婆ちゃんの醤油や味噌づくりを、僕は受け継ぐ時間がなかったけど

なんでも2020年5月31日

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投稿者:西村 佳哲

本記事はイン神山内のほぼ月報という枠組みの中で執筆しました。2019年〜2021年までは神山つなぐ公社が「まちの様々なプロジェクトのいま」を、2022年以降は神山つなぐ公社とグリーンバレーで「神山に関わるみなさんと共有したいまちのできごと」をお伝えしています。

神山には近年、「これからのまちの姿を、町と高校がともにつくってゆく流れ」がある。「まめのくぼプロジェクト」と呼ばれる農地再生の試みもその一つ。耕作放棄地を高校生と再耕起。昨年11月に麦を蒔き、今年の梅雨入り前に収穫を迎えたのだが…。



白桃 5月になってまわりの米づくりが始まり、用水路の水が流れ始めた。麦を播いた棚田(まめのくぼ)は元々は田んぼだった場所で。でも、今回の整備で用水まで十分に手入れ出来ていなかったから、知らない間に流れ込んでしまった。水が。小麦の栽培に水はあまりよくないんです。先生たちと、急いでどうにかしたけど。

── 誰が気づいた?

白桃 樋口さん(フードハブプロジェクトの食育担当)から「畑が水たまりになっている!」と連絡が入って。その時点で、流れ込み始めて2週間くらい経っていたんじゃないかな。最後に麦がグッと実を大きく出来なかったかも。先日収穫したところ全体的に小粒で。

── みんな意気消沈?

白桃 いや、「そんなこともあるよね」という感じ(笑)。用水のことがわかって、それはそれでよかったんじゃないかな。

── 播いた麦は、白桃さんの家で継がれていた種だと聞きました。

白桃 うちのお婆ちゃんが育てて、自家用の味噌や醤油をつくっていた。自分たちで食べて、あと知り合いに少し分けるくらいの量。農業とは別の、暮らしの農ですね。うち以外の神山の家でも、畑の縁のまわりに少しだけ育てている様子はたまに見かけてきました。

── 神山に、小麦はあまりむいていない?

白桃 そんなことはないけれど、広い面積で収量多くつくれないと農業としては難しい。そのための機械が必要になるし、傾斜地に拓かれた神山の畑は一枚ごとの面積があまり広くない。でもだから今回の高校生とのプロジェクトのような規模感は、ちょうどいいなと思う。大量でないから自然乾燥でいけるし。

── 彼らは収穫した麦で、なにをつくるんだろう。

白桃 パンとかラーメンとか言ってますね。「味噌ラーメン」というアイデアも出ていて、いいと思うんです。味噌も麺も同じ小麦でいける(笑)。自分たちが育てた麦が、普段買ったり食べているものに変わってゆくのを見れるのはとてもいい。

うちの婆ちゃんの醤油や味噌づくりを、僕は受け継ぐ時間がなかった。「もったいないな」と思っていたんです。けど、こうして麦の種は継いでゆくことが出来たわけだし。この状況はいいな。

映像:
神山つなプロ #27 耕作放棄地の再生と利用[高校プロジェクト・その5](11分30秒)

 

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西村 佳哲

にしむら よしあき/1964年 東京生まれ。リビングワールド代表。働き方研究家。武蔵野美術大学卒。つくる・書く・教える、大きく3つの領域で働く。元神山つなぐ公社 理事(2016〜21)。著書に『自分の仕事をつくる』(晶文社/ちくま文庫)、『ひとの居場所をつくる』(ちくま文庫)など。

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