「日本一の枝垂れ桜の町」を、次の世代につないでゆくには?
なんでも2023年4月10日
本記事はイン神山内の「ほぼ月報」という枠組みの中で執筆しました。2019年〜2021年までは神山つなぐ公社が「まちの様々なプロジェクトのいま」を、2022年以降は神山つなぐ公社とグリーンバレーで「神山に関わるみなさんと共有したいまちのできごと」をお伝えしています。
3月末、神山町のいたるところで桜が咲き始めました。どの道を走っても、あそこにもここにも桜があります。桜の名所と言われる場所だけではなく、あちこちで桜を楽しめる町は、全国探してもそう多くはないのでは? 神山町の人口は現在約4,800人。町の中の桜の本数をきちんと数えるのは難しいのですが、およそ10,000本との推計。実に人口の2倍以上の桜が咲き誇っているのです。
もともとはあるご夫婦が苦労しながら苗木の育成に試みた成果を受け、1996年からは「神山をしだれ桜で日本一美しい町にしよう」と町内有志が集まって、苗木を育成し町内に植栽する活動を開始。そこから約20数年で、昨年度までに6749本が植樹されました。それが、現在の「NPO法人神山さくら会」です。
多くの人がその景色を楽しませてもらっている一方で、活動の主要メンバーからは、会員の高齢化や会員数の減少に悩む声も聞きます。神山さくら会の事務局・久保素弘さん(以下、久保)と、若手会員・佐々木敬太さん(以下、敬太)に話を聞きました。
久保素弘(くぼ もとひろ)さん
徳島県神山町出身。徳島県内の農業高校の教員として38年働いてきた。退職後に神山さくら会に参加し、現在は事務局を務めている。地域の子どもたちや親子との野菜の栽培もサポート。
佐々木敬太(ささきけいた)さん
徳島県三好市出身。池田高校三好校(農業高校)を卒業。結婚を機に神山町に拠点を移し、人の暮らしと自然、昔からの知恵や知識を結び、満喫する「よろづや万結屋」を経営。庭師・椎茸栽培・食・場づくりを中心に、多岐にわたる仕事に取り組む。
–会員が高齢化して、人手不足なんですね…
敬太 桜の木も老いていくんですよ。接木した桜の寿命は、60年くらい??今、立派に咲いている桜が樹齢20年くらいだから、また30〜40年したら枯れてしまうかも。
久保 さくら会では、20数年前から活動しているけれど、町全体が桜で有名になってきたのは10年くらい前。最初に植え始めた鬼籠野の街道沿いの桜も、10年くらい経ったところで花がたくさんついて、ボリュームが出てきた。前は明王寺の桜くらいしかなかったけれど、近年では、まち全体として、桜を観にくる人が集まって、有名になってきた。
神山さくら会で植えている桜は、接木が基本。1年かけて畑で育てたものを、各地区で植えつけています。例えば、エドヒガンザクラとか、実生で育ってきた木は100年200年と生きる。けれど、接木したのは60年くらいしか持たないと言われている。とはいえ、苗木を植えてから花が咲くまでは、接木の方が早く育つ。種から育てるのは、なかなか難しいし時間がかかるからね。
敬太 だから、僕らの世代が次の桜を植え続けていく必要があるんですよ。
–お二人が活動に参加し始めたのは?
久保 私が入って、今8年、9年か。現役引退して入ったんかな。その時は61歳で、さくら会の中でも一番若かったんですよ。あとはみんな自分より年上。今は私より若い人が3人ほど、リタイアして田舎へ帰ってきて入ってきてる。敬太くんみたいに若いうちに参加する人はちょっと特殊やな。自由人やからいけるのか?
敬太 うちの奥さんが神山塾の出身なんですけど、その頃にホームステイさせてもらっていた粟飯原さんも、神山さくら会の活動メンバー。奥さんも、一緒に植樹のお手伝いもしたそうなんです。で、結婚して、神山に引っ越してくることになったときに、僕の奥さんから「さくら会の活動に参加するように」って。それで参加してみたらなんと、かつて僕が通った農業高校の恩師、久保先生に再会したんですよ。
久保 こんなところで出会うの?って思ったもんなー。
敬太 1年目は仕事も忙しかったからなかなか行けなかったんだけど、奥さんから「さくら会の予定は仕事だと思って行きなさい!」ってお尻を叩かれて(笑)。年間予定がわかったらすぐ予定帳に先に書いとく。だから去年からはけっこう参加してるかな。
−せっかく育んできた神山の桜の風景が続いてゆくためには、敬太くんの世代の人たちにも、もっと参加してもらえるといいですね。「会員の高齢化と会員数の減少が悩み」と聞きました。
久保 今、最高齢の方が89歳。有志数名から始めた会を、2002年に「神山さくら会」として活動の輪を広げました。さらに2007年にはNPO法人化して、会員は50名ほどいました。今は、そこから30人くらいに減ったかな。30人といっても、高齢で作業には出て来れない人もいる。定例の作業としては、台木の植え付けや接木、育苗している畑周りの除草…愛情もって育てている。
敬太 春から秋にかけては、桜を植えているあちこちの場所の下草刈りがあって。まぁ、暑い中で大変やけど、楽しい作業ではあるんですよ。みんなと、やぁやぁやぁやぁ、言いながら。桜の花をきれいだなぁと思って見るときには、そんな風にひたむきに手入れを重ねてきた人たちがいるんだなぁ、っていうのをもっといろんな人に知ってもらえたらな、とも思う。
久保 さくら会の会員と桜を植えてある地域の人たちとで今まで下草刈りも一緒にやってきたんやけど。ただ、それもね、各地区から出れる人が減っている。地域で中心になって声かけてくれていた人も高齢化していて、草刈りの声がかからなくなったとこも出てきている。難しいな。
–そもそも、育てた苗木を植える場所は、どう決めているんですか?
久保 会員さんを通じて、苗木の希望本数を聞いて、それぞれが関わる地域に5本、10本と桜の苗木の行き先を決めて、植えてもらっている。年によって作れる苗木の本数は変わるけれど、だいたい年に100本くらい。本当は町民全体に希望を募ってみたいけれど、集計しきれないし、多分本数が足りない。その後も草刈りとかお世話が必要だしね。
–今、力を入れていきたいことは?
久保 やっぱりまずは、いろんな人に活動を知ってもらいたいかな。地元の人たちはだいたい神山さくら会のことを知ってるだろうけど、移り住んできた人はほとんど知らんだろうし。
敬太 この前、阿川での植樹のヘルプを呼びかけたら、参加してくれた人も何人かいた。そこから会員になってくれた人も。100%参加できなくても、関心持ってくれたり、理解してくれたり。自分で活動できる範囲で参加してくれたら、ありがたいよね。
–そういう気軽なお誘いがたびたびあったら、継続的にお手伝いしたい人も出てくるかも?
久保 地域の人たちが気軽に参加できるような発想をしていきたいなぁ。神山まるごと高専は、上手やなぁ、と思って見てる。椅子づくりには自分も参加させてもらったけど、あんな風にフワッと参加申込できるのはいいよな。真似したい。できたら、高専の子が地域課題の一つとして、草刈りとか獣害対策とか一緒に考えてくれたら嬉しいな。鹿が桜の苗木を食べちゃうんよね…。
今は会報づくりはもちろん、SNSも私が更新している。なかなかチラシづくりとかは得意でないし時間もないんで、誰か広報の部分だけでも手伝ってくれる人がいると嬉しいなぁ。
久保 桜の時期に、ぜひ町内のお店には、花見弁当とか出してもらいたいなー。桜にちなんだ地元産のお菓子とかお土産とか。そういう広がりもあったら嬉しい。どこに話を持っていったらいいんだろうなぁ。
敬太 僕も、ゆくゆくはボランティアだけでなく、地域経済にも活かしていけたらな、と思ってるんですよ。最近、キッチンカーで天ぷら屋さんを始めたんだけど、そこで桜塩をつけるとか。古くなった木を切る場合には、なめこを育てる原木にしたり。染め物にしたり、燻製にしたり、いろいろ使い道はあるよな。
–最後は美味しい話に展開していきましたが、まずは「活動に興味を持ってほしい」とのこと。私も今年は活動の案内情報にアンテナをはって、どんな部分ならお手伝いできそうか、探ってみようと思います。
神山さくら会について、もっと知りたい方へ
神山さくら会(久保さん)のinstagram
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高田 友美
静岡県浜松市出身。神戸→東京→スウェーデン→滋賀を経て、神山に移り住みました。神山つなぐ公社では「コミュニティ・アニメーター」として、主に大埜地の集合住宅とすみはじめ住宅から始まるコミュニティ育成を担当。休みの日はノラ上手に励んでいます。
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