。
毎回こうではないはず・・・なので、安心してほしい。多分。

現在募集中の企画はこれだ。「みんなでつくる、コモンの本棚」略してみんだな。トキメキが凄いぞ。
なんといっても、自分の大好きな本を、まちの皆に紹介することが出来るんだ!
10月13日まで、本の出展者を大募集中。なんと、一つ一つの本棚に、お名前がついている。まるで、本達のお宿のようである。
スペースに限りがあるので、今すぐ応募するんだ。そして応募できなかったあなたも、是非沢山の本達を読みに来て欲しい。
すでに並んでいる本を私はチェック済みだ。さらに多くの本たちで埋まってきた頃、改めて記事にさせてもらえたらと思う。

始まったばかりの企画といえば、「コモンの新しい本、大集合!」。
今年選び抜かれてきた本たちが、自慢げな顔をしてズラリと並んでいる。それだけでときめくのは、きっと私だけではないはず。思わず頬ずりしたくなる輝きだ。是非、実際に目にして感じてほしい。
イベントの開始日には、素敵なイラストと共に、なんともコモンらしい告知がされていた。めちゃ可愛い。
こちらの企画についても、また別の機会に改めて感想を載せたいと思う。

とにもかくにも、10月29日まで、コモンであらゆる本と人に出会うことができるのは間違いない。私も出現率が高くなること間違いなしだ。会えたら、ぜひ声をかけてほしい。人見知りすると思う。

そんなわけで、私はコモンと出会った。
これからコモンに出会おうとしているあなたへ、コモンでなにかしらに出会おうとしているあなたへ、この愛が伝わるととても嬉しい。
ありがとう、コモン。
ありがとう、コモンスタッフさん。
ありがとう、友人達。
ありがとう、いつも支えてくれる我が家の男子達。

最終回のようだが、なんとこの記事は第1回目である。そしてエッセイのようだが、これはあくまでコラムなのである。

終わらない。


アテにならないかもしれない次回予告
「幼いころのアナタは何にお熱だったんだろう。私は様々な人の、様々なお熱が知りたいのだ。そんなことよりコモンで司書になれるだと!?全本好きよ、コモンに集まれ!!」

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やすともゆうこ

2021年春、家族と共に神山町に移り住んできました。お魚と本が大好きです。

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